日本郵船は、2023/3期の配当利回りが15.9%を記録しました。
プライム市場の平均配当利回りは2.0%程度であることを考えると、日本郵船の配当利回りはとても魅力的です。
そのため、配当利回りに注目して、日本郵船への投資を検討している人も多いでしょう。
ただ株式投資歴15年の筆者の経験上、高配当株へ投資する際には、配当利回りだけに注目するのではなく、配当がなぜ高いのかを理解することが大切です。
そこで、この記事では、日本郵船の配当がなぜ高いのかについて考え、今後の配当見通しについて解説していきます。
日本郵船はどのような会社?
日本郵船は、国内海運業界最大手であり、商船三井と川崎汽船とともに3大海運会社と呼ばれています。
会社概要
まずは会社概要を紹介します。
社名 | 日本郵船株式会社(通称「NYK[」) Nippon Yusen Kabushiki Kaisha |
証券コード | 9101 |
本社 | 東京都千代田区丸の内二丁目3番2号 郵船ビル |
創立 | 明治18年(1885年)9月29日 |
資本金 | 144,319,833,730円 |
決算 | 3月末日 |
市場 | 東証プライム市場 |
事業内容 | ライナー&ロジスティックス事業 (定期船事業、航空運送事業、物流事業)、 不定期船用船事業、その他事業(不動産業、その他の事業) |
発行済み株式数 | 510,165,294株 |
従業員数 | 35,502名 |
配当利回り | 15.9%(2023/3/29(権利付確定日)の終値で算出) |
業績推移
日本郵船の過去10年分の業績推移と、2024/3期の業績予想は以下の通りです。
決算期 | 売上高 | 当期純利益 |
2014/3期 | 2兆2,372億円 | 330億円 |
2015/3期 | 2兆4,018億円 | 476億円 |
2016/3期 | 2兆2,723億円 | 182億円 |
2017/3期 | 1兆9,238億円 | △2,657億円 |
2018/3期 | 2兆1,832億円 | 201億円 |
2019/3期 | 1兆8,293億円 | △445億円 |
2020/3期 | 1兆6,683億円 | 311億円 |
2021/3期 | 1兆6,084億円 | 1.392億円 |
2022/3期 | 2兆2,807億円 | 1兆91億円 |
2023/3期 | 2兆6,160億円 | 1兆125億円 |
2024/3期(予) | 2兆3,400億円 | 2,000億円 |
売上高の変動はありますが、それ以上に当期純利益の変動が大きく、年によっては赤字に陥っている年もあります。
そのような中で、直近3期は好調で、特に2022/3期と2023/3期は当期純利益が1兆円、利益率が40%超という信じられない数字となっています。
この背景は、米中貿易摩擦によるコンテナ船供給量の減少やコロナ禍での人手不足・物流の混乱などからコンテナ船運賃が急騰していたためです。
日本郵船の配当はなぜ高い?配当利回りが高い3つの理由を紹介
ここからが本題ですが、日本郵船の配当利回りはなぜ高いのでしょうか。
ここでは、配当利回りが高い理由3つを紹介します。
配当性向が引き上げられている
1つ目の理由は、配当性向が上昇していることです。
配当性向は、当期純利益の中からどれだけ配当金に回したかを表す指標です。
そのため、配当性向が高いほど配当金が多くなることから、配当利回りが高くなります。
下の表は、日本郵船のHPで紹介されている過去の配当の実績および見込みです。
配当性向も記載されていて、2018/3期(2019年度)の21.7%から、2023/3期(2022年度)には26.1%となっていて、年々上昇していることが分かります。
(引用:日本郵船HP 配当・株主優待)
当期純利益が伸びている
2つ目の理由は、業績が絶好調なことです。
配当性向が右肩上がりでも、配当の原資である当期純利益が減少していれば、配当金額も減少します。
日本郵船の場合、配当性向が引き上げられただけでなく、コンテナ船運賃が急騰したことによる好業績で配当の原資が増えたことも相まって、配当金の総額が大きく上昇しました。
そのため、配当利回りが上昇したと考えられます。
株価の上昇以上に配当が増えている
最後の理由は、配当の伸びほど株価が上昇していないことです。
配当利回りは、「1株あたりの配当金÷株価」で計算されます。
言い換えれば、配当金が増えても株価が上昇すれば配当利回りに変化はありません。
そこで、各項目の推移を見ていきましょう。
当期純利益 | 1株あたり配当金 | 3月権利付確定日株価 | 配当利回り | |
2020/3期 | 311億円 | 13円 | 438円 | 3.0% |
2021/3期 | 1.392億円 | 67円 | 1,246円 | 5.4% |
2022/3期 | 1兆91億円 | 483円 | 3,703円 | 13.0% |
2023/3期 | 1兆125億円 | 520円 | 3,263円 | 15.9% |
日本郵船の当期純利益は、2020/3期が311億円だったのに対し、2023/3期は1兆125億円とわずか3年で32倍(1株あたり配当金も40倍)となりました。
一方で株価は7.5倍にとどまったため、配当利回りが急上昇したことになります。
日本郵船の今後の配当の見通し
ここまで過去の配当利回りが高い理由を説明しましたが、今後はどうなるのでしょうか。
2024/3期の配当予想は?100株で配当金はいくらもらえる?
2024/3期の配当金(通年)予想は130円と減配予想です。
日本郵船株を100株買った場合、配当金13,000円(税引き前)がもらえます。
2024/3期が減配となる背景は、当期純利益の減少にあります。
2023/3期の当期純利益は1兆125億円でしたが、2024/3期の当期純利益は前年比80%減の2,000億円が予想されています。
一方で株価(2024/3/27終値)は4,231円に上昇しているため、配当利回りは3.07%と大きく低下する見込みです。
2025/3期以降は更なる減益の可能性がある
2025/3期以降は更なる減益となる可能性があると考えられます。
その理由は、2024/3期の決算において利益の上期偏重傾向が顕著なためです。
上期から下期にかけて、コンテナ船の運賃をはじめとして市況に落ち着きが見られはじめたため、ほとんどの事業において上期のほうが利益も高くなっています。
この傾向は、2025/3期にも引き継がれる可能性があり、その場合は2024/3期比で減益となる可能性が非常に高いです。
株主への積極還元姿勢が示されている
業績は減益である一方で、日本郵船は株主への還元について積極姿勢を示しています。
日本郵船が2023年3月10に発表した中期経営計画では、今後の配当に関して①配当性向を30%に引き上げること②1株あたりの配当下限を100円とすることが示されています。
(引用:日本郵船HP 配当・株主優待)
まとめ
日本郵船の配当がなぜ高いのか、その理由と今後について解説しました。
- 日本郵船の配当利回りが高い理由は、①配当性向が年々上昇していること②業績が絶好調なこと③株価の上昇以上に配当が増加していることです。
- しかしながら、2024/3期は、株価の上昇や減配予想であることから配当利回りは低下する見込みとなっています。
- 日本郵船は、2025/3期以降も積極的に株主還元を行っていく姿勢を示していますが、業績は減益となる可能性があり、更なる減配リスクがあります。
配当利回りの急上昇は一時的な市況の高騰によるものだったため、長く続くことはありません。
そのため、再び10%を超える配当利回りとなる可能性は低いでしょう。
ただ、日本郵船は配当性向を30%以上にすることを宣言していることに加え、配当金の下限を100円に設定していることから、配当利回りは最低でも2~3%を維持できるはずです。
配当利回りが最低でも2~3%程度を維持できれば、高配当株としての魅力は十分にあります。
業績悪化時の株価急落には注意しつつも、高配当株として魅力のある日本郵船の動向に是非注目してください。
ライター名:金融ライター ひろきち