ETFをご存じでしょうか?
ETFとは上場投資信託のことで、日経平均株価やS&P500といった指標に連動する運用成果を目指すインデックス型と対象指数を定めないアクティブ型のETFがあります。
ここではインデックス型のものをETFとして紹介します。
ETFと投資信託の違いは証券会社でのみ取り扱われているかどうかです。
上場とついているため、株式と同じように売買単位が決まっています。
近年、S&P500やeMAXISSlim全世界株式といった投資信託が人気です。
さらに米国投資の人気が高まり「SPYD」「QQQ」「HDV」といったETFにも人気が出ています。
そんな中、SNSなどで注目されているETFがあるのをご存じでしょうか?
TMFです。
(引用:株探米国)
TMFは、ICE20年超米国債インデックスという指標に連動したETFで、この指標の3倍のパフォーマンスを出すことを目的としています。
どうして3倍ものパフォーマンスを出すことができるのでしょうか?
いつTMFを購入する最適な時期はいつなのでしょうか?
この記事を読めば次のことがわかります。
- TMFとは
- TMFの危険性
- TMFの買い時とは
3倍ものパフォーマンスが出せる理由やTMFがはらむ危険性、TMFのベストな買い時を理解できるでしょう。
TMFとは
TMFの正式名称は「Direxionデイリー20年超米国債ブル3倍ETF」です。
長いため、ここではTMFで続けていきます。
TMFの大きな特徴は2つです。
- 20年以上の残存期間がある米国債券に投資をしている
- レバレッジを使い、基準となる指標の日次成果の3倍目指している
20年以上の残存期間がある米国債券に投資をしている
TMFの中身は米国債券の中でも20年以上の残存期間があるものに投資をしています。
指標は「ICE U.S Treasury 20+ Year Bond Index」です。
債権とは平たく言えば、発行体の借金のことです。
不特定多数の人に債権を買ってもらうことで、発行体は資金を得ます。
資金を得たお礼に、発行体は購入者に対し利息や債券の割引をします。
※債権の割引は割引債と呼ばれ、額面より安い金額で購入できる利子のつかない債権のことです。100万円の額面の債権を90万円で購入し、満期を迎えると100万円が手に入ります。差額の10万円が利息の代わりというわけです。
債権は発行体により名前が変わります。
国が発行する国債・地方公共団体が発行する地方債・会社が発行する社債などです。
TMFはアメリカの国債に投資をしています。
アメリカの国債は比較的安全といわれており、利回りも良いため投資家に人気があります。
債権の使い道はポートフォリオの安全性を高めることです。
基本的に債権は株式と逆の動きをします。
- 株価が値上がりすると、債券価格は下落する
- 株価が値下がりすると、債券価格は上昇する
このため、株価が大暴落してもポートフォリオに債権があることで総資産額が守られるのです。
日本の年金を運用しているGPIFという独立行政法人は、国内株式・海外株式・国内債券・海外債権を25%ずつ保有していることで知られています。
このようなバランスにすることで私たちの年金は高い安全性で運用されているのです。
もう一つの債権の特徴は「金利」と逆の動きをすることです。
- 金利が上がると、債券価格が下落する
- 金利が下がると、債券価格が上昇する
金利が上がるときは好景気なため、株価が上昇しやすい傾向にあります。
株価が上昇する局面では投資家の株式人気が高まるため、債券価格が下落します。
金利が下がると逆の動きをします。
債権はこのような特徴を持っているため、株式投資家からは守りの金融商品として認知されています。
しかし、TMFは指標の3倍ものパフォーマンスを出すことを目的としているため、収益性も見込める商品です。
守りの債権がなぜ収益性を上げることができるのでしょうか?
レバレッジを使い、基準となる指標の日次成果の3倍を目指している
TMFはレバレッジを使い、基準指標の3倍もの成果を出すことができます。
レバレッジとは「てこの原理」のことで、金融業界では借入を利用して、自己資金以上のリターンを上げる効果を期待できることを指します。
大きなリターンを狙える反面、リスクも大きいです。
借入を利用するという事は、借入に対して金利も発生します。
借金の金利には複利がかかるため、自己資金の管理が重要です。
TMFのもう一つの特徴は「日次成果の3倍」のパフォーマンスを出すことです。
通常のインデックスファンドの投資信託では長期的に見て3~5%の利益を出すことを目指します。
しかし、TMFは日次成果で大きなパフォーマンスを目指すため、短期的な利益をあげることに向いているといえます。
日次成果の3倍を狙うため、TMFには注意が必要です。
TMFの危険性
日次成果の3倍のパフォーマンスはプラスの時だけでなく、マイナスの時にも働きます。
簡単な例にするため、100万円をTMFと基準指標の「ICE U.S Treasury 20+ Year Bond Index」に投資したとします。
パフォーマンス | 資金の変化 | |
ICE U.S Treasury 20+ Year Bond Index | +1% | 101万円 |
TMF | +3% | 103万円 |
パフォーマンスが良い時には高リターンが狙えます。
しかし、注意点はパフォーマンスがマイナスになったときです。
パフォーマンスのマイナスが続いた場合の資金
パフォーマンス | 資金の変化 | |
ICE U.S Treasury 20+ Year Bond Index | -1% | 99万円 |
TMF | -3% | 97万円 |
ここまでは理解しやすいと思います。
この後、パフォーマンスが+1に好転した場合、-1の後に+1が来るため差し引き0になるわけではありません。
パフォーマンス | 資金の変化 | |
ICE U.S Treasury 20+ Year Bond Index | +1% | 99.99万円 |
TMF | +3% | 99.91万円 |
基準指標と差が出てしまいました。
基準指標の3倍のパフォーマンスを出すことを売りにしているのに、基準指標に負けてしまっています。
理由は、資金に対してパフォーマンスのプラス分やマイナス分がかかるからです。
仮に基準指標が+1・-1を繰り返してしまうと、TMFは基準指標に負けてしまいます。
TMFは右肩上がりの時に購入しなければ資産を大きく減らしてしまうため、注意が必要です。
また、レバレッジを使用しているため、非レバレッジ商品より手数料が高くなることは覚えておきましょう。
TMFの買い時はいつ?
TMFの中身である債権とTMFの注意点について触れてきたのでまとめてみましょう。
債権が値上がるときは以下の2パターンです。
- 株価の値が下がっているとき
- 金利が下がるとき
TMFを購入するときに注意すべき点は、基準指標の「ICE U.S Treasury 20+ Year Bond Index」が右肩上がりのときです。
債権の特徴とTMFの購入タイミングを考慮するとTMFの買い時は次の2つの時期になります。
- 金利の低下が予想されるとき
- 経済不確実性が高まるとき
金利が下がると債権価格が上がるため、TMFの買い時と言えます。
TMFは米国債券の上場投資信託のため、米国の金利動向もチェックが必要です。
連邦準備制度(Fed)の金利政策や金融緩和の発表には気を配りましょう。
投資家の心理として、経済不確実性が高まるときは安定資産を求めます。
安定資産とは債権のことです。
株式のように値崩れしやすいまたは企業が倒産すれば紙切れ同然になるような資産ではなく、元本が保証されている発行体が安全な債権が好まれます。
アメリカは世界の金融市場の中心です。
投資家のアメリカに対する信用度は高いため、アメリカの債権の人気も高くなります。
経済不確実性が高まるときもTMFは買い時です。
まとめ:TMFの買い時は金利と株価が下がるとき!TMFの購入にはリスクも忘れずに!
TMFの買い時は「金利の低下が予想されるとき」と「経済不確実性が高まるとき」です。
理由は、金利が下がると債券価格が上がり、経済不確実性が高まると株価の人気が下がり、債権の人気が高まるからです。
TMFには、基準指標の3倍ものリターンが狙える魅力がありますが、注意すべき点もあります。
- レバレッジを利かせているため非レバレッジ商品よりも手数料が高い点
- 日次成果の3倍を目指しているため指標が下落傾向だと、指標よりもパフォーマンスが悪い場合がある
これらの注意点を踏まえて購入を検討しましょう。
現在、米国の金利市場は不安定です。
AIシナリオでは楽観的に見ると金利は緩やかに低下、悲観的に見ると金利が大幅な上昇を見せます。
(参考:株式会社第一生命研究所|AIが予測する2024年の米国金利の衝撃~AI予測は日本経済にどのような影響をもたらすのか?~)
購入を検討している場合は、どちらのシナリオになるのか米国金利動向のチェックが欠かせません。
TMFを購入するときの参考にしてください。