入院する時に記名を求められることが多い連帯保証人。
結論から言うと、連帯保証人は無職でも問題はありません。
入院時の連帯保証人の役割は、患者が医療費の支払いができなくなった場合に、滞りなく病院に医療費を支払うことです。
連帯保証人には支払い能力がある人を指定するよう求められることが一般的です。
無職の人を書いても大丈夫なのか心配になりますね。
そこでこの記事では、連帯保証人の役割と連帯保証人がいない場合の対処法を解説します。
入院時の連帯保証人の役割
入院時の連帯保証人は、患者本人および配偶者が医療費の支払いができない時に、滞りなく病院に医療費を納めるために設定されます。
患者本人に充分資力があったとしても、連帯保証人の提示を求められることが一般的です。
医療費が高額になったり、患者が死亡する可能性もあるため、万が一の時に未払いのままになると病院としては困ってしまいます。
病院が強制的に取り立てることはできないため、適切に医療費を支払ってもらえるよう、病院側が自主的に行う防衛策だと言えます。
総務省の調査では、東北の37医療機関のうち、すべてで保証人の提示を求めているが住民票などの公的な書類による本人確認までは行っていないということがわかっています。
(参考:総務省)
筆者も、入院した時に連帯保証人の提示を求められ、親に依頼したことがあります。
特に親に連絡が入ることはありませんでした。
病院側も、厳密に連帯保証人を求めているわけではないため、万が一のための形式的なものだと認識して差支えないでしょう。
入院時の連帯保証人に無職の人を書いても問題はない
連帯保証人として記名する人の条件は、「患者とは別に生計を立てる支払い能力のある成年者」とされることが多いです。
必ずしも職に就いていなければならないわけではありません。
要は、無職でも最終的に医療費を支払うことができればよいということです。
例えば、連帯保証人に高齢の親を指定したい、という場合があると思います。
退職して年金生活を送っている親は無職ですが、年金から支払うことができれば条件に合致します。
無職でも預貯金で対応できるなら、支払い能力があるという判断もできるでしょう。
また、同居別世帯なら、同居する親(または子)を連帯保証人にすることが可能です。
入院申込書の連帯保証人の欄には、勤務先を記入する欄がありますが、書いたとしても職場に確認の連絡がいくことはありません。
「無職」と書いても不利益はないため、ありのままを書けばよいですよ。
病院によっては、有職者と指定されることもありますが少数です。
その時は指示に従って有職者を書くようにしましょう。
連帯保証人と身元引受人の違い
入院時に、連帯保証人と合わせてよく聞く言葉に「身元引受人」があります。
身元引受人の主な役割は以下の通りです。
- 患者本人に意思決定能力がなくなった際に、病院と治療方針の相談をする
- 退院時および死亡後の対応
- 緊急連絡先
患者本人が病状の悪化などによって意思決定が困難となった場合には、代わりに方針を決定する人が必要です。
重要な判断を任される可能性があるため、同居家族や関係性の深い親族が身元引受人となることが理想です。
また、身元引受人の重要な役割の1つに、死後対応があります。
病院の霊安室には半日程度しか安置できないため、早急に葬儀会社を決めてご遺体を搬出しなければなりません。
亡くなった後にやらなければならないことはたくさんあるため、死後の事務手続きを担う人として、身元引受人の提示を求められます。
身元引受人は一般的には成年者であればOKです。
緊急連絡先という意味合いもあるため、すぐに来院できる同居家族が身元引受人になることが多いです。
(参考:厚生労働省)
入院で連帯保証人を立てられない場合の対処法
入院時にどうしても連帯保証人がいない場合は、まずは病院に相談してみましょう。
近年は少子高齢化となり、身寄りのない人が増えています。
いろいろな事情で親族に頼れない人もいるでしょう。
友人に頼むこともできますが、関係性悪化の懸念もあり難しいのが現状ではないでしょうか。
ここでは、入院時に連帯保証人を立てられない時の対処法を解説します。
まずは病院側に相談する
連帯保証人にできる人がいなければ、まずは病院に相談してください。
医療ソーシャルワーカーや病院の医療事務課(受付)で相談しましょう。
連帯保証人が準備できない理由を説明して、柔軟に対応してもらえないか交渉します。
病院によっては、連帯保証人に替わる選択肢を提示してくれる場合があります。
クレジットカード払いにする
医療費の支払いをクレジットカード払いにすることを前提に、入院前にクレジットカード番号を登録しておくことで連帯保証人を免除してくれる場合があります。
クレジットカード払いなら、病院はカード会社に請求ができるので、手数料がかかるものの回収不能になるリスクを抑えることができます。
連帯保証人がいない人にとっても、負担が少なく双方にメリットがある方法です。
入院保証金を入れる
一定額の入院保証金を預けることで、連帯保証人の指定を免除してくれる病院もあります。
病院によって入院保証金の額は異なりますが、およそ10万円~20万円程度です。
退院時の支払いに充当され、余った分は返金、足りなければ差額分を支払うことになります。
事前に多めの現金を用意しておく必要がある点に注意してください。
保証人代行サービスを利用する
無職や支払い能力不足でどうしても連帯保証人を指定することが困難である場合、病院から保証人代行サービスの利用をすすめられるケースも。
保証会社と提携している病院もあります。
保証人代行サービスは、社会福祉協議会やNPO、民間の保証会社などが提供しています。
保証人代行サービスを利用するには、ある程度まとまった費用がかかることに注意が必要です。
例えば、さいたま市の社会福祉協議会は高齢者くらしあんしん事業の1つとして保証機能サービスを提供しています。
サービス利用料は年間1万2,000円です。
入院時の保証サービスを利用するには、サービス利用料に加えて預託金として30万円〜60万円が必要です。(医療費支払い後の残金は返還されます)
医療費が高額になることもあり得るため、入院費用数か月分を事前に預ける必要があります。
利用するサービスによって費用は大きく異なりますが、数十万円程度のまとまった額が必要と認識しておきましょう。
(参考:さいたま市社会福祉協議会)
連帯保証人がいなくても病院側が入院を拒否することはできない
平成30年に厚生労働省より、身元保証人がいないことのみを理由に医療機関が入院を拒否することは医師法に抵触すると通達が出ています。
先に述べた、連帯保証人がいない場合の対処法のいずれも難しいようであれば、その旨を病院に伝えましょう。
保証人がいないことで入院を拒否されることはありません。
(参考:厚生労働省)
入院時にトラブルを防ぐために
入院時のトラブルを防ぐためには、連帯保証人の役割を理解しておくことが大切です。
実際に連帯保証人に請求したケースは、請求全体の1%未満というデータがあります。
(参考:総務省・中国四国管区行政評価局、総務省・行政苦情救済推進会議)
まれなケースと言えますが、いざ自分が当事者になった時にもめないように対応したいですね。
次に、トラブルにならないためのポイントを解説します。
連帯保証人を依頼する人にきちんと説明する
連帯保証人をお願いする人には、事前に連帯保証人の役割・責任をきちんと説明することが重要です。
万が一自分が死亡した時や医療費が払えない状態になった時には連絡が来るかもしれないことを伝えましょう。
もし、資力が十分にあり医療費が払えないリスクがないなら、そのことも伝えておくと、依頼された人が引き受けやすくなるでしょう。
入院する人に連帯保証人を依頼されたらリスクを把握しておく
逆に、あなたが連帯保証人を依頼された場合は、どういう役割なのか、どんな時に責任が発生するのかを明らかにしておくことが大切です。
あとから「聞いていない」「そんなつもりではなかった」とトラブルになることを避けられます。
入院申込書に嘘を書かない
入院申込書に虚偽の内容を記載すると私文書偽造罪に問われる可能性があります。
連帯保証人の欄に勝手に署名する行為も同様です。
私文書偽造罪に問われると、刑法第百五十九条により、3か月以上5年以下の懲役に処されます。
連帯保証人欄の署名は、連帯保証人自らの署名と押印が原則です。
まとめ:入院申込書に記載する連帯保証人は無職の人でも問題なし!
入院時の連帯保証人は無職の人でも問題ありません。
病院から本人確認を求められたり、職場に連絡が入ることもありません。
もちろん職がある人の方が安心ではありますが、最終的にきちんと医療費の支払いができればよいため、無職の人でもOKです。
しかし、連帯保証人の条件は、病院によって異なるため、病院の規定に従いましょう。
連帯保証人が無職であったり、連帯保証人がいないからといって入院を拒否されることはありません。
勝手に代筆したり、虚偽の内容を申告すると罪に問われることがあるため、必ず正直に記入してください。
近年は、医療費のクレジットカード払いや入院保証金によって、連帯保証人を免除してくれることも。
どうしても連帯保証人がいない場合は、まず病院の受付や相談員に相談しましょう。
ライター名:FP2級・AFP保有ライターchaky