S&P500指数は、長期の上昇トレンドを形成しています。
米国を代表する株価指数のため、もしS&P500が下落に転じれば、日本の株価にもかなりの影響がでるでしょう。
そのため個人投資家にとって、「現在のS&P500の水準に過熱感はないのか」「暴落の危険性はないか」という疑問は避けては通れないものです。
そのような疑問を持ったときに活用できる指標としてPERがあります。
そこで本記事では、気になったときにPERが確認できるように無料の調べ方を解説していきます。
どのようなサイトをチェックすればいいのかが分かるようになりますよ。
PERとは?PERの計算方法を解説
PERとは「Price Earnings Ratio」の頭文字をとった言葉です。
株価収益率ともいい、株価が割高か割安かを示す指標として広く知られています。
- PERが高い=割高
- PERが低い=割安
ただ、一概に「PERが20倍=高い」や「PERが15倍=低い」ということが言えるものではなく、同じような業種と比較するなど相対的な判断をする必要があります。
テレビやネット記事などをみていると「日経平均株価の予想PERは15.64倍(2024/8/16)で、S&P500指数などと比べるとまだ低いため、今後も上昇余地がある」などと解説されることがありますが、これはPERが相対比較をする必要があることを示す例といえます。
PERの計算方法
では、PERはどのように計算するのでしょうか?
計算式は次の通りです。
PER = 株価 ÷ EPS(1株あたりの当期純利益)
※ EPS = 当期純利益 ÷ 発行済み株式数
ただPERは、次年度の当期純利益(予想)をもとに計算された「予想PER」が重要なため、以下で計算されたものを使うことが一般的です。
予想PER = 株価 ÷ 予想EPS(1株あたりの当期純利益)
※ 予想EPS = 予想当期純利益 ÷ 発行済み株式数
S&P500の予想PERは?無料の調べ方を紹介
S&P500指数の予想PERは、以下のサイトをみれば誰でも無料で調べることができます。
Multpl - Market, financial, and economic data
このサイトによれば、2024年8月16日の引け後のS&P500指数の予想PERは29.02倍です。
これまでの予想PERの推移は?
下のチャートは、1871年からの予想PERの推移です。
(引用:multpl)
最も低かった予想PERは1917年の5.31倍で、逆に最も高かった予想PERは2021年に記録した222.97倍でした。
歴史を振り返ると、予想PERにはかなり大きな振れ幅があることがわかります。
今後はどのような推移をたどるのか楽しみですね。
現在の予想PERは割高・割安?
現在の予想PERから判断すると、S&P500指数は割高な水準といえます。
1871年から現在に至るまでの予想PERの平均値と中央値をあらわしたものが下の表ですが、現在の予想PERは歴史的にみるとかなり高い水準であり、割高であることが分かります。
S&P500 PER | 平均 | 中央値 |
期間:1871年-2024年 | 16.08 | 15.00 |
(参考:multpl)
また過去20年に絞っても、依然として現在の予想PERは割高であることを示しています。
S&P500 PER | 平均 | 中央値 |
期間:2005年-2024年 | 23.85 | 21.08 |
(参考:multpl)
現在のS&P500は高すぎる?今後大暴落はあるのか?
過去のトレンドからみれば、現在のS&P500指数のPERは割高であることが分かりました。
では現在のS&P500指数が割高ならば、今後下落するのでしょうか?
私は「一時的な調整局面はあったとしても、このまま右肩上がりのトレンドは続く」と考えています。
(引用:multpl)
このチャートは、S&P500指数の予想EPSの推移ですが、こちらも右肩上がりになっていますね。
このようにEPSが上昇すれば、PERに低下圧力がかかります。(PERの計算方法を参照)
そのため、このトレンドが続き、株価が横ばいだとすると仮定すれば、予想PERは低下することになります。
※EPSは直近20年で年5%程度の成長率を記録しています。
予想EPSがトレンド通りならば「予想PERが高すぎるから今後S&P500指数は下落する」という連鎖は起こらないはずです。
PERは一つの指標に過ぎない
ここまでPERに焦点をあてて説明してきましたが、株価・指数が割高か割安かをPERだけで判断することは危険です。
PERだけで今後の株価予測ができるのであれば誰でも株式投資で利益を得ることができます。
他の株価指標はもとより、テクニカル分析やファンダメンタルズ分析と掛け合わせることで今後の株価推移を予測することが望ましいでしょう。
番外編|投資の森でS&P500のPERは調べられるのか?
AIを活用して日経平均の値動きを予想するサイト「投資の森」では、S&P500のPERを調べることができません。
投資の森では、日経平均の予想PERを下のチャートのように掲載されているため、「S&P500でも同じように予想PERを調べられるのではないか」考える人もいるでしょう。
(引用:投資の森)
残念ながら、投資の森では調べられませんのでご注意ください。
まとめ
最後にこの記事をまとめます。
- PERとは、株価が割高なのか割安なのかを判断する指標です
- 現在のS&P500指数の予想PERは29.02倍となっています
- 過去のPERの推移をみると、現在のPERは割高と判断されます
- ただ、株価の下落にはつながらないと予想しています
- その理由は、EPSが今後も上昇していくと考えられるからです
過去最高値を超え続けるS&P500指数ですが、今後どのような推移をたどるのでしょうか。
新NISAも始まりインデックスファンドの人気が高まっているため、ますますS&P500指数の値動きに注目する投資家は増えているはずです。
PERだけがすべてではありませんが、投資判断の一つのツールとして記事で紹介したサイトを活用してみてください。
ライター名:金融ライター ひろきち