結論から書きます。子や孫、甥や姪に渡す普通のお年玉に、贈与税はかかりません。ただしこれは「お年玉が税金の対象外だから」ではなく、法律上は贈与に当たるものを課税しない扱いにしている、という理由でそうなっています。
根拠は国税庁のタックスアンサーNo.4405です
国税庁が公開している税金のQ&A集、タックスアンサーのNo.4405「贈与税がかからない場合」は、贈与税がかからない財産を番号つきで並べています。その8番目に「個人から受ける香典、花輪代、年末年始の贈答、祝物または見舞いなどのための金品で、社会通念上相当と認められるもの」と書かれています。お年玉は年末年始に個人から個人へ渡す金品なので、ここに当たると読むのが自然です。
先に正直に書いておきます。このページに「お年玉」という言葉は一度も出てきません。お年玉が年末年始の贈答に含まれるという当てはめは、この記事の側の読み方です。
同じページの冒頭には「贈与税は原則として贈与を受けたすべての財産に対してかかる」と書かれています。つまり順番は、まず全部が課税対象で、そこから例外として抜けるという形です。お年玉も、いったんは贈与税の土俵に乗っています。あなたが受け取ったお年玉は、例外に当てはまっているから課税されていない、ということになります。
ただし、非課税の根拠は法律の条文ではありません
引っかかるのはここです。贈与税の非課税財産を並べている中心の条文は相続税法21条の3ですが、この条文に「香典」も「年末年始の贈答」も出てきません。2026年9月3日にe-Gov法令検索で相続税法21条の3を開き、第一号から第六号まで読みましたが、どこにもありませんでした。ページ内を「社会通念」で検索してもゼロ件です。
お年玉の非課税を直接支えているのは、国税庁の相続税法基本通達21の3-10です。通達は、国税庁が税務署の職員に向けて出す取扱いの指示で、法律そのものではありません。ただ、実際の窓口も調査もこれで動きます。原文はこうなっています。「個人から受ける香典、花輪代、年末年始の贈答、祝物又は見舞い等のための金品で、法律上贈与に該当するものであっても、社交上の必要によるもので贈与者と受贈者との関係等に照らして社会通念上相当と認められるものについては、贈与税を課税しないことに取り扱うものとする」。
「法律上贈与に該当するものであっても」と国税庁自身が認めた上で、課税しない扱いにすると書いています。そして判定の物差しは金額単独ではなく、贈与者と受贈者との関係等に照らして社会通念上相当かどうかです。祖父母から孫へなのか、他人からなのか、毎年の慣習なのか一度きりの大金なのか、といった事情ごと見られます。
「いくらから」の線引きは、どこにも書かれていません
お年玉についての金額基準を探しましたが、通達21の3-10にもタックスアンサーNo.4405にも、1万円まで、5万円まで、10万円までといった数字は一切ありません。ですからこの記事では、お年玉固有の上限額を書きません。書いてしまえば、それは誰かの推測を借りてきたことになります。
「いくらから」に一次情報で答えられる数字は、ひとつだけあります。贈与税の基礎控除110万円です。国税庁は、贈与税はその年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額から基礎控除額110万円を差し引いた残りにかかり、合計が110万円以下なら贈与税はかからず申告も不要だと書いています。
注意したいのは「合計額」という言葉です。これはお年玉専用の枠ではありません。同じ人がその年に受け取った贈与を全部足した後の判定です。車の購入資金の援助のように、社交上の贈答とは言えないまとまった贈与は、同じ1本の枠を使います。なお国税庁の原文は「暦年課税に係る基礎控除額110万円」です。相続時精算課税という別の制度を選んでいる贈与者からの贈与は、この合計とは別に数えます。お年玉だけを気にしている段階なら、暦年課税のほうを見れば足ります。
この110万円も、実は相続税法の本体には書かれていません。相続税法21条の5は「贈与税については、課税価格から六十万円を控除する」と定めており、これを租税特別措置法70条の2の4が、平成13年1月1日以後の贈与について110万円に上書きしています。条文だけ見て60万円だと思わないでください。
自分の状況がどれに当たるかで、読むべき箇所が変わります。渡した側か、受け取った側か。金額がふつうの範囲か、それとも合計が気になる水準か。近いものを選んでください。
あなたはどちらの側で、金額はどのあたりですか。
名前もメールアドレスも聞きません。どれが選ばれたかの件数だけ、記事を直すための集計に使います。
国税庁が非課税として挙げているのは、個人から受ける香典・花輪代・お中元・お歳暮・祝物・見舞いなどで、社会通念上相当と認められるものです。
ただしその根拠は法律の条文ではありません。「ただし、非課税の根拠は法律の条文ではありません」を読んでおいてください。
1年間に受けた贈与の合計で判断します。基礎控除の110万円は相続税法ではなく租税特別措置法によるものです。
「『いくらから』の線引きは、どこにも書かれていません」と「よくある誤解」を読んでください。
いちばん問題になりやすい形です。通帳と印鑑を誰が持っていて、実際に誰が出し入れしてきたのかが問われます。
「贈与税の調査は、何に向いているのか」を読んでください。
根拠になる一次情報を並べます
| 確かめたこと | 一次情報に書かれている内容 | 出典 |
|---|---|---|
| お年玉は贈与税の対象に入るか | 贈与税は個人から贈与により財産を取得したときにかかる。法人からの場合は所得税 | 国税庁 タックスアンサーNo.4402 |
| 非課税の直接の根拠 | 年末年始の贈答等の金品で、法律上贈与に該当するものであっても、社交上の必要によるもので社会通念上相当と認められるものは課税しない | 相続税法基本通達21の3-10 |
| 法律の条文に書いてあるか | 相続税法21条の3に香典も年末年始の贈答も記載なし。ページ内検索で「社会通念」もゼロ件 | e-Gov法令検索 相続税法 |
| 金額の線引き | お年玉の上限額を示す記載は通達にもタックスアンサーにもなし | 相続税法基本通達21の3-10/No.4405 |
| 唯一の数字 | その年にもらった贈与の合計額から110万円を控除。110万円以下なら課税も申告も不要 | 国税庁 タックスアンサーNo.4402 |
| 110万円の出どころ | 相続税法21条の5は60万円。租税特別措置法70条の2の4が平成13年1月1日以後の贈与について110万円に上書き | e-Gov法令検索 相続税法・租税特別措置法 |
| 定期金の扱い | 毎年100万円ずつ10年間もらうことが契約されている場合は、契約した年に定期金に関する権利の贈与を受けたものとして贈与税がかかる | 国税庁 No.4402 質疑応答Q1 |
| 贈与財産の取得の時期 | 口頭による贈与は贈与の履行があった時、書面による贈与は贈与契約の効力が発生した時 | 国税庁 No.4402 質疑応答Q2 |
| 18歳未満がもらった場合 | 父母や祖父母からの贈与でも、その年1月1日に18歳未満なら特例税率ではなく一般税率 | 国税庁 タックスアンサーNo.4408 |
出典は次のとおりです。No.4402 贈与税がかかる場合|国税庁、No.4405 贈与税がかからない場合|国税庁、No.4408 贈与税の計算と税率|国税庁、相続税法基本通達 第21条の3関係|国税庁、No.4402 質疑応答(Q1 毎年、基礎控除額以下の贈与を受けた場合/Q2 贈与を受ける財産の取得の時期)|国税庁、e-Gov法令検索 相続税法、e-Gov法令検索 租税特別措置法。いずれも2026年9月3日に実際に開いて原文を確認しました。
よくある誤解を4つ、なぜ違うのかまで書きます
誤解1 お年玉は10万円を超えると贈与税がかかる
10万円を境目とする一次情報は見つかりませんでした。通達にもタックスアンサーにも金額の線はありません。判定は関係性を含めた社会通念上相当かどうかで、そこに一律の数字は用意されていないのです。10万円を超えたから即課税、という説明は根拠を示せません。
誤解2 お年玉には110万円の非課税枠がある
110万円はお年玉の枠ではありません。国税庁の原文は「贈与を受けた財産の価額の合計額」です。1年間に受け取った贈与を全部足して判定します。ただし足すのは、贈与税の対象になるものです。お年玉や入学祝いのように、社交上の必要による贈答で社会通念上相当と認められるものは、通達21の3-10で課税しない扱いになります。扶養義務者から受け取る生活費や教育費で通常必要と認められるものも、相続税法21条の3が非課税と定めています。合計するのは、それらのどれにも当たらない贈与です。祖父母からお年玉をもらい、同じ年に親から車の購入資金の援助を受けたなら、後者は同じ1本の枠を使います。お年玉に専用の枠が用意されているわけではない、という意味です。まとまった資金の援助を受けた年は、この合計を一度確認してください。
誤解3 毎年110万円以下ずつなら何をしても安全
国税庁のQ&Aは、毎年100万円ずつ10年間にわたって贈与を受けることが贈与者との間で契約されている場合には、契約をした年に定期金に関する権利の贈与を受けたものとして贈与税がかかる、と説明しています。課税されるのは毎年の100万円ではなく、10年分を受け取る権利そのものであり、その権利をもらった年に贈与税がかかる、という説明です。権利をいくらと評価するかまではこのQ&Aに書かれていないので、この記事では金額を書きません。
ただしこの設問は親から毎年100万円という事例で、お年玉について答えたものではありません。お年玉は普通そんな約束をしませんから、そのまま当てはめるのは無理があります。書いておきたいのは、金額を刻めば何でも通るという考え方のほうが危ない、という一点です。
誤解4 子ども名義の口座に貯めておけばずっと非課税
ここは断定できません。断定できない理由ごと書きます。生活費や教育費の非課税については、通達21の3-5が、生活費又は教育費の名義で取得した財産を預貯金した場合や株式・家屋の買入代金に充当した場合、その金額は通常必要と認められるもの以外のものとして取り扱う、と定めています。名目ではなく実際の使われ方で見る、という考え方です。
ただしこれは生活費・教育費の号についての通達で、お年玉を扱う21の3-10に同じ文言はありません。子ども名義の口座に貯めた場合にどう判断されるかを示した国税庁の記述は、今回は確認できませんでした。親や祖父母のお金を子ども名義の口座に入れているだけで、中身は親のものと見られる預金のことを、いわゆる名義預金と呼びます。この判定基準についても同じで、開いて確かめた一次情報がないので基準は書きません。気になるなら、通帳と印鑑を今誰が持っていて、実際に誰が出し入れしてきたのかを、事実として書き出しておいてください。取り繕うためではなく、税務署に相談するときに聞かれるのがそこだからです。
現金や名義預金が相続のときにどう見られるかは、タンス預金はいくらまで大丈夫?国税庁データで見るバレる実態と相続の分岐点で国税庁のデータから見ています。
贈与税の調査は、何に向いているのか
この疑問に正面から答える一次情報は、今回は見つけられませんでした。金融機関から何が国税庁に届くのか、いくら以上の入金が把握されるのかを書いた公式資料には行き当たっていません。ですからここでは、発覚の仕組みを想像で描くことはしません。代わりに、実際に公表されている数字だけを出します。
国税庁が令和7年12月に公表した報道発表資料によると、令和6事務年度の贈与税の実地調査は2,778件、追徴税額は123億円でした。調査で申告漏れなどが見つかった件数のうち、そもそも申告していなかったものが83.4%です。別の円グラフでは、申告漏れになった財産の種類のうち、現金・預貯金等が62.9%を占めています。同じ資料には、相続税の補完税である贈与税についても積極的に資料情報を収集する、という記述もあります。
この資料に載っている調査事例は4件で、相続人宅で保管した現金、家族名義の口座へ移した預金、国外法人への貸付金の隠ぺいと、国外に住む相続人の無申告事案への接触です。お年玉の事例は1件もありません。出典は令和6事務年度における相続税の調査等の状況(国税庁)で、2026年9月3日にPDFを開いて確認しました。
この資料から言えるのはここまでです。調査で問題になっているのは、そもそも申告が必要なのに出されていない事案が中心で、動いている財産は現金と預金が多くを占めます。普通のお年玉はそもそも申告の必要がないので、この統計の外側にあります。調査事例にお年玉が1件も出てこないのは、お年玉なら見つからないという意味ではなく、税務署が問題にしているのが相続財産や家族名義口座といった別の話だからです。この節は、隠しても大丈夫かを判断する材料にはなりません。
自分で確かめる手順
- 受け取った側で、その年の1月1日から12月31日までにもらった贈与を書き出します。ただしお年玉、入学祝い、就職祝い、お見舞いのように、通達21の3-10が挙げる社交上の贈答で社会通念上相当な範囲のものは、お年玉と同じ理由でここから外れます。扶養義務者から受け取る生活費や教育費で通常必要と認められるものも、相続税法21条の3の非課税に当たるので外します。書き出すのは、まとまった現金の援助、車の購入資金、住宅資金のように、社交上の贈答とは言えない贈与です。
- 合計します。110万円以下ならそこで終わりで、申告も不要です。超えたら次へ進みます。
- 渡した日で年を分けます。国税庁は、口頭による贈与の場合は贈与の履行があった時、書面による贈与の場合は贈与契約の効力が発生した時が取得の時期だと説明しています。お年玉は普通は口頭なので、実際に手渡した日の属する年で数えます。
- 贈与税の税率表は2つあります。18歳以上の人が父母や祖父母からもらった分に使う表(特例税率)と、それ以外に使う表(一般税率)です。もらった人がその年の1月1日に18歳未満なら、相手が父母や祖父母でも税率の低いほうの表は使えず、一般税率の表で計算します。国税庁No.4408の速算表で、使う表を間違えないでください。なお、もらった人が未成年の場合は一人で判断しないでください。お年玉をもらった側としてこのページを読んでいて、まだ高校生以下なら、金額と誰からもらったかを親に伝えるところから始めてください。
- 申告が必要なら、もらった年の翌年2月1日から3月15日までに、住んでいる場所を管轄する税務署へ申告と納税をします。
- 判断に迷ったら、金額と渡した相手との関係、渡した経緯をメモにして税務署に相談します。関係性が判定要素になっている以上、金額だけ伝えても答えは返ってきません。
渡す側にもひとつだけ。将来まとまった財産を渡す予定があるなら、お年玉のような社交上の贈答と、資産を移すための贈与を、頭の中で分けておいてください。前者は通達で課税しない扱いになります。後者は資産を移す贈与そのものなので、渡し方を工夫して非課税に見せる方法を探すより、金額と日付を記録して、必要なら申告する前提で進めるほうが確実です。国税庁のQ&Aが示しているのは、総額と回数をあらかじめ決めていた場合の扱いであって、決めなければ何年でも安全という意味ではありません。判断されるのは実際のやりとりの中身です。
まとめ
- 普通のお年玉に贈与税はかかりません。根拠は相続税法の条文ではなく国税庁の相続税法基本通達21の3-10で、法律上は贈与に当たると認めた上で、社交上の必要によるもので関係等に照らして社会通念上相当なら課税しない、と定めています
- お年玉の非課税に金額の線引きはありません。1万円でも10万円でも、金額だけで結論は出ません
- 「いくらから」に一次情報で答えられるのは、その年の贈与を合計して判定する基礎控除110万円だけです。合計に入れるのは、社交上の贈答にも生活費・教育費にも当たらない贈与です
- もらった人がその年の1月1日に18歳未満なら、父母や祖父母からもらっても税率の低いほうの表は使えません。未成年なら一人で判断せず、金額と相手を親に伝えてください
- 税務署がどう把握するのかを示す一次情報は確認できませんでした。分かるのは、贈与税の調査で申告漏れが見つかった件数の83.4%が無申告、財産の種類では現金・預貯金等が62.9%という統計までです
- この記事の数値と条文は、すべて2026年9月3日に一次情報を開いて確認しました
