クレジットカードの不正利用は、多くのカード会社の規約で、届け出た日からさかのぼって約60日分が補償の対象になっています(dカードは90日)。ただし、補償の条件は各社の会員規約に書かれていて、会社ごとに違います。主要12社の規約はどれも、家族が使った分や暗証番号が使われた取引を、補償の対象外になり得るものとして挙げていました。ワンタイムパスワードなどの本人認証を通った取引も、8社が規約か公式ページで扱いを定めています。
12社の規約は実際に開き、条項の番号と版を確かめました。明細の知らない行が本当に不正利用かを確かめたい人は、先に身に覚えのない請求の正体を調べる3ステップを読んでください。すでに「補償の対象外」と言われた人は、まずカード会社に理由と、規約のどの条項にあたるかを聞いてください。納得できないときは、消費者ホットライン188に電話すると、近くの消費生活センターなどを案内してもらえます。施設点検日と年末年始を除き原則毎日使えて、相談は無料、通話料は自己負担です。ほかの窓口は記事の後半にあります。出典は消費者ホットライン(消費者庁)です。2026年10月13日に確認しました。
ただし、補償の条件は各社の会員規約に書かれています
日本クレジット協会は、紛失や盗難による不正利用は通常、会員補償制度の対象になると説明しています。そのうえで要件は「カード会社によって異なるため、契約時に規約などを要チェック」としています。規約の多くは、他人に使われた分もまず会員の負担と定め、条件を満たした分を免除する作りです。楽天カードの規約第17条も「すべて会員が責を負うものとします」と書き、「但し」で免除の条件を続けていました。
クレジットカードの取引のルールを定めた割賦販売法にも、不正利用の補償を義務づける条文は見当たりませんでした。同法が不正利用について定めているのは、加盟店に防止の措置を求める規定などです。補償を一律に義務づける法律の条文を示した公的な説明も、今回読んだ範囲では見当たりませんでした。消費者庁のサイトに載る経済産業省の解説資料も、カード会社が不正利用と判断すれば「一定期間内なら」返してもらえる、という書き方です。出典は割賦販売法(e-Gov法令検索)、クレジットのトラブル回避術(日本クレジット協会)、クレジットカードの不正利用や後払いの支払遅延から身を守るために(消費者庁サイト掲載)です。2026年10月12日に確認しました。
補償の期間と警察への届け出を、12社の規約で比べました
下の表は、補償の期間と、番号だけを盗まれたときに警察への届け出が条件かを、各社の規約から抜き出したものです。会社名から規約を開けます。
| カード会社 | 補償の期間(規約の書き方) | 番号だけ盗まれたときの警察への届け出 | 条項(規約の版) |
|---|---|---|---|
| 三井住友カード | 通知の受領日の61日以前は対象外 | 条件にない(通知で足りる) | 第13・14条(2026年3月改定) |
| JCB | 紛失・盗難は通知日の60日前以降。番号のみは明細の通知から60日以内の届け出分 | 条件にない | 第40条・第40条の2(2026年3月31日現在) |
| 楽天カード | 連絡の受理日の60日前以降 | 必要 | 第17条(2026年6月1日改定) |
| イオンカード | 届出の受理日を含めて61日前まで | 必要 | 第6条(版表示2026.08) |
| セゾンカード | 連絡日を含めて61日前まで | 必要 | 第16条(2024年10月現在) |
| エポスカード | 連絡日を含めて61日前まで(全部又は一部を免除) | 条件にない | 第14条(2026年10月1日版) |
| dカード | 届出の受領日から遡って90日 | 条件にない | 第27条(2026年7月1日適用) |
| 三菱UFJニコス(MUFGカード・DCカード等) | 紛失・盗難は連絡の受付日前60日以降。番号のみは規約に日数の区切りが見当たらない | 条件にない | 第16・18条(2025年12月9日改定) |
| PayPayカード | 連絡の受理日の60日前以降(全部又は一部を免除) | 必要 | 第20条(2026年9月3日) |
| アメリカン・エキスプレス | 届出の受領日から遡って60日目以降 | 必要 | 第6条(2026年1月15日改定) |
| オリコ | 通知日の60日前以降 | 必要 | 第28・30条(令和8年3月2日) |
| au PAYカード | 届出日から起算して61日前以降 | 必要 | 第47条(2026年7月1日改定) |
期間の書き方は「60日前以降」「61日前まで」など会社ごとに違い、細かい数え方は各社の文言で確かめる必要があります。dカードは90日で、4980・5302・5334で始まるカードの規約第31条も同じでした。カードそのものを落とした、盗まれたという場合は、12社とも警察への届け出を求めています。
届け出の期限とは別に、書類の期限を決めている会社もあります。楽天カードとPayPayカードは、被害を知った日から30日以内に書類を出すことを定めています。三井住友カード(カード会社が必要と判断した場合)とdカード(カードの紛失・盗難の場合)も、30日以内の提出を定めています。
JCBで番号だけを盗まれた場合は、届け出た日ではなく、その利用が初めて載った明細の通知日が起点になります。三菱UFJニコスの第18条には日数の区切りが見当たらず、公式ページにある「61日以前の利用」は盗難・紛失の連絡についての記載でした。公式ページは対象外の例を「など」として挙げているため、番号だけの被害も気づいた日に連絡するのが安全です(この記事の整理)。NICOSカードは別の会員規約(2025年4月1日改定)ですが、紛失・盗難の60日(第16条)と本人認証(第20条)は同じ趣旨です。楽天カードの60日の考え方は、楽天カードに身に覚えのない請求?公式の3ステップと、補償が60日で切れる理由で詳しく書いています。
出典は表にリンクした各社の会員規約と、不正利用の補償(三菱UFJニコス)です。いずれも2026年10月12日に開いて確認しています。
補償されない条件は、12社でほぼ共通でした
各社の規約で、補償の対象外として並んでいる条件を拾いました。
| 補償されない条件 | 書いていた会社 | 条項の例 |
|---|---|---|
| 家族・同居人などが使った | 12社すべて | JCB第40条第4項(2)は別居の親族も含む |
| 本人の故意・重大な過失 | 12社すべて | 三井住友カード第14条第3項(1) |
| 登録した暗証番号が使われた | 12社すべて | アメリカン・エキスプレス第6条第3項(6) |
| 書類を出さない、調査に協力しない | 12社すべて | オリコ第31条⑧ |
| 届け出を怠った、遅らせた | セゾンカード、オリコ | オリコ第31条③ |
| 裏面の署名欄に署名がない | イオンカード、au PAYカード | au PAYカード第47条第2項(8) |
「届け出を怠った、遅らせた」の行は、除外の一覧に書いていた会社です。12社とも、紛失や不正利用に気づいたら「直ちに」か「速やかに」連絡することを求めています。暗証番号の行は、管理に故意や過失がなければ例外とする規約が10社でした。イオンカードは例外を「当行に責がある場合」に限り、PayPayカードは免除の条件を定めた第20条に例外を書いていません。
ワンタイムパスワードなどの本人認証を通った取引の扱い
ネットの買い物で、SMSやメールに届く数字を入れたり、アプリで承認したりして本人かどうかを確かめる仕組みを、本人認証や3Dセキュアと呼びます。この認証を通った取引の扱いは、次のとおりでした。
| カード会社 | 本人認証を通った取引についての記載 | 出典 |
|---|---|---|
| 三菱UFJニコス(MUFGカード・DCカード等) | 全額を本人会員が負担。注意義務を尽くしていれば例外。公式ページは本人と判定された取引を補償対象外に挙げる | 規約第20条 |
| JCB | ワンタイムパスワードなどのパスワードが使われたら本会員の負担。管理に故意・過失がなければ例外。MyJCBアプリの生体認証が使われた場合などは、故意・過失の有無を問わず本会員の負担 | J/Secure(TM)利用者規定第7条第7項・第8項 |
| 楽天カード | ワンタイムパスワードなどが使われたら会員の負担。管理に故意・過失がないと認めれば例外 | 規約第29条第6項 |
| エポスカード | Visa Secureやワンタイムパスワードも「暗証番号等」で、使われたら会員の負担。故意・過失がないと認めれば例外 | 規約第3条 |
| dカード | ワンタイムパスワードなど本人認証を伴う取引は補てんしない。カード会社からの本人の利用かどうかの確認に承認したことによる損害も同じ。どちらも故意・過失がないと認めれば例外 | 規約第27条第3項(4)(7) |
| PayPayカード | 本人認証が行われたら会員の責任。登録電話番号・ワンタイムパスワード・端末の管理を守っていたと認められれば例外。一方、免除の条件を定めた第20条は、認証情報の一致を確かめた利用を対象外とし、例外を書いていない | 規約第33条の2第5項、第20条第2項(7) |
| au PAYカード | 規約に明記なし。公式ページは本人と判定された取引を補償の適用外に挙げる | 公式ページ |
| オリコ | 正しいパスワードが入力されたら、入力者を本人認証サービスの利用者とみなす。本人認証サービスを自分で解除したことによる損害も免責しない | 本人認証サービス利用規約(令和6年10月1日)第3条(2)、会員規約第31条② |
| 三井住友カード、イオンカード、セゾンカード、アメリカン・エキスプレス | 規約上の明記は確認できず | 各社の会員規約 |
いちばんはっきり書いていたのは、三菱UFJニコスの規約第20条第1項です。
カード情報の利用にあたり、クレジットカード本人認証サービスが利用されたときには、第18条第1項の規定にかかわらず、当該カード等利用代金等相当額全額につき本人会員が支払義務を負担するものとします。
記載のあった8社のうち6社は、認証に使う情報の管理に落ち度がなければ例外とする書き方でした。ただしJCBは、アプリの生体認証が使われた場合を例外にしていません。dカードの規約は、カード会社から本人の利用かどうかを確かめられて承認した取引も、補てんしないものに挙げています。身に覚えのない取引なら承認しないことが大切です(この記事の整理)。明記がなかった4社は、認証済みの取引の扱いを規約から判断できないため、カード会社に直接確かめてください。出典は表の各社の規約、J/Secure(TM)利用者規定(JCB。末尾の版表示JS100000・20250228)、不正利用の補償(au PAYカード)です。2026年10月12日に確認しました。
フィッシングサイトにワンタイムパスワードを入れてしまった場合
公的機関とカード会社の案内は、入力しないこと、入力したらすぐ連絡することで共通です。三井住友カードは、身に覚えのない認証コードを「入力した場合、不正な取引が決済されてしまいます」と注意しています。国民生活センターは、フィッシングサイトに入力してしまったら、クレジットカード会社などに連絡するよう勧めています。
補償されるかどうかの一般的な基準は、今回読んだ日本クレジット協会・消費者庁・国民生活センターの記述には見当たりませんでした。手がかりは、国民生活センターの紛争解決委員会が公表した和解の記録です。
2025年3月と7月に公表された3件では、偽の通販サイトにカード番号とワンタイムパスワードを入れた後、約3万円から約20万円が決済されていました。カード会社は、規約にあるパスワードの管理責任を理由に支払いを求めています。仲介委員は、SMSに決済金額が書かれていなかった点などから、過失があっても軽いと判断しました。3件とも、カード会社が半額を補償する内容で和解しています。
これは個別の和解で、同じ結果になるという基準ではありません。同じ2025年7月の公表には、ワンタイムパスワードが使われた20万円の取引で、カード会社が負担に応じず、和解が成立しなかった事案も載っています。それでも、認証を通った取引が一切戻らないとは限らないことは、公的な記録で確かめられます。届いたSMSや偽サイトの画面は、消さずに残しておくと、カード会社に経緯を説明しやすくなります(この記事の整理)。出典はネットショッピング認証サービス(三井住友カード)、そのメール、フィッシング詐欺!(国民生活センター)、国民生活センターADRの実施状況と結果概要について(令和6年度第4回)、同(令和7年度第1回)です。2026年10月12日に確認しました。
カードではなく、PayPayなどの決済アプリで自分で送ってしまった場合は扱いが違います。自分で送ってしまった詐欺の場合は、PayPayの補償規約で確かめた記事にあります。
被害は2025年に510.5億円、9割超が番号盗用
日本クレジット協会によると、2025年(1〜12月)のクレジットカード不正利用被害額は510.5億円で、前年(2024年)の555.0億円より約8.0%少なくなっています。うち番号盗用が475.4億円で、93.1%を占めました。減少率はこの記事の計算です。
2026年は調査方法が変わり、四半期調査の対象が40社から48社に広がりました。このため2026年の数字は、2025年以前とそのまま比べられません。どちらの数字もキャッシングを含み、海外で発行されたカードの分は含みません。2026年4〜6月は107.7億円で、前の3か月より5.2%減っています。1〜6月の合計は221.3億円で、番号盗用の割合は93.1%でした。出典はクレジットカード不正利用被害の集計結果について(日本クレジット協会、2026年9月7日公表)と同協会の2026年6月30日公表資料です。2026年10月12日に確認しました。
よくある誤解を3つ、規約でほどきます
誤解1「不正利用は法律で全額補償される」
補償の条件は各社の規約の定めで、日本クレジット協会も要件はカード会社によって異なるとしています。割賦販売法にも、補償を義務づける条文は見当たりませんでした。エポスカードとPayPayカードの規約は、免除の範囲を「全部又は一部」と書いていました。
誤解2「警察に被害届を出さないと補償されない」
番号だけを盗まれた場合は、会社によって違います。表のとおり、三井住友カード、JCB、エポスカード、dカード、三菱UFJニコスの5社は、警察への届け出を条件に書いていません。三井住友カードの規約第13条第2項は「カード情報の紛失・盗難については、当社への通知で足りるものとします」と定めています。
残る7社は、番号だけの場合も警察への届け出を条件に含めていました。PayPayカードのヘルプも、調査を進めるには警察へ遺失届か被害届を出す必要があると書いています。国民生活センターのADRの記録には、被害届を受け付けてもらえなかったという申請人の説明も載っていました。その場合も、警察に行った日時と窓口を控えておくと、カード会社への説明に使えます(この記事の整理)。
誤解3「カードを止めれば請求は自動で消える」
止めることと、請求を取り消すことは別の手続きです。三井住友カードの公式ページでは、利用停止の後に明細の問い合わせをし、約1週間で回答が来てから補償の手続きに入ります。三菱UFJニコスは調査に「1ヶ月程度お時間をいただく場合がございます」と書き、JCBは「2~3週間ほどで調査結果を回答します」としていました。
出典はカードの不正利用に対する保障制度について(三井住友カード)と不正利用の補償(三菱UFJニコス)、カード不正利用時の補償(JCB)です。PayPayカードの記述は紛失・盗難・不正利用時の補填について(PayPayカード)によります。2026年10月12日に確認しました。
自分のカードの規約で確かめる手順
手元のカードは、次の順で規約を読むと確かめられます。
- カードの裏面で発行会社を確かめます。JCBの補償の案内も、番号が「354」「355」で始まるカード以外は、裏面の発行会社に問い合わせるよう書いています。
- 発行会社の公式サイトで「会員規約」のページを開きます。dカードのように、カード番号の先頭4桁で規約が分かれる会社もあります。
- 「紛失」「盗難」「保障」「免除」で検索します。三井住友カードは「会員保障制度」、オリコは「免責されない損害」という見出しでした。
- その条文で、何日前までが対象か、警察への届け出が要るか、「次の各号」などで始まる除外の一覧を読みます。
- 「本人認証」「パスワード」でも検索します。JCBやオリコのように本人認証を別の規定に書く会社や、楽天カードのように紛失・盗難とは別の条に書く会社もあります。
- 規約の最初か最後にある改定日を控えます。
出典はカード不正利用時の補償(JCB)と各種規約(dカード)です。2026年10月12日に確認しました。
補償を断られたときの相談先
まずカード会社に、対象外とした理由と、規約のどの条項にあたるかを聞いてください。そのうえで使える外部の窓口は、次の3つです。
| 窓口 | 連絡先と受付 | できること |
|---|---|---|
| 消費者ホットライン(消費者庁) | 188。施設点検日と年末年始を除き原則毎日。相談は無料で、通話料は自己負担 | 近くの消費生活センターなどを案内 |
| 日本クレジット協会 消費者相談室 | 03-5645-3361。月〜金の10:00〜12:00と13:00〜16:00(祝日・年末年始を除く) | 法律の基本の説明や相談先の紹介。和解案を作るADRではない |
| 国民生活センター紛争解決委員会 | 消費生活センター等の相談で解決が見込めないときなどに申請 | 和解の仲介や仲裁。上の3件の和解もこの手続き |
出典は消費者ホットライン(消費者庁)、クレジットに関する相談窓口(日本クレジット協会)、紛争解決委員会(国民生活センター)です。いずれも2026年10月12日に確認しています。
まとめ
- 補償の条件は各社の会員規約に書かれていて、会社ごとに違います
- 期間は届け出日から約60日さかのぼる会社が多く、dカードは90日
- 家族の利用、重大な過失、暗証番号が使われた取引は、12社とも対象外になり得ます
- 本人認証を通った取引の扱いを書いていたのは8社。4社は確認できず
- 偽サイトにワンタイムパスワードを入れた3件は、ADRで半額補償の和解でした
- 番号だけの被害で、警察への届け出を条件にしていない会社は5社
- カードを止めても、請求の取り消しには申し出と調査が別に必要です
この記事に書いた内容は、2026年10月12日から13日にかけて各公式ページで確認しました。
お金の話は、根拠のあいまいな情報がそのまま広がっていることがあります。このサイトでは、法律の条文や官庁・業界団体の資料まで戻って、確認した日付とあわせて書いています。実際に出回っている誤りを訂正した例も含め、ほかの調べ物は人に聞けないお金の質問にまとめました。
