みなさんは「飲食店を経営する」と聞くと、どの様なイメージを持ちますか?
- 飲食店って簡単そう
- 昔から一度はやってみたかった
この様なイメージを持っている人は多いと思います。
開業する前の私もこのような印象を持っていました。
今回は私の飲食店経営の失敗体験談を赤裸々にお伝えします。
これから飲食店を始めたい人にとって必読な記事となっていますので、ご自身の参考にして頂ければ幸いです。
飲食店開業で失敗した体験談
私が飲食店を開業したのは20代半ば、まだ結婚もしていない社会人2年目の実家暮らしの時でした。
開業に至った流れや実際の借入金額など、隠すことなく体験談をお伝えします。
開業した経緯
私は当時、大学を卒業して電気製品を取り扱うコールセンターに勤務していました。
給料の良さからお金に目がくらみ夜勤専属で働いていたのですが、友人や家族との時間も合わず、次第に体調を崩してしまいました。
そんな時に友人から「観光地にカフェをオープンするんだけど、一緒にやってみないか?」と誘われたのが、開業することになったきっかけです。
その他諸々の条件も確認し、金銭的には不安が残るものの、今の環境から逃げ出したいという思いもあり即座に了承。
経営をしたこともないくせに「これは間違いなく成功する」と根拠のない自信があり、誘われたから3ヶ月後にコールセンターを退職しました。
借入の内訳
飲食店を開業するには多くの費用がかかります。
友人と相談した結果、開業資金として200万円を銀行から借入してスタートしました。
開業から半年ほど経過した時、追加で100万円を借入したので金額は300万円。
友人も同程度の金額を借りていたので、2人分を合計すると600万円でカフェを運営していました。
これらの借入は敷金礼金、設備投資や私たちの給料などに使われたため、カフェを閉業する時には全く残りませんでした。
売り上げが上がらず廃業
観光地で2年間カフェを運営していたのですが、私たちが居たエリアには思ったよりも人が集まらず売上は安定しない状況が続きました。
夏休みや長期休暇になると観光客が来るので食うには困らない程の売上があったのですが、平日やオフシーズンなどは本当に閑古鳥が鳴く程の酷い有様でした。
1人もお客さんが来ることなく、売上が0円だった日もあったほどです。
この様に、予想していた様な売上が上がることはなく、借入した資金を食い潰しながら騙し騙し運営をしていました。
初めの1年目はたまたま人が来ないだけと楽観的な考えでいましたが、2年目も状況が好転することはなく、友人と話し合った結果として閉業に至りました。
飲食店を失敗した理由
当時の状況を振り返って見て、失敗した原因が3つ見つかりました。
これらの原因は典型的ではありますが、誰でも陥る可能性がある大きな罠です。
もしあなたの考えとこれらの条件が合致するのであれば、開業は慎重にしたほうが良いでしょう。
開業自体は簡単
飲食店を開業すること自体は思っているよりも簡単でした。
簡単な理由は、誰でもやることが明確だからです。
飲食店がやることを説明すると「テナントを借りて来たお客さんに品物を提供する」という仕事。
この様なことは説明されずとも理解できると思いますが、例えばお掃除屋さんをやると考えた場合はどうでしょうか?
「場所はどうするのか?お客さんをどうやって集めるのか?機材はどこで買うのか?」など分からない事だらけです。
この明確さこそが「飲食店開業へのハードルの低さ」となり、多くの人が失敗する原因と言えます。
私も全く同じ様に考えており、案の定失敗してしまいました。
多額の借入
借入などをせず、今自分のある環境から小さくビジネスを始めることを「スモールスタート」と言います。
個人でビジネスを始める時はこの「スモールスタート」が鉄則。
なぜなら企業とは違い、個人は資金や時間に制限があるため、負けない(マイナスにならない)戦い方をしなければならないからです。
大勝ちせずとも、負けを続けないことが重要です。
しかしながら、私が行った飲食店経営は全く逆のことをしていました。
開業するだけで備品や食材の準備、運営していくのにテナント料が毎月10万円。
そして個人で300万円、友人の分の借入金額も合わせると合計600万円。
スタート地点がそもそもマイナスであり、回収にも時間がかかってしまう様な戦い方をしたことが失敗原因の1つでした。
見通しが甘かった
冒頭でも少し述べましたが、当時の私は20代半ばの未婚で実家暮らしでした。
また勤めていた会社にも不満が募っており、どうにかして状況を変えたいと強く思っていました。
声を変えてくれたのも友人であったため「どうにかなるだろう」ぐらいの安易な考えでいたのです。
観光地で実店舗を設ければ、それなりに人が来ると勘違いしていました。
本来であれば「観光客はどの程度くるのか?オフシーズンは地元民をターゲットにできるか?」など、より具体的に考えを巡らせるべきでした。
しかしながら、勤めていた会社から逃げたい気持ちも強く、甘い見通しのまま不安をあえて見ない様にして動いてしまったのです。
飲食店失敗から学んだこと
私の飲食店開業は失敗してしまいました。
しかしその実体験の中から、様々なことを学べたことも事実です。
もしまた同じ様に飲食店を開業する機会があれば、絶対にこれらの学びを活かし、失敗しない戦い方をします。
実務的な部分と精神的な部分の学びをお伝えするので、経験談として是非とも参考にしてください。
貯金をしておく
当然のことですが、最低限の貯金をしてから開業するべきです。
会社員時代の私はお金に関する知識が全くなく、有り金は全て使う生活をしていました。
そのため開業時には貯金がほとんどなく、売上がなかった月は借入したお金から生活費を補填していました。
その様な余裕のない経営状態では精神的にも安定せず、正しい判断ができないため、必要な場面で誤ったお金の使い方をしてしまいます。
飲食店を開業するのであれば、1年間は無収入でも生活していくだけの貯金は必須条件です。
撤退時期を決める(失敗を認める)
開業すると同時に、撤退する条件についても同じ様に決めておく事も重要です。
いつ、どの様な状況になったらお店を閉めるのか明確にしておきましょう。
事前に撤退時期を決めておく理由は単純で、人間は自らの過ちを認めたくない生き物だからです。
明らかにうまくいっていない状況でも、自らの経営が間違っていたとは簡単に認められません。
しかしながら、だらだらと経営を続け赤字を垂れ流すことは、その後の人生にも多大な影響を及ぼしてしまいます。
早い段階で見限ってしまえば傷は小さいですが、撤退が遅くなればなるほど傷は深くなります。
「資金が厳しくなったら辞める」や「そんな状況に陥ったら考える」では正直に申し上げて甘いです。
具体的なルールを決めて、その段階に至ってしまったら、余裕を持って撤退しましょう。
借金返済は辛い
本記事では一貫して「借入」という言葉を使用しましたが、別の悪い言い方で表すと「借金」です。
「借金は人生の前借り」という表現をしますが、私は20代半ばにして300万円を前借りしました。
その結果として残ったのは、飲食店が失敗した事実と300万円の借金だけでした。
私は閉業と同時に会社員へ戻り、そこから現在に至るまで借金を返済中です。
毎月約3万円を返済していますが、この状況が数年間続いているので金銭的にも精神的にもかなり辛いと言うのが本音です。
300万円という金額から受ける印象は人それぞれかと思いますが、私にとって300万円という借入は非常に大きな痛手となってしまいました。
飲食店失敗は人生失敗ではない
「飲食店を失敗してしまった」や「借金の返済は辛い」と書きました。
しかしながら、だからといって人生そのものが失敗したわけではありません。
返済し続ければいつか必ず完済可能であり、再起の機会はまだまだ残されている状況です。
失敗を認めた時は人生のどん底でしたが、前を向いていれば必ず道はあることに気がつきました。
飲食店で失敗した経験から最も学べたことは、それだけで人生が終わることはないという当たり前な事実でした。
まとめ
未経験から多額の借入を行い、安易な考えで飲食店をスタートした実体験をお伝えしました。
飲食店はやることが分かりやすく、周囲からの認知もされやすいため、経営をしたことがない人ほど挑戦しがちです。
しかしながら、実態はとても厳しい世界であり、資本のない人が飛び込んではいけない業界と言えます。
もし飲食店経営に興味がある方は、その資本を使って別のビジネスをすることができないか一考するべきです。
まずは小さくとも自分の生活を安定させるビジネスを確立し、飲食店の経営はそこから行いましょう。