病気やケガで働けない。
仕事もなくなり、貯金も底をついた。
経済的支援をしてくれる家族や親族もいない。
このように何らかの理由により経済的に困窮してしまった方に対して、「健康で文化的な最低限の生活」を保証する制度が「生活保護」です。
しかし、「働かずに一定額のお金を支給してくれる制度」と悪く捉えることもできます。
そのため、生活保護の受給には制限があり、「してはいけないこと」が定められています。
この記事では、生活保護受給者がしてはいけないこと、してもよいことをご紹介します。
絶対にしてはいけないこと5選
冒頭でも触れましたが、生活保護受給者は毎月一定額のお金の支給を受けることができますが、生活保護を受給する以上は様々な制限があります。
「知らなかったんです」では通らない「絶対にしてはいけないこと5選」をご紹介いたします。
投資性が高いもの、高額なものを所有する
生活保護受給者であっても、アクセサリーや時計などどんなものを使うのかの明確な制限はありません。
しかし、高級ブランド品や骨董品など「売ればお金になるもの」は資産とみなされるため、所有はできません。
貯金は一定額であれば認められていますが、そのお金で株やNISAのような投資性が高いものの所有は認められていません。
生命保険への新規加入もNGです。
申請時に所有している場合は処分を求められます。
ただし、FXや仮想通貨はギャンブルとして区分されるため、自身の支給額の範囲内であれば行うことが可能です。
隠してもっているとバレないのでは?
ケースワーカーには、押し入れやタンスの中の確認をする権限がないため、タンス預金など隠しもっているものはバレない可能性は高いです。
しかし、もし空き巣被害にあった場合は、警察に頼ることになります。
それ以外でも、刑事事件の捜査対象になってしまった場合、家宅捜索を受けるなどの可能性があります。その時には役所にも知られることになります。
また株やNISAなどは、役所も常に受給者の口座を監視しているわけではないため、一定の期間であればバレない可能性はあります。
しかし、何かの拍子で調査が行われれば必ずバレてしまいます。
隠しもっておくメリットよりデメリットの方が大きいため、所有している方はきちんと処分するようにしましょう。
自動車を所有する
障害があるなど一定の条件の場合は認められることもありますが、原則認められていません。
注意しなければいけないことは、車の運転をするだけでも自動車の所有扱いとなるため、運転もNGです。
ちなみに、125cc以下のバイクであれば所有することができます。
しかし、乗り物にのるということは事故を起こす可能性があります。
生活保護受給者が事故時の多額の賠償金の支払いが厳しいことは想像に容易いため、おすすめはできません。
名義を家族にしてればバレないのでは?
車の名義が家族の場合、生活保護受給者は所有していないことになります。
しかし、車の運転を行うこと自体が禁止されているため、運転はできません。
もし発覚した場合は受給者本人には罰則が課せられます。
また、車の名義の家族も加担したとみなされ、罪に問われる可能性があります。
収入申告をしない
生活保護受給者に収入があった場合は、収入申告を行う義務があります。
収入申告をしなかった場合、不正受給とみなされ、ペナルティを受けることになります。
特に次の場合、悪質と判断されやすく、より重い罰則を受ける可能性があります。
- 書類の改ざん
- 不正受給額が100万以上
- 過去に不正受給をしている
- 年以上不正受給をしている
書類の改ざんは論外ですが、故意でなくても収入申告をしていない額が100万以上であったり、役所が申告されていないことに気付かず、1年を超えてしまった場合も不正受給となります。
黙っていればバレない?
臨時収入であればバレない可能性もありますが、働いて収入を得た場合、会社は税務署へ報告する義務があります。
役所は年に一度、課税調査を行っておりこの課税調査によって必ずバレます。
バレた場合は収入相当額の生活保護費の返還をしなければなりません(生活保護法第78条)。
きちんと申告をすれば、わずかですがお金を手元に残すことができます。
重い罰則を受けないためにも必ず収入申告を行うようにしましょう。
指導に従わない
生活保護の受給者には、担当のケースワーカーがつきます。
ケースワーカーは、生活保護受給者の社会復帰や自立を促すことが仕事です。
場合によってはケースワーカーから指導を受ける場合があり、指示に従わなければなりません。
生活保護法でも従うことがきちんと明記されています(生活保護法第62条)
しかし、それでは理不尽な指導においても従わなければならないことになってしまうため、ケースワーカー側にも指導できる内容が決められています(生活保護法第27条)
ケースワーカーは、生活向上のための指導はできますが、受給者の自由を尊重し、受給者の意思に反して強制することはできません。
ケースワーカーが指導できることは次の内容です。
- 就労指導:働ける人に対して行う指導
- 検診命令:受給者から働けないなどの訴えがあった場合、病院受診をするように促す
- 売却指導:資産とみられるものを受給者が所有している際に、売却するように促す
- 転宅指導:生活保護で支給される家賃を超えている場合に引っ越しを促す
これらの指導も合法的ではありますが、ケースワーカーが強制することはできません。
指導を受けた場合、従わなければ受給者が罰則を受けることになります。
借金をする
生活保護法では、生活保護受給者がお金を借りることは禁止されていません。
しかし、今まで説明した中で一番危険な行為となります。
その理由は、生活保護上では受給者に入ってくるお金はすべて"収入"とみなされるため、3つ目に説明した収入申告が必要となります。
申告すると役所は収入があったとみなし、翌月か翌々月の生活保護費から減額します。
例えば、12万円の保護費を受給されている方が10万円を借金した場合、翌月か翌々月の保護費から10万円が減額され支給額が2万円となります。
借りた10万円は借金として残ってしまい、生活費が足りなくてお金を借りたのに、その後の生活はもっと苦しい状況になってしまいます。
もし、どうしても生活費が足りない場合などは、国が関与している「生活福祉貸付制度」を利用しましょう。
まずは、担当のケースワーカーに相談してください。
してはいけないこと以外ならしてもOK!
生活保護受給中にしてはいけないことをご紹介してきましたが、してもいいことも理解しておきましょう。
してもいいことは非常にわかりやすく、上記でご紹介した「してはいけないこと」以外は基本的には何をしてもOKです。
タバコやお酒も常識の範囲内であれば問題ないですし、ペットの飼育も可能です。
しかし、してもいいですが注意が必要なことがあるため、ご紹介します。
ギャンブル
過去に生活保護受給者のパチンコが問題となったこともありましたが、パチンコや競馬などの公営ギャンブルは法律では禁止されていません。
生活に支障のない範囲で楽しむことはできますが、利益が出た場合は上記で説明した「収入申告」が必要となります。
特に次の場合は注意が必要です。
例:5,000円で2万円勝つ → 1万5,000円の利益
次のレースで2万円負ける → 5,000円の損失
この場合、1日の合計は5,000円の損失となります。
しかし、ギャンブルでは損益通算は出来ず、利益である1万5,000円の申告が必要となり、翌月か翌々月の保護費で調整されます。
負けた金額は考慮されないため、基本的にはギャンブルはしないことをおすすめします。
スマホやパソコンの購入
スマホやパソコンは高額なものも多く、「高価なもの」に分類されると思っている方もいらっしゃると思いますが、現代の生活には必需品となっており、連絡の手段や就職時も必要になるため、所有が認められています。
しかし利用料金やインターネットの通信料などは保護費から支払う必要があるため、利用料には注意が必要です。
携帯端末の分割払いは利用できますが、債務整理を受けたことがある方は分割ローンの審査に落ちる可能性があるため、一括での購入か安いスマホを選ぶようにしましょう。
結婚や子供の進学
結婚や恋愛は生活保護の受給に関わらず、制限をされることはありません。
恋愛中に交際相手に収入があっても、支援を受けていなければ保護費に影響することはありません。
しかし、結婚して同一世帯となった場合、相手の収入によっては生活保護の受給対象外となることがあります。
進学についても、生活保護の受給によって進学を諦める必要はありません。
教育費が足りない際は「生活福祉貸付制度」による支援もありますので、担当ケースワーカーに相談してください。
ただし、生活保護からの教育費の支給は高校卒業までです。
専門学校や大学に進学したい場合は、奨学金を利用したり、アルバイトをして生活費や学費を稼ぐ必要があります。
旅行
生活保護を受けていても、旅行が制限されることはありません。
生活が困窮するほどの旅行であれば、ケースワーカーからの指導を受けることもありますが、基本的には禁止されてはいません。
しかし、海外旅行は注意が必要です。
海外旅行の旅費は、たとえコツコツと貯めて準備したお金であったとしても、海外旅行にいけるだけの余裕があると思われ、保護費が減額になる可能性があります。
もししてしまったらどうなるの?
生活保護でしてはいけないことをしてしまった場合、不正受給とされ罰則を受けることになります。
一度目であればケースワーカーからの指導で済むこともありますが、改善が認められない場合や悪質と判断された場合、保護費の返還や生活保護の廃止処分となる可能性があり、最悪の場合は逮捕されることもあるため注意しましょう。
廃止処分を受けてしまうと、経済的自立が認められない場合であっても、生活保護が強制的に取りやめられてしまいます。
廃止の理由によっては再申請をしても、受理される可能性が低くなります。
悩んだ際はきちんとケースワーカーに相談をするようにしましょう。
まとめ;生活保護でしてはいけないこと
今回、生活保護受給中に絶対にしていけないこと、反対にしてもいいことを紹介しました。
してはいけないこと以外は基本的に何をしてもよいですが、支給される保護費の中でまかなわなければならないため、金銭的な制限を受ける可能性はあります。
生活保護は人生の「終わり」ではなく、人生を「リスタート」するための制度です。
してはいけないことをしてしまうと大きく損をしてしまい、人生のリスタートが困難となります。
生活保護をこれから申請しようと悩んでいた方、現在受給中で知らなかった方は今回の記事を参考に、今後の生活のイメージの助けになれば幸いです。