新型コロナウイルスなど未知のウイルスが出現しても、1年後にはワクチンが開発される医療業界。
医療の現場では日々研究が行われ、新しい治療方法や新薬が誕生しています。
日本では1年間で40~50もの新薬が開発されており、その開発には多くの時間と費用が費やされています。
長いものでは10年以上かけて作られていることもあります。
(参考:日本SMO協会|くすりができるまで)
製薬会社は多額の費用をかけ、新薬を開発し、その売買によって収益を上げます。
そんな製薬業界で面白い手法で収益を上げている会社があります。
ロイヤリティ・ファーマです。
(引用:株探米国)
ロイヤリティ・ファーマは新薬に関する権利を扱う企業です。
この記事では、ロイヤリティ・ファーマの株価や将来性について解説します。
ロイヤリティ・ファーマの概要
1996年に設立したロイヤリティ・ファーマはアメリカの企業で、2020年6月にNASDAQに上場した企業です。
ロイヤリティ・ファーマは財務状況がよく、上場前から黒字化を達成していました。
(引用:株探米国)
さらに注目を集めたのが、上場直後から配当金を出したことです。
結果、ロイヤリティ・ファーマの株価は上昇しました。
(引用:Yahoo!ファイナンス)
上場直後の成長途中にある企業の多くは配当を出さずに、利益を会社の成長に充てます。
現にAmazonやMeta、テスラなどの大企業ですら配当を出しておらず、自社の成長に注力しています。
そんな中、ロイヤリティ・ファーマは配当金を出し、増配を続けています。
ロイヤリティ・ファーマの財務状況は健全で、利益率が非常に高いです。
一体、どのようなビジネスを展開しているのでしょうか?
この記事を読めば、以下のことがわかります。
- ロイヤリティ・ファーマの事業内容
- ロイヤリティ・ファーマの将来性
ロイヤリティ・ファーマの事業内容と将来的にも伸び続ける銘柄か、判断する材料になるでしょう。
ロイヤリティ・ファーマの事業内容
ロイヤリティ・ファーマは新薬の特許権を扱っています。
投資銀行に勤めていた製薬業界担当のバンカーが特許権への投資を思いついたのが始まりです。
ロイヤリティ・ファーマ自体は新薬の開発を行っておらず、新薬の商品化のノウハウを持たない団体の特許権を投資家として購入することで、収益を上げています。
新薬開発の特許権は製薬会社だけのものではありません。
大学や病院でも新薬や新しい治療法を研究しています。
しかし、大学や病院は発見した新薬や治療法を臨床試験に持ち込み、政府組織から認可を得て、薬を製造し、マーケティングを行い、販売して利益をあげる方法を持ち合わせていません。
そこに目を付けたのがロイヤリティ・ファーマです。
大学や病院で発見した新薬などの特許権を投資家として購入し、売上高の一部をロイヤリティとして受け取るビジネスモデルを構築しました。
23億5千4百万米ドルもの売上高を誇る企業ですが、従業員数は90人前後と小規模です。
従業員の大半は博士号を持つ専門家で、ウォール街でアナリストとして働いた経験があるため、投資に関して目利きが優れています。
有望な新薬を見つけるには経験が必要な高度な仕事のため、誰にでもできるわけではなく、製薬業界にも広い人脈が必要です。
少数精鋭で経営を行っているため資本効率が良く、業務の複雑性から参入障壁が高く、優秀なビジネスモデルといえます。
ロイヤリティ・ファーマは先述のとおり、自身で新薬の開発を行っていないため、多額の研究開発費は不要です。
新薬をマーケティングする上でのリスクがあるわけでもありません。
ロイヤリティ・ファーマが提供しているのはあくまでも資本。
資本効率の良さとリスクの小ささがロイヤリティ・ファーマの強みといえます。
もう一つの強みが22個もの「ブロックバスター」を所有している点です。
ブロックバスターとは医薬品業界の用語で、従来の治療体系を覆す効能の圧倒的シェアを持つ薬のことです。
要するに物凄く儲かる薬をたくさん持っています。
通常、大手製薬会社でもブロックバスターとなる薬は10未満ほどです。
それだけブロックバスターを生み出すのは至難の業といえます。
しかし、ロイヤリティ・ファーマは22個ものブロックバスターを所有しているため、高いロイヤリティを得ることが可能です。
将来性のある薬へ投資できる選球眼を持つ社員を抱え、資金効率の高い経営ができるロイヤリティ・ファーマは注目の銘柄といえます。
ロイヤリティ・ファーマの将来性
ロイヤリティ・ファーマの将来性はあると思います。
理由は以下のとおりです。
- 財務の健全性
- 参入障壁の高さ
- 処方薬市場の成長性
世界の医薬品市場の成長性は著しいものがあります。
1992年は約1,500億ドルだった市場が、2021年には約1.1兆ドル、2028年には1.7兆ドルまでに成長する見込みです。
(参考:CRDS研究開発戦略センター|第231回「世界の医薬品 新薬が市場成長のカギ」)
成長市場に身を置いているだけで、企業も成長できるため、薬の特許を取り扱うロイヤリティ・ファーマもその恩恵に預かることができます。
財務状況の健全性も将来性を感じるポイントです。
ロイヤリティ・ファーマの営業利益率は63%、経常利益率は72%と非常に高い水準にあります。
※営業利益率=営業利益/売上高*100
経常利益率=経常利益/売上高*100
営業利益率は売上高に対する本業での儲けを表し、経常利益率は本業以外も含めた企業の儲けを表します。
(引用:株探米国)
通常、営業利益率も経常利益率も10%以上で優良企業と判断されます。
(参考:税理士セレクションonline|売上高に対する営業利益率の目安とは?|営業利益率を高める3つのポイント)
(参考:KECREA|経常利益率とは?営業利益率との違いや目安・計算方法について)
どちらも60%以上を誇るロイヤリティ・ファーマの経営状態は超優良といえるでしょう。
新薬の特許は約15年間有効なため、特許権を獲得すれば15年近く安定した収益を上げることができるため、安全性・安定性ともに高いです。
薬の特許に投資をするというビジネスモデルのため、目利きが非常に重要になります。
専門知識だけでなく経験も必要なため、簡単にまねできる手法ではありません。
参入障壁が高いため、オンリーワンを確保することができるロイヤリティ・ファーマは将来性があるといえます。
まとめ:将来性はあり!ブロックバスターの特許を取り続けられるかがカギ
ロイヤリティ・ファーマは、薬の特許権に投資をする企業です。
製薬会社のベンチャー企業や大学の研究室で発見・開発された薬を世に出すにはマーケティングや資金力が必要になります。
ベンチャー企業や大学の研究室に足りない部分を補うのがロイヤリティ・ファーマです。
新薬に対して投資をすることで、特許権を得てその利益の一部を得ることで収益を上げています。
ロイヤリティ・ファーマでは、45もの特許権を持っており、そのうち22個はブロックバスターと呼ばれる高収益をもたらす特許権です。
非常に優れた選球眼を持つロイヤリティ・ファーマは、営業利益率・経常利益率ともに高く、非常に優れたビジネスモデルといえます。
参入障壁も高いため、競合企業も少ないでしょう。
新薬の特許は約15年有効なため、特許を取得すれば15年近くは安定した収益を上げることが可能です。
問題は特許権が切れた時です。
2019年に稼ぎ頭だった3つの薬の特許が切れ、売上が減少しました。
売上を伸ばし続けるには、常に高利回りな薬に投資し続けなければならないのは至難の業でしょう。
将来性はあると感じますが、安心とは言い切れない銘柄です。
ロイヤリティ・ファーマの株式を購入する時の参考にしてみてください。