生活保護受給中の貯金には、いくらまでという明確な上限はありません。
計画的な目的があれば、家計をやりくりした中で貯金することは可能です。
申請時には、最低生活費より少ない額までは預貯金が認められています。
しかし、福祉事務所(ケースワーカー)に正確に申告せずバレた時には罰則が与えられる場合も。
ルールに沿って適切に貯金することが大切です。
この記事では、生活保護の申請時および受給中の貯金はいくらまで認められるのか解説します。
【生活保護受給中】貯金はOK!
生活保護受給中、家計をやりくりして保護費から貯金を捻出することは、正式に認められています。
基本的には生活維持に活用することとしていますが、目的を持って計画的に貯めることは容認されています。
なぜなら、生活家電の買い替えや、生活保護を脱却したあと自力で生計を立てていくために一定のお金が必要だからです。
ここでは、生活保護受給中の貯金額の上限と貯金をする意義について解説します。
貯金額に明確な上限なし
生活保護受給中の貯金額は、いくらまでと明確に決まっていません。
しかし、ある程度貯金が貯まってきたことがわかれば、心身の状態によっては生活保護をやめ自立するようすすめられる可能性はあります。
例えば、心身の状態が働けそうな程度まで改善していて、貯金が100万円あったとしたら。
保護を抜けて生活することもできそうな気もします。
これに明確な基準はなくケースワーカーの判断によるので、100万円貯まったから必ず保護を打ち切られるというわけではありません。
隠さず正確に報告しましょう。
自立するために貯金は必要
生活保護を脱却し経済的に自立した生活を送るためには、家賃や食費、光熱費も自分で賄っていく必要があります。
仕事を始めても、すぐにお給料が入らない場合って多々ありますよね。
例えば、月初めから働き始めても月末払いだったり、翌月払いのことも。
その間しばらくは貯金でつなぐ必要があるので、一定の貯金がないと厳しいです。
そのため、支給される保護費の中から目的を持って計画的に貯金をしていくことは正式に認められています。
ただし、貯蓄性の高い生命保険への加入や株式を購入することは認められていません。
原則、生活保護を受けながら保険に新規加入することはできません。
保険料が低額で掛け捨ての保険や解約返戻金が一定額以下の場合は加入できる可能性はありますが、必要があればケースワーカーに相談するとよいでしょう。
また、株式などの有価証券を購入・保有することも認められていません。
配当などで資産を増やすことはできませんので、概ね現金で貯蓄していくことになります。
あとで株式を購入していたことがバレたら、保護費の返還などの処分が下ります。
貯金は正式に認められた行為ですので、ルールに則って貯めましょう。
【生活保護申請時】条件付きで貯金は認められる
生活保護を申請したい時、最低生活費に満たない額であれば預貯金の保有が認められます。
貯金が0でないと生活保護を受けることができないのでは?と思われがちですが、一定額は保有可能です。
また、生活保護申請には預貯金の他、持ち家や車の所持など保有資産に制限があります。
ここでは、生活保護申請時の預貯金はいくらまで認められるのか、その他の資産の保有条件についても合わせて解説します。
申請時の預貯金額の上限
生活保護申請時の預貯金額は、最低生活費に満たない額であれば保有可能です。
最低生活費は、年齢、世帯人数、地域等によって異なります。
そのため、認められる預貯金額は「いくらまで」と一律に決まっておらず、保護を受けようとする人の状況によって変わります。
例えば、東京都23区に住む68歳単身世帯の最低生活費を厚生労働省「最低生活費の算出方法」をもとに計算してみました。
※総務省の「令和4年家計調査報告」より、65歳以上の無職単身世帯の保健医療にかかる月額平均は8,128円であるため、医療扶助は8,128円で計算
※住宅扶助は基準内で実費を支給、今回は基準値満額で計算
※障害者加算、児童扶養加算は考慮しません
計算方法は非常に細かいため詳しく知りたい方はこちらを参考にしてください。
結果、この場合の最低生活費はおよそ13万8,708円と算出できました。
申請時の預貯金がこの額より少なければ認められるということです。
多少は認められるという程度であることがわかりました。
正確には居住する自治体のケースワーカーに必ず確認してください。
保有資産の条件
生活保護を受けるには、保有資産の制限があります。
原則、持ち家や自動車の保有は認められません。
また、解約返戻金のある生命保険は、解約して生活費に充てるよう指導されます。
株などの有価証券も同様で、売却して生活費に充てなければなりません。
ただ、持ち家と自動車に関しては、特例で所有が認められる可能性があります。
住宅ローン返済済みで、築年数が古いなどの理由で売却してもほとんど価値がない場合は、そのまま所有が認められることも。
自動車の保有が認められるケースは、通院などで自動車が必要な場合です。
いずれも一度ケースワーカーに相談するとよいでしょう。
他に、贅沢品など生活に必ずしも必要でないものの保有は基本的に認められません。
資産調査でどこまで調べる?
生活保護申請時、申請者は保護申請書とともに、資産申告書・収入申告書・資産調査の同意書を添付して提出します。
それをもとに、関係各所へ照会して資産調査がなされます。
一体どこまで調べられるのか、どのように調べるのか気になるところです。
ここでは、資産調査の内容と不正受給がバレた時の罰則についてまとめました。
資産調査の内容
生活保護申請時には、申請者の資産について徹底的に調べられます。
何をどこで調べるのか、主な資産調査の内容と照会先をまとめました。
照会内容 | 照会先 | |
預貯金 | 口座の有無、預貯金の金額など | 銀行、郵便局などの金融機関 |
生命保険 | 保険加入の有無、保険種類、 加入期間、保険料及び解約返戻金など | 保険会社など |
公的年金 | 公的年金等の受給の有無、 受給資格の有無など | 社会保険事務所など |
不動産 | 土地及び家屋の有無、 物件概要など | 各自治体の固定資産課、各陸運局など |
就労収入 | 就労収入等の有無、 収入額など | 各自治体税務課、事業主など |
これらは一例で、証券会社に問い合わせることもあるでしょう。
こうして資産状況を隅々まで確認します。
資産調査の他に行う調査は、家庭訪問などでの生活状況の調査、就労の可否の調査、扶養照会です。
扶養照会では、家族へ連絡が入ります。
DVなど一部のケースを除いて「家族には内緒で申請を・・・」というのは難しいです。
隠してはだめ!バレたら受給停止、罰則も
生活保護受給中は、保護費以外の収入が発生したり世帯人数が変わった場合は、速やかにケースワーカーに報告しなければなりません。
悪質な不正受給だと判断された場合は、3年以下の懲役または罰金100万円の罰則が適用される場合もあります。
- 臨時収入を報告していない
例)身内からの仕送り
- 世帯人数の変更(内縁の配偶者含む)を報告していない
例)子どもが独立して家を出た、内縁のパートナーと同居を始めた
- 資産を隠して申告しない、過少申告する
これらの行為は故意があろうがなかろうが、不正受給だとみなされてしまいます。
資産隠しや過少申告は、不正受給としてイメージがつきやすいですね。
注意すべきは、臨時収入の申告忘れ、世帯人数が変わった時の報告忘れです。
保護費は世帯単位で支給されるため、世帯人数の変化があれば報告しましょう。
同居人が籍を入れているか入れていないかは関係ありませんので注意してください。
バレて保護に相当しない資産が確認されれば、当然受給停止になります。
過失なのか意図的なのかによって処分は異なりますが、保護費の返還・徴収などの処分が下されるでしょう。
資産を隠してはいけません。必ずバレます。
やりくりの上で貯金するのはOKですから、堂々と貯金しましょう。
生活保護制度をおさらい
生活保護制度は、心身の不調により就労が困難であるなどの理由で、必要な生活費を確保できない人に対して、最低限度の生活を保障する制度です。
生活保護には8つの扶助があります。
生活扶助 | 生活に必要な費用 | 食費、光熱費、被服費など |
住宅扶助 | 住まいに必要な費用 | 家賃、地代など (共益費は生活扶助) |
医療扶助 | 傷病の治療・療養のために支払う費用 | 本人負担なし |
教育扶助 | 義務教育を受ける上で必要な費用 | 学費、教材費、給食費など |
出産扶助 | 出産に必要な費用 | |
介護扶助 | 介護保険サービス利用で必要な費用 | 介護サービス利用者負担額、 施設の食事代など本人負担なし |
生業扶助 | 就労に必要な技能の習得等にかかる費用 | |
葬祭扶助 | 葬儀に必要な費用 |
次に、生活保護制度の目的と受給条件を確認してみましょう。
目的
厚生労働省によると、“生活保護は、最低生活の保障と自立の助長を図ることを目的として、 その困窮の程度に応じ、必要な保護を行う制度”としています。(厚生労働省)
必要最低限の生活を保障すると同時に、最終的に自立して生活できるよう援助することが目的の制度です。
受給条件
生活保護を受給する条件は以下の通りです。
- 不動産、自動車、預貯金等のうち生活費に充てる資産がない
- 就労できないか就労しても生活に必要な収入が得られない
- 年金、手当等を利用しても必要な生活費を得られない
扶養義務者がいる場合は、扶養義務者による扶養を優先して行います。
保有資産の条件については前述の通りです。
まとめ:生活保護を脱却するために貯金は可能。申請時は最低限だけ認められる
この記事では、生活保護申請時および受給中の貯金はいくらまで可能か解説しました。
申請時、受給中ともに貯金はいくらまでと明確に定められていません。
申請時の貯金は、0である必要はなく、最低生活費を下回る額なら保有できます。
最低生活費は、申請する人によって1人1人違いますのでケースワーカーに確認しましょう。
受給中は、計画的に使う分には貯金が可能です。
これも上限はないので、目的を持ってコツコツ貯めましょう。
保護を脱却し経済的に自立するために、貯金はとても重要です。
場合によっては守れる資産もありますので、適宜ケースワーカーに相談するようにしましょう。
ライター名:FP2級・AFP保有ライターchaky