生活保護とは、生活に困ってしまった人に対して、最低限度の生活を保障し自立を助けるための制度です。
しかし、さまざまな理由から生活保護が打ち切り(廃止)となることがあります。
本記事では廃止になる理由や、廃止後に必要な手続きを解説していきます。
廃止の理由によって廃止後の展開に違いがあります。
まだ廃止になっていない方や今後生活保護の受給を考えている方も是非最後まで目を通してください。
生活保護の廃止と停止との違いは
生活保護には「廃止」と「停止」があります。
いずれも生活保護費が支給されないという点では同じですが、意味が異なります。
今回取り上げる「廃止」とは、簡単に言えば生活保護受給者ではなくなることで、いままで受けていた支給や税金の免除が受けられない状態です。
一方「停止」とは、生活保護受給者ではありますが、何らかの理由で生活保護費が支給されていない状態です。
停止の場合は再申請すればすぐに支給が再開されますが、廃止の場合は再申請時に再度調査を受ける必要があります。
また廃止はすぐに行われず、一旦支給を停止する措置となることが多いです。
生活保護廃止となる5つの条件
厚生労働省が発表した「令和3年度被保護者調査」では、生活保護廃止の世帯数は20万2,178世帯、人員は23万7,633人でした。
生活保護廃止にはさまざまな条件がありますが、今回は大きく5つの条件を解説していきます。
収入が生活保護基準を超えた場合
最低生活費以上の収入があった場合、生活保護が廃止されることがあります。
この場合、大きく2つのパターンがあります。
1つ目は給料や年金など継続して収入を得る見込みができた場合です。
就職により働いて得た給料が保護基準額を超えると廃止となります。
このときの給料は、国民健康保険料や医療費が加味された額で計算され、さらに収入から基礎控除額を差し引いた額となります。
年金は条件があり老齢基礎・厚生年金、障害基礎・障害年金を受けている人は原則として生活保護の受給はできません。
しかし給料・年金のどちらも保護基準額に達しない場合は、生活保護の廃止ではなく保護費の減額となることもあります。
2つ目は遺産の相続やギャンブルによる収入など臨時的な収入を得た場合です。
保護が廃止となる収入額に明確な決まりはありません。
臨時で得た収入が保護基準額の6ヶ月程度の額であれば廃止ではなく停止となることが多いようです。
ケースワーカーの命令を拒否したり指導を守らない場合
生活保護の受給者には、担当のケースワーカーがつきます。
ケースワーカーは、生活保護受給者の社会復帰や自立を促すことが仕事です。
ケースワーカーは、受給者の生活向上のために命令や指導をすることができます。
例えば、働ける状態の人への就労指導や、病院への検診命令などがあります。
また、福祉事務所が必要と認めた場合には、立ち入り調査もする権限をもっています。
まずは口頭による指示→文書での指導→市役所での弁明の機会が与えられ、そこでの理由が適当でない場合は生活保護の廃止となります。
仕事が決まらなくても仕事を探す努力や、きちんと病院受診などをしていれば廃止されることはありません。
不正受給をした場合
生活保護受給者は生活の状況を報告する義務があります。
資産を隠して持っていたり、収入を偽っていたなど本来は生活保護の受給資格がない人が受給することは不正受給とみなされます。
不正受給が発覚すると即座に廃止処分となります。
この場合、保護費の返還を求められたり、悪質であると判断されたときには刑事告訴をされることもあります。
受給者の死亡や失踪など連絡がとれなくなった場合
生活保護受給者が死亡した場合や失踪した場合に生活保護が廃止されます。
福祉事務所からの連絡を無視したりなど受給者との連絡がとれなくなると、失踪したとみなされ廃止されることがあります。
特に注意が必要なのは、福祉事務所へ連絡していない長期の旅行です。
旅行が禁止されているわけではありませんが、旅行中にケースワーカーが訪問してきた際に不在であれば失踪とみなされることがあるからです。
この場合もすぐに廃止されるわけではなく、文書での指導→市役所での弁明機会が与えられますが、基本的には外泊時も福祉事務所に連絡することがルールとなっているため、特に長期の旅行はきちんと連絡をとるようにしましょう。
犯罪行為をした場合
犯罪の程度にもよりますが、起訴され刑務所に送られるような重罪の場合は廃止となります。
刑務所内は最低限度の衣食住が保証されているため、生活保護は必要ないという意味合いもあり、即時に廃止されます。
ただし家族がいる場合には、逮捕された人の分を除いた額が家族には支給されます。
生活保護廃止後に必要な手続き
生活保護が廃止になると、今まで免除されていた税金や医療費の支払いが必要となります。
廃止後の手続きは「自ら辞退した場合」と「役所から打ち切られた場合」によって少し違いがあります。
自ら辞退した場合
まずは健康保険への加入が必要となります。
会社に就職すれば社会保険へ加入するため、そこまで気にする必要はありません。
会社への就職でない場合は、国民健康保険への加入が必要です。
手続きには生活保護廃止の証明となる「生活保護廃止決定通知書」が必要となりますので、忘れずに受け取って保管しておきましょう。
また交付時は、運転免許証やパスポート、マイナンバーカードなど顔写真付きの証明書があると交付が早いため、一緒に持っていくことをおすすめします。
その後、国民年金の手続きを行います。
年金の手続きには、先ほど挙げた書類の他に「国民年金免除理由証明書」が必要となります。
役所から打ち切られた場合
打ち切られた場合でもその後生活保護の支給が必要ない場合は、健康保険の加入や年金の手続きが必要です。
ただし、不正受給で廃止された場合や出所後の場合でも、再申請が可能です。
生活保護が必要な場合は再申請の手続きをしましょう。
まとめ:生活保護廃止の条件は多岐にわたる!ルールを守って自立を目指そう!
今回は、生活保護廃止となる条件と廃止後の手続きについてご紹介しました。
生活保護廃止には不正受給や指導を守らなかったりして打ち切られるものばかりではなく、円満な廃止の条件もあります。
就職などによる生活保護の廃止では、不安や制限のない生活が送れるようになります。
生活保護を受給中の方が自立に成功し、幸せな日々となるよう、心より願っています。