日本では急速に再生可能エネルギーが普及しています。
工場や戸建て住宅の屋根のうえをみると太陽光パネルが敷き詰められている風景をよく見かけませんか?
これは、電力が従来の石油・石炭由来から再生可能エネルギーへシフトしていることの表れです。
このような外部環境の変化は、日本のエネルギーを長く支えているINPEXに大きな影響を与える可能性があります。
そこで、株式投資歴15年の筆者が、外部環境やINPEXの戦略を踏まえて、INPEXの将来性について解説していきます。
今後のINPEXの株価が気になっている方は、最後まで読んでみてください。
INPEXはどのような会社?
INPEXといえば、日本最大級のエネルギー開発企業で、日本のエネルギー消費量の約1割を世界各地で生産しています。
資源を海外からの輸入に頼る日本にとってはとても重要な使命を持った会社ですね。
そのため、大株主が経済産業大臣(約20%保有)となっていて、日本国として如何に重要な会社であるかが分かります。
このようなINPEXの将来性について考えるまえに、これまでの業績や株価について振り返っていきます。
INPEXの会社概要
INPEXは、設立が2006年と歴史が浅そうに見えますが、エネルギー開発会社として歴史のある2社(国際石油開発㈱と帝国石油㈱)が設立した会社です。
設立当初は、国際石油開発帝石ホールディングスという企業名でしたが、合併などを経て、2021年にINPEXという企業名になっています。
商号 | 株式会社INPEX |
本社所在地 | 東京都港区赤坂五丁目3番1号 赤坂Bizタワー |
設立 | 2006年4月3日 |
市場 | 東京プライム市場 |
決算期 | 12月 |
連結従業員数 | 3,531人 |
INPEXの業績
「過去10期分の業績推移」と「2024/12期の業績予想」を一覧表にしました。
これをみると2021年以降、業績は好調であることが分かりますね。
2024/12期の業績予想も減収減益ながら、過去の利益水準以上は確保できています。
この業績好調の要因は、原油やガス価格の高騰や円安にあります。
決算 | 売上高 | 営業利益 | 当期利益 |
2024/12(予) | 1兆9,310億円 | 1兆100億円 | 3,300億円 |
2023/12 | 2兆1,645億円 | 1兆1,142億円 | 3,217億円 |
2022/12 | 2兆3,161億円 | 1兆5,037億円 | 4,860億円 |
2021/12 | 1兆2,444億円 | 5,907億円 | 2,230億円 |
2020/12 | 7,711億円 | 2,485億円 | △1,117億円 |
2019/12 | 1兆円 | 4,986億円 | 1,236億円 |
2019/3 | 9,714億円 | 4,743億円 | 961億円 |
2018/3 | 9,337億円 | 3,574億円 | 404億円 |
2017/3 | 8,744億円 | 3,365億円 | 462億円 |
2016/3 | 1兆96億円 | 3,901億円 | 168億円 |
2015/3 | 1兆1,712億円 | 5,349億円 | 778億円 |
※ 2019年に決算期を3月から12月に変更しているため、2019/12期は9ヶ月決算です。
INPEXの配当金推移
配当金についてですが、業績に連動して増えています。
配当利回りも最近は4%前後で推移しているため、高配当銘柄と位置づけられるでしょう。
決算 | 配当金 | 株価(期末) | 配当利回り | 配当性向 |
2024/12(予) | 76円 | - | - | 29.0% |
2023/12 | 74円 | 1,904.5円 | 3.9% | 29.8% |
2022/12 | 62円 | 1,395円 | 4.4% | 17.0% |
2021/12 | 48円 | 1,002円 | 4.8% | 31.2% |
2020/12 | 24円 | 556円 | 4.3% | - |
2019/12 | 30円 | 1,136.5円 | 2.6% | 35.5% |
2019/3 | 24円 | 1,055.5円 | 2.3% | 36.5% |
2018/3 | 18円 | 1,316円 | 1.4% | 65.1% |
2017/3 | 18円 | 1,094.5円 | 1.6% | 56.9% |
2016/3 | 18円 | 853.5円 | 2.1% | 156.7% |
2015/3 | 18円 | 1,325.5円 | 1.4% | 33.8% |
INPEXの株価推移と指標
最後に株価を見ていきましょう。
下は月足の10年チャートです。
株価は、2020/12期の赤字決算の時期を底値に、業績回復に連動して推移しています。
(出典:Yahoo!ファイナンス)
ただ業績の好調の要因は、原油をはじめとする資源価格の上昇や為替の影響です。
そのためPERやPBRはかなり低い水準ですが、違和感のない水準感といえるでしょう。
株価(2024/6/7) | 2,310.5円 | PER(予) | 8.12倍 |
時価総額 | 2兆9,262億円 | PBR | 0.64倍 |
1株配当金(予) | 76円 | 配当利回り(予) | 3.27% |
INPEXの将来性を考えるためのポイントは?
INPEXの株主にとっても、INPEX株の検討をしている人にとってもINPEXの将来性はとても気になるところですよね。
そこでここからは、INPEXの将来性を考えるうえで重要なポイントについて解説していきます。
【Point①】主力の石油やガスの使用量は減る見込み
INPEXの主力製品である「石油・LNG」はCO2を大量に排出するため、徐々に使用量が減っていくと考えられています。
その背景は、日本のエネルギーミックスの考え方の変化です。
令和3年10月に経済産業省/資源エネルギー庁から発表された資料によれば、主力であった「石油。石炭・ガス火力発電」は徐々に減っていき、太陽光発電所などの再生可能エネルギーが主力電源となっていく計画です。
(出典:資源エネルギー庁 2030年度におけるエネルギー需給の見通し(R3.10))
この流れは、日本に限ったことではありません。
むしろ日本は先進国の中では遅れているほうで、欧米はもっと加速して進んでいるといわれています。
この変化は、INPEXにとってはマイナスの影響を与えると考えられます。
【Point②】石油からガスへのシフトを加速
INPEXは今後、石油関連の投資よりも天然ガス関連の投資を増やしていくことを計画しています。
これは上場企業として環境に配慮した経営が求められているなか、CO2の排出量が石油に比べて少ない天然ガスに注力していくことは自然な流れですね。
また、石油・天然ガスの使用量は減っていきますが、引き続き、石油・天然ガスは日本の電力の20%以上を占める重要な資源であることに変わりありません。
日本のエネルギーを支える会社として、日本から石油・天然ガス由来の発電所がなくならない限り、石油・天然ガスが当社の主力事業であることは変わらないでしょう。
(出典:長期戦略と中期経営計画(INPEX Vision 2022))
【Point③】ネットゼロ5分野からの収益拡大
INPEXでは「ネットゼロ5分野」として次の5つを掲げています。
- 水素・アンモニア
- CCUS
- 再エネ
- メタネーション
- 森林
まだ商業化していない分野もありますが、これらを商業化ベースにのせて規模を拡大させることでINPEXの将来の収益につなげていこうとしています。
「本当に水素社会がやってくるのか」など未知数な点もありますが、INPEXが想像する未来がやってくれば、INPEXの将来性は十分ありそうです。
ただ、いずれの分野もすでに多くの企業が注目しており、競争も激しい分野と想像されるため、INPEXが勝ち組になれるのかはもう少し先にならないと分かりませんね。
(出典:長期戦略と中期経営計画(INPEX Vision 2022))
INPEXの将来性は?今後の株価を考える
個人的には、INPEXの将来性はポジティブにとらえているので、株価は堅調に推移するのではないかと考えています。
理由は次の通りです。
【ポジティブ要素①】日本から石油・ガスはなくらない
再生可能エネルギーへのシフトは加速していきますが、資源エネルギー庁からの資料にもある通り、日本のエネルギー源から石油・ガスはなくなることはありません。
また、INPEXの生産量は日本の消費量の1割にすぎません。
日本は1次エネルギーの9割を輸入に頼っており、自給率を高めていくことが課題になっています。
その中で、全体の使用量が減ったとしても、まずは輸入を減少させることになるのではないでしょうか。
【ポジティブ要素②】資源ポートフォリオの多角化
主力事業である石油・ガスの販売量は減少しないと予想するなかで、INPEXは再生可能エネルギーなどの事業からも収益をあげることができる体質へと変貌を遂げようとしています。
これらの新事業がしっかりと収益に結びついてくれば、現状の低いPERやPBRはかいぜんしていくことが期待できます。
まとめ
INPEXの将来性と今後の株価について解説してきました。
- INPEXのあしもとの業績は資源高の影響で好調に推移しているため、株価も右肩あがりとなっている
- ただ、世界的な潮流として、CO2を排出しない再生可能エネルギーの普及とともに、INPEXが生産している石油やガスの使用量は減少していくことが予想される
- このような外部環境の変化が起こっているため、INPEXの将来性にはマイナス要素しかないようにみえるが、個人的にはINPEXにはポジティブな要素があると考えている
- その理由の2つあり、①引き続き石油・ガスは重要なエネルギーで全体の20%以上を占めること、②使用されるエネルギーが多角化することで他のエネルギー事業に挑戦しやすい環境下になっていることです
- このような考えから、筆者としては、「INPEXの将来性は十分で、将来的にはPERやPBRが上昇してくるのではないか」と予想します
資源を輸入に頼っている日本にとってINPEXは、とても重要な会社であって、今後もその位置づけは簡単には変わらないため、長期の投資家に向いた銘柄といえるでしょう。
あとは買い場探しですね。
今は堅調なINPEX株も、今後の資源価格や為替次第で株価は大きく下落する可能性があるため、買い場はその下落を待ちたいところです。
もし下落すれば、将来性に期待して仕込んでおきたいですね。
ライター名:金融ライター ひろきち