国民年金の支払いに困ったときは、どうしたら良いのでしょうか。
わからないからといって、未払いのまま放置するのはやめましょう。
なぜなら国民年金には、一定の条件を満たすと利用できる救済措置があるからです。
何も対策せずに10年以上未納となり、追納できない!と後悔した失敗談とともに、ぜひ学んでいきましょう。
国民年金は後から払える?追納と後納の違い
国民年金の保険料納付期限は2年です。
2年の間に納付できない場合は未納となり、受給資格期間にも算入されません。
そのような事態を避けるため、国民年金には後払いできる制度があります。
後払いの追納と後納は、名前も似ており混同しがちなので注意しましょう。
後納は、通常2年の納付期限が特別に延長された制度(平成30年9月30日に終了)
後納とは、通常2年の納付期限を延長する制度で、過去に2回実施されました。
・平成24年10月1日〜平成27年9月30日※10年間さかのぼって納付可能
・平成27年10月1日〜平成30年9月30日※5年間さかのぼって納付可能
しかしそれ以来、後納は実施されておらず、今後についてもわかっていません。
そのため、後納は考慮せず「納付期限2年を過ぎると未納となり後払いはできない」と覚えておきましょう。
また、後述する追納と誤解しないよう注意が必要です。
追納は、免除・猶予を申請すると納付期限が10年になる制度
追納とは、保険料の免除・猶予を申請して承認された場合、10年のうちであれば保険料を後払いできる制度です。
免除期間は、全額納付した場合と比べて老齢基礎年金額が減り、猶予期間にいたっては、年金額に反映されません。
そのため、納付できる状況になってから、追納すると年金額を増やせます。
ただし、追納はあくまでも免除・猶予を申請して承認されることが前提条件となります。
体験談:国民年金を追納できない!免除、猶予申請を知らずに10年以上放置の悲劇
筆者の夫は自営業で、若いうちは事業主である義父(夫の父)が、夫の国民年金を納めていました。
ところが事業を夫に渡すときになって、約13年分の国民年金保険料が未納になっていることがわかったのです。納付期限2年はとっくに過ぎており、どうすることもできません。
これより先は「夫が毎月必ず払っていく」それしか方法はありませんでした。
それから約3年後、前述した後納制度が期間限定で実施されたのです。
10年さかのぼれるうち、直近3年分は納付済みのため、残り7年分を払えることになりました。
支払いに充てるお金はありませんでしたが、この機会を逃すまいと、筆者の加入していた郵便局の保険から120万円ほどお金を借りて約7年分を納付しました。
残り6年分は未納のままですが、60歳から65歳の待機期間に任意加入して5年分収める予定です。それでも約1年分は未納のままとなりますが、これ以上は仕方なくあきらめるしかありません。
なぜなら、救済措置が利用できないからです。
・後納は過去2回行われた期間限定の措置で、今後については不明
・免除・猶予を申請していなかったため、追納できない!
それにしても、なぜ義父は保険料を「納付しなかった」のでしょうか。実際は「納付できなかった」のだと思います。もしも経営や納付の件で夫に相談するか、猶予の制度を知っていれば、借金はしなくて済んだかもしれません。
国民年金を払えないときは、免除・猶予の条件に該当するか確認しよう
国民年金の納付がどうしても困難な場合は、免除・猶予申請を検討しましょう。制度にはいくつか種類があるので、自分が条件に該当するか確認します。
国民年金保険料の免除・猶予の条件と内容
・保険料免除
条件:本人・世帯主・配偶者の前年所得が一定額以下
内容:保険料納付が免除される。全額免除と、一部免除(4分の3、半額、4分の1)がある。受給資格期間に算入され、老齢基礎年金額にも反映されるが低額となる。
・保険料納付猶予
条件:20歳から50歳未満で、本人・配偶者の所得が一定額以下
内容:保険料納付が猶予される。受給資格期間には算入されるが、老齢基礎年金額には反映されない。
・学生納付特例
保険料納付猶予制度の学生版となります。
条件:高校、短大、大学、大学院、専修学校等の学生で、前年の所得が基準以下、または失業等の場合。
各制度の条件である所得基準については計算が複雑です。
日本年金機構のホームページをご確認いただくか、年金事務所への相談をおすすめします。
また、失業や出産の場合は、前年所得の条件がなく一定期間免除となります。
失業による特例免除:退職、失業して保険料納付が困難な場合
産前産後期間の保険料免除:出産日が属する月の前月から4ヶ月間
収入が減るなど納付に困ったときは、放置せず免除・猶予申請を検討しましょう。
免除、猶予の追納期間は10年!払えるようになったら後払いできる
免除・猶予を申請した後、保険料の納付ができる状況になった場合は、追納をおすすめします。
なぜなら、追納することで得られるメリットがたくさんあるからです。
追納すると、将来受けとれる年金額が増える
追納すると、老齢基礎年金額に反映されます。
免除期間は、免除の度合いによって年金が低額になり、猶予期間はそもそも年金額には反映されません。
そのため、年金額を増やすには追納が有効になります。
追納した年は所得税と住民税が軽減される
追納すると、所得税と住民税がお得になります。
年末調整や確定申告の際、「扶養控除申告書」の保険料控除として申請できるからです。
還付金が出る可能性があるため、ぜひ利用しましょう。
追納は、将来の年金額にも、今現在の税金にもお得な制度になっています。
経過期間に応じて加算額が上乗せされるので注意する
追納期間は10年ですが、何年経過しているかで加算額が上乗せされるので注意が必要です。
追納は原則古い期間の分から納めますが、免除・猶予を受けた期間の翌年度から起算して、直近2年の加算額はありません。
ただし3年度目以降に追納する場合は、承認当時の保険料額に加算額が上乗せされます。
微々たる額でも長期間分となれば負担は大きくなります。
納付できる状況になった場合は、早めに追納しましょう。
国民年金が受けとれる「資格期間10年以上」にも算入される
頑張って保険料を追納しても、資格期間を満たさなければ、将来年金を受けとることはできません。
資格期間をクリアした上で、年金額をコツコツ増やしていきましょう。
国民年金は「資格期間10年以上」になると受けとれる
国民年金の受給資格期間は10年です。
免除・猶予期間は、保険料を納めていなくても資格期間として算入されます。
免除・猶予を申請せずに保険料を納めないまま2年経過すると、未納となり資格期間に算入されません。
資格期間を満たすためにも、免除・猶予の申請はとても重要になります。
もしものときの障害基礎年金・遺族基礎年金の受給資格にも算入される
不慮の事故や病気などで生活や仕事に制限を受けるようになった場合は障害基礎年金、不幸があった場合は遺族基礎年金が受けとれます。
保険料を納付した期間と、免除・猶予を受けた期間を合わせて、条件が細かく定められています。ただし、未納期間は算入されません。
年金は、老後はもちろん「もしものときに受けとれる」ことが毎日の安心につながります。
そのためにも、免除・猶予の申請を侮ることはできません。
注意:国民年金がもらえないことも?追納できないまま10年以上放置しない
納付できるようになっても、追納しないまま時間がたってしまった場合はどうなるのでしょうか。
10年たつと、払いたくても払えなくなる
追納は、免除・猶予から10年たつと払えなくなります。
10年という時間は、長いようで、過ぎてしまえば短かくも感じられますね。
しかしお金を払うとなると、重くのしかかってくる時間です。
無理をしすぎず、「期限内にどれだけ納付できるか」「納付することでいくら年金が増えるのか」を慎重に検討しましょう。
追納しないと老齢基礎年金が減る
追納しないまま10年を過ぎると、将来もらえる年金額が減ったり、低額になります。
平成21年4月から免除を受けた期間の年金額は、保険料を全額納付した場合と比較して下表のようになります。
また、猶予期間は受給資格期間としては算入されますが、追納しない場合は未納となり年金額に反映されません。
「低額になるとは知らなかった」「猶予を受けたのに未納になるなんて」と後悔しないよう、内容をよく理解して追納を検討しましょう。
(平成21年4月から) | 年金額(保険料を全額納付した場合と比較) |
全額免除されていた期間 | 2分の1 |
4分の3免除されていた期間 | 8分の5 |
半額免除されていた期間 | 8分の6 |
4分の1免除されていた期間 | 8分の7 |
支給開始年齢になると、10年たっていなくても追納できない
「10年たっていないから追納できる」と思っていると例外があります。
老齢基礎年金の受給権者になると、追納できなくなるからです。
・65歳で、受給資格を満たし年金を受けとれる
・60歳〜64歳で、受給資格を満たし年金を繰り上げ受給する
上記に該当する場合は、免除・猶予期間から10年たっていなくても追納できないので注意しましょう。
まとめ:国民年金を追納できない!と後悔しないために落とし穴を回避しよう
経済的な理由などで国民年金の保険料納付が難しい場合は、救済措置として免除・猶予制度の利用を検討しましょう。
- 免除・猶予の条件を満たすか確認する
- 申請して承認されれば、免除・猶予を受けられる
- 納付できる状況になったら、追納を検討する
※注意!10年を過ぎると追納できません。
免除・猶予制度は、内容をよく理解して検討しよう
免除・猶予を受けると、自分にとってどんなメリット・デメリットがあるかを確認しましょう。
免除:老齢基礎年金が減る、受給資格期間には算入される
猶予:老齢基礎年金に反映されない、受給資格期間には算入される
そのほかにも、障害基礎年金、遺族基礎年金の受給資格期間に反映されるなど、万が一のときには、まさに保険として機能してくれます。
その後、納付できるようになったら追納も検討しましょう。無理をしすぎず「将来もらえる老齢基礎年金額にどれくらい反映されるか」などを考慮します。
計算方法やシミュレーションは複雑な部分もありますので、年金事務所への相談をおすすめします。
些細なことでも年金事務所へ相談しよう
国民年金についてわからないことは、どんな些細なことでも年金事務所へ相談しましょう。
国民年金の制度や内容は複雑で、時間がたつにつれ内容も変更されます。
わからないからといって、放置するのだけはやめましょう。
自分にとって良い選択をすることで、安心できる毎日を送りましょう。