地球温暖化にエネルギー資源の枯渇。
我々は地球規模の問題に直面しています。
どれも難解、国連で会議をしても、解決するすべがないように感じるほど大きな問題です。
地球温暖化の原因となる二酸化炭素排出量の削減、石油などの化石燃料を使わない持続可能なエネルギーの生産を目標としてクリーンエネルギーがピックアップされています。
- 太陽光
- 風力
- 地熱
さまざまなクリーンエネルギーが注目されていますが、エネルギー効率の悪さなどから火力発電にとってかわるインパクトはありません。
しかし、これらの問題を一挙に解決できる技術があるのです。
それが”核融合発電”です。
現在の問題を一気に解決できるポテンシャルを含む核融合発電の技術に力を入れている企業が続出しています。
特にアメリカのベンチャー企業が核融合発電の技術に目をつけており、多額の金額を調達している企業も出るほどです。
(参考:日本経済新聞|核融合、調達100億円超は14社 夢の技術を投資マネー先取り 米が先行、日欧中で追う)
なぜ、核融合発電の技術を扱うベンチャー企業にこれほどまでの金額が集まるのでしょうか?
この記事を読めば次のことがわかります。
- 核融合発電について
- アメリカの核融合発電企業について
核融合発電という新しい技術を知ることで、次のGAFAMを見つけられるかもしれません。
核融合発電について
核融合反応は、水素のような軽い原子が高温でぶつかった際にヘリウムなどのより重い原子に変化する現象です。
身近な例では太陽が核融合反応に当たります。
太陽の約75%は水素でできており、複数の水素が融合することでヘリウムを生み出す核融合反応により、約40億年以上も燃え続けています。
太陽のような核融合反応を利用して発電を行う方法が核融合発電です。
核融合発電のメリットは多々存在します。
- 水素が燃料となるため、海水を燃料にできる=燃料の枯渇がない
- CO2の排出量がない=環境にやさしい
- 核融合の制御が比較的容易なため、原子力発電よりリスクが低い
- 少量の燃料から大量のエネルギーが作れる
現在のエネルギーおよび環境問題を一挙に解決できる可能性を秘めています。
核と聞くと、核爆弾や3.11におきた原子力発電所の事故といったマイナスイメージが強いと思います。
しかし、核融合発電は原子力発電と違い安全性が高く、環境にも優しいという特徴があります。
(参考:yh株式会社|今注目の「核融合発電」とは?原子力発電との違いやメリット・デメリットを解説)
(参考:生命を宿す地球の総合化学|太陽:水素の核融合反応により発熱・発光)
原子力発電との違い
核融合反応は水素のように軽い原子核の融合により熱エネルギーを作るのに対し、原子力発電はウランのような重い原子核を2つの軽い原子核に”分裂”させることで熱エネルギーを生成します。
核融合反応発電と同じように「少ない燃料で大きな電力を得られる」「燃料を安定的に確保できる」「CO2の排出がない」というメリットがあります。
しかし原子力発電は、原子炉の中で核分裂を絶えず起こしており、暴走が起こらないように制御装置を使い、コントロールし続ける必要があります。
コントロールに失敗すると、チェルノブイリ原発事故のような爆発が起こってしまう可能性があります。
「爆発による被害および放射能汚染」「使用済み燃料の処理方法が確立していない」というデメリットがあります。
核融合発電では「使用済み核燃料の管理年数が短い」「事故リスクが低い」という、原子力発電のデメリットを克服しています。
(参考:yh株式会社|今注目の「核融合発電」とは?原子力発電との違いやメリット・デメリットを解説)
(参考:Looopでんき|原子力発電とは?仕組みやメリット・デメリットについて解説)
使用済み核燃料の管理年数が短い
日本では原子力発電で生じた使用済み核燃料は、直接処理を行うならば10万年間地下に隔離することが定められています。
放射能レベルを安全といえるレベルに引き下げるためには、10万年物時間が必要というわけです。
それに対して、核融合発電の使用済み核燃料の放射能レベルは原子力発電と比べると低く、100年程度で安全といえるレベルになるといわれています。
(参考:朝日新聞DIGITAL|岸田氏「使用済み核燃料、再処理すれば期間300年」はミスリード)
事故リスクが低い
核融合反応は高温・高圧の環境下でないと維持できないため、問題が生じた場合、自然に反応が停止します。
そのため核融合発電では、核分裂のような連鎖反応が起こらないため、原子炉の暴走リスクが低いとされています。
原子力発電より安定性と安全性を兼ね備えた核融合発電のアイデア自体は、1950年代に考案されました。
実用化に向けて研究が進められてきましたが、いくつもの技術的障害があり今日まで実現できませんでした。
核融合発電の技術的障害
核融合発電を行うには次の課題をクリアしなければなりません。
- 強磁場・大型の伝導コイルの準備
- 超低温と1億℃を共存させられる場所の準備
- プラズマを空中で燃やし続ける技術
- 燃料を閉じ込めながら、廃棄を取り出す技術
- ロケットノズル並みの熱処理技術
これらの課題をクリアするには高度な科学力と多額の資金力が必要です。
現在、日本・EU・アメリカ・ロシア・中国・韓国・インドが共同で進めている「ITER計画」はフランスに核融合実験炉を建設するもので、総建設費は3兆円近くといわれています。
(参考:ASUENE MEDIA|核融合発電の実用化は可能?課題や最新動向について解説)
高い技術と多額の資金が必要なため、今まで実現が難しかった核融合発電ですが近年多くのスタートアップ企業が、核融合発電事業に乗り出しています。
その中でも有力と思われるアメリカ企業をご紹介します。
アメリカの核融合発電企業について
核融合発電で特に注目したいアメリカの企業は次の2社です。
- Commonwealth Fusion Systems
- ヘリオン・エナジー
ともに非上場企業ですが、一年間で億を超える金額を調達した企業で、アメリカの有名投資家の間でも注目されています。
Commonwealth Fusion Systems
Commonwealth Fusion Systems(以下CFS)は、マサチューセッツ工科大学から派生したアメリカ最大規模の核融合のスタートアップ企業です。
2024年4月では20億ドル以上という最大規模の資金調達を果たしました。
CFSは世界中のスタートアップ企業の中で核融合炉の実現に最も近いといわれています。
CFSの特筆すべき技術は、トカマク式の核融合炉のコンパクト化です。
核融合発電に使われる核融合炉には3種類あります。
- トカマク型
- ヘリカル型
- レーザー方式
それぞれの特徴は以下のとおりです。
(引用:文部科学省|核融合研究)
トカマク型はITER計画にも採用されているメジャーな核融合炉です。
トカマク型の難点は炉のサイズがどうしても大きくなること。
サイズの大きさは建設費用の増大につながるため、炉のコンパクト化が実現すれば大きなブレイクスルーになります。
この技術に目をつけて、ビル・ゲイツやGoogleといったアメリカ企業のそうそうたるメンツが投資を行っています。
上場すればGAFAMのようにメジャー企業になる可能性が高いでしょう。
(参考:核融合の先生|Commonwealth Fusion Systemsとは?核融合資金調達額No.1企業)
(参考:ニュースイッチ|ビル・ゲイツやグーグルが出資、米MIT発の核融合ベンチャーの正体)
ヘリオン・エナジー
2社目はヘリオン・エナジーです。
ヘリオン・エナジーの特徴は、FRC型と呼ばれる従来と違う核融合炉を研究している点です。
FRC型はドーナツ形状に閉じ込めた2つのプラズマを高速で衝突させて超高温を実現、核融合反応をおこします。
従来のものより、中性子を出さず安全性が高いのが特徴です。
(参考:TELESCOPEmagazine|次世代エネルギーの候補「核融合発電」とは?)
ヘリオン・エナジーは2023年11月末にFRC型プラズマの作成に成功したと発表、2024年には発電実験を始める計画を立てています。
(参考:日経XTECH|第3方式の核融合炉でファーストプラズマ、2024年内の発電実験へ)
ヘリオン・エナジーはマイクロソフトと核融合発電による世界初の電力供給契約を交わしました。
2028年までの稼働を計画しており、着々と準備が進められています。
ヘリオン・エナジーは5億ドルもの資金調達を達成しており、OpenAIのサム・アルトマン氏からも3億ドル以上の出資を受けています。
ヘリオン・エナジーも上場の際は要注目でしょう。
(参考:Reuters|マイクロソフト、核融合電力購入で世界初の契約 28年から供給)
まとめ:核融合発電は次世代のトレンド。将来のGAFAM候補
核融合発電は世界規模で起こっている環境問題やエネルギー問題を一挙に解決できる可能性を持った技術です。
日本・EU・アメリカ・ロシア・中国・韓国・インドが共同で進めているITER計画はフランスに核融合発電の核融合炉を作る計画で、世界規模で核融合発電を推し進めようとしています。
日本でも核融合研究開発を進めており、2030年代の発電実証に向けて米・英・欧州と締結を結んでいます。
(参考:日本経済新聞|核融合、官民両輪で開発加速 発電実証の成否焦点に)
現在、有力視できるアメリカのスタートアップ企業は2社。
- Commonwealth Fusion Systems
- ヘリオン・エナジー
どちらも5億ドル以上もの資金調達を実現し、ビル・ゲイツやサム・アルトマンなどの有名実業家から多額の出資を受けています。
上場したあかつきには、GAFAMのような存在になるでしょう。
核融合発電への投資の参考にしてください。