自分や家族が病院側の都合で個室に入院することになったら、差額ベッド代を支払う同意書にサインしないでください。
サインすると、支払う必要のない差額ベッド代を支払うはめになります。
この記事では、差額ベッド代の基礎知識と、NPO法人に相談したものの結局高い差額ベッド代を支払うはめになった私の失敗談をお伝えします。
この記事を読めば、入院した際に余計なお金を支払わなくて済むでしょう。
【基礎知識】個室(少人数部屋)に入院したときに発生する差額ベッド代とは
差額ベッド代の正式名称は「特別療養環境室料」です。
特別療養環境室とは、患者がより快適な入院生活を送られるよう設置された病室のことです。個室とはかぎらず、少人数部屋の場合もあります。
患者が特別療養環境室での入院を希望した場合のみ、特別療養環境室料が発生します。
この記事では「特別療養環境室料」を通称である「差額ベッド代」と記します。
個室に入院しても差額ベッド代を支払わなくていいケースがある
病院側の都合で個室に入院した場合は、差額ベッド代は支払う必要はありません。
以下に例を挙げます。
同意書にサインしていない、または同意書の内容が不十分
大部屋が空いておらず、個室しか空いていない
治療上、個室に入院する必要がある
感染症などの病棟管理の必要上、個室に入院する必要がある
差額ベッド代を支払う必要があるのは「患者が個室を希望した場合のみ」と覚えておきましょう。
【体験談】個室しかない個人病院に入院したら1泊5万円だった
私は手術のため、個人病院に計画入院しました。
病院で手術や入院の説明を受け、受け取った大量の紙資料のなかに、差額ベッド代の記載がありました。
1泊5万円。
その個人病院に大部屋はなく、すべて個室で、トイレと風呂は共同でした。
【後悔1】流れで同意書にサインしてしまった
1泊5万円はいくらなんでも高すぎないかと思いましたが、私は入院自体が初めてで、相場もわかっていませんでした。
さまざまな同意書とともに渡されたため、これにサインしなければ手術してもらえないと思い、差額ベッド代を支払う同意書にサインしてしまいました。
同意書にサインすると、患者が個室での入院を希望したことになります。
病院側の都合で個室しか入院できない場合も、同意書にサインした時点で「納得して個室に入った」とみなされます。
【後悔2】病院側ともめたくなくて交渉を断念
後日、私は差額ベッド代について調べ、本当は支払う必要がないことを知りました。
病院側にそのことを伝えましたが、病院側は「うちは個人病院なので」という理由で差額ベッド代の支払いを引き続き要求。
そのような理由が通用するのかと思い、今度は医療系のNPO法人の相談窓口に連絡しました。
NPO法人の回答は、
「個人病院でも大病院でも関係ない」
「病院側の都合で個室に入院した場合であれば、差額ベッド代は請求できない」
というものでした。
私はその回答に安堵しましたが、NPO法人の担当者はこう続けます。
「差額ベッド代を請求しないよう、病院に対して指導はできますが、その際あなたの名前は出します。それでもよろしいでしょうか」
手術は1か月後に迫っていました。先生は名医で、大病院であれば入院期間が2週間になるところが、5日で済みます。
その病院は多くの患者を手術してきた実績があり、その患者たちから今までずっと差額ベッド代を受け取ってきました。
ここで私ひとりが差額ベッド代の支払いを拒絶したら、私の手術と入院生活はどうなるのだろう。
病院ともめたら、手術が取りやめになるのではないか。取りやめにならないとしても、きちんと手術してもらえるのだろうか。入院中、不当な扱いを受けないだろうか。
私はそのような不安に負けて、NPO法人の介入を断り、結局高い差額ベッド代を支払うことになりました。
【後悔3】そもそも知識がなかったことが最大の敗因
差額ベッド代を支払わなくていいケースがあると最初から知っていたら、同意書にサインすることもなければ、高い差額ベッド代を支払うことにもならなかったでしょう。
知識がないと損をするとはこういうことかと痛感しました。
まとめ:個室に入院することになったら同意書にサインしない
同意書にサインすると、患者が個室での入院を希望した、または承知したとみなされます。
そうなると病院側と交渉するときに不利になります。
不当な理由で差額ベッド代を請求されたときは、毅然とした態度で立ち向かいましょう。
ただ、自分ひとりの力で対抗するのは難しいもの。そういったときは、都道府県の相談窓口かNPO法人に連絡し、力を借りましょう。
認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOLM
払わなくてもいいお金を払うと、本当に悔しい思いをします。
正しい知識を身につけ、自分のお金は自分の力で守りましょう。
ライター名:中田早紀子