商船三井は、株価の急騰と急落を繰り返しているため、上昇基調にある現在の株価もいつ次の急落が起こるか不安になっている方も多くいるはずです。
そこで今回、株式投資歴15年の筆者が、過去の株価急落の理由を振り返り、急落はまた起こってしまうのかを考察していきます。
この記事を読めば、過去の急落の歴史を知ることができるため、今後のリスクに備えることができるようになります。
また、急落の歴史は業績悪化の歴史でもあるため、配当狙いで商船三井に注目している投資家にとっても有意義な情報になるはずです。
商船三井とはどのような会社?
商船三井は、日本の大手海運業の1社で、日本郵船・川崎汽船とともに3大海運会社と言われています。
売上高では、日本郵船に次ぐ業界第2位の位置づけとなっています。
企業概要
企業概要を紹介します。
商号 | 株式会社商船三井(通称「MOL」)Mitsui O.S.K. Lines, Ltd. |
本社 | 東京都港区虎ノ門2丁目1番1号 |
資本金 | 65,589,827,533円 |
発行済み株式数 | 362,010,900株 |
従業員数 | 1,168名 |
グループ会社数 | 509社 |
グループ従業員数 | 8,748名 |
運航船舶規模 | 697隻 |
(引用:商船三井HP)
事業内容
海運業は、普段の生活ではあまりなじみがない業種ですが、見えないところで世界の物流を支えています。
ドライバルク事業
鉄鉱石や石炭などの資源にとどまらず肥料・穀物などを、日本から世界へ、世界から日本へ運んでいます。
商船三井の船隊規模は世界最大級で小型船から大型船まで保有しているため。
荷主のニーズに合ったサービスを提供することができます。
エネルギー事業
原油や液化ガスなどのエネルギーを運んでいる事業です。
それぞれを運ぶための特殊仕様になっている専用船(原油を運ぶためのタンカー船、液化ガスを運ぶためのLNG船など)を保有しています。
エネルギーを輸入に頼っていると言われる日本にとっては、欠かせない事業の一つです。
製品輸送事業
商船三井において最も売上規模の大きい事業です。
工業製品や一般消費財、自動車などを輸送する事業です。
特に、自動車産業は日本の主力産業の一つでもありますが、商船三井は海運という立場で日本車を世界で販売するための重要な役割をはたしています。
ウェルビーイングライフ事業
クルージングなどをはじめとして、比較的消費者になじみの深い事業です。
またオフィスビルやレジデンスを保有・賃貸するなどの不動産業を営んでいます。
商船三井の株価が急落した理由とは?
過去20年で、商船三井が急落したタイミングは大きく分けて2度ありますが、理由は異なります。
2021年9月以降の配当権利落ち後の下落
2021年9月27日には高値10,060円をつけたが、2021年10月15日には安値6,180円となり、3週間で約40%も下落しました。
その後もこの期間の下落ほどではないものの、その後2度同じような時期に下落が起きています。
下のチャートは週足で、株式分割調整後となっています。
(引用:Yahoo!ファイナンス)
この時期に何があったのかというと、共通点は3月と9月の配当の権利落ちです。
2021年と2022年は、商船三井の配当利回りが年間ベースで10%を超えていた時期でした。
2007年11月~2008年10月にかけての下落
2011年7月16日の株価は1,757円でしたが、2008年1月には1,077円へと約6ヶ月間で40%以上の下落を記録しました。
この時期は、米国でサブプライムローン問題が騒がれ始めており、世界景気の悪化が懸念され始めていました。
ただ、このサブプライムローン問題は、ご存じの通り2008年9月のリーマンショックにつながりました。
その後世界景気は本格的に冷え込んだ結果、2008年6月から2008年10月のわずか5ヶ月間ほどで株価が1/5になりました。
(引用:Yahoo!ファイナンス)
2008年11月から2020年までの株価の長期低迷
2007年まで世界景気は好調だったため、商船三井のみならず世界の海運会社が新たな船舶を大量に発注しました。
当時2010年問題とも言われていましたが、リーマンショックにより世界景気が低迷したことで物量が減少したうえに、船舶がマーケットに次々に供給されたため、運賃は長らく低迷することになりました。
商船三井の業績が好調な要因
製品輸送事業のコンテナ船事業が好調なことから、商船三井の業績は好調です。
コンテナ運賃は2021年から2022年にかけて異常なほど急騰しました。
この要因は、米中貿易摩擦によるコンテナ供給の減少やコロナによる労働人口不足や物流の乱れと言われています。
(引用:商船三井HP マーケットデータ)
2024年に入り運賃は反転していますが、2023年は元通りの運賃まで下落しています。
その結果、2024/3期第三四半期では赤字に転落するなど、2024/3期は減益見通しです。
2024/3期 | 1Q | 2Q | 3Q | 4Q(予) |
コンテナ船事業 <経常利益> | 238億円 | 95億円 | △33億円 | 119億円 |
今後の株価と配当の今後
商船三井の過去の株価の下落要因を振り返りましたが、海運市況により株価が乱高下していたことが分かりました。
言い換えれば、海運市況次第で、商船三井の株価は決まっていたということです。
また、コンテナ運賃も急騰前の水準まで一時急落したように、商船三井の業績も予断を許さない状況に見えます。
株価急落や無配リスクは常にある
海運市況を予測することは海運業界のプロでも難しいことです。
ただ言えることは、景気の波があるように海運市況にも波が必ずあります。
そのため、商船三井の株価急落リスクは常に秘められていると考えられます。
配当も同じく、海運市況次第で業績悪化が起こるため、無配に陥るリスクもあります。
インフレ鎮静化のため金利は高水準
世界の中央銀行は、インフレを抑え込むため景気を冷え込ませようと政策金利を高く設定しています。
そして、金利を高く設定し続ければ、いつかは景気も悪くなっていくことが一般的です。
2007年から2008年に経験したように、株価急落は突然一気にきます。
景気サイクルでは、いつ景気が悪くなってもおかしくない状況です。
まとめ
商船三井の過去20年の株価下落の歴史を振り返り、今後の株価と配当の見通しを考察しました。
- 急落の原因は、①配当の権利落ち②サブプライムローン問題やリーマンショックによる景気悪化(運賃の悪化)③過剰な船舶供給による運賃の低迷などです。
- 商船三井の2022/3期と2023/3期の絶好調な業績の要因は、コンテナ運賃の急上昇です。
- これらの流れからも、商船三井の業績と株価は海運市況次第で決まります。
- 海運市況は様々な要因で動きますが、基本は景気の波の影響を受けます。今、世界はインフレ鎮静化のため、政策金利を高止まりさせており、いつ景気が冷え込んでもおかしくない状況です。
- そのため、商船三井の株価は今後急落する可能性があり、配当も無配当になる可能性は秘められていると考えられます。
海運株は、リーマンショック時でもわかる通り、急落した場合の値下げ幅は他の株以上となる可能性があります。
筆者としては、市況次第で業績が変動するため予想することが難しいため、あまりおすすめはしませんが、商船三井株への投資をする際には株価が好調な今だからこそ急落リスクに備える必要がありそうです。
ライター名:金融ライター ひろきち