パナソニックの株価が長らく低迷していた中、突如上昇しました。
パナソニック株にずっと注目していた投資家にとっては、「これは本物か?」と期待が膨らんだことでしょう。
そこで今回、株式投資歴15年の筆者が、パナソニック株の上昇した理由を振り返り、今後の株価見通しについて考察していきます。
この記事を読めば、これからパナソニック株を買うべきかが分かります。
パナソニックはどのような会社?
パナソニック(6752)は日本を代表する家電メーカーです。
はじまりは、1918年3月に、著名な経営者である松下幸之助が松下電気器具製作所の操業を開始したことです。
創業から100年以上が経過しており、消費者に長く愛されてきたことが分かります。
会社概要
まずは会社概要を紹介します。
従業員数は23万人、グループ会社数も524社も超える大企業です、時価総額も3兆円を超え、家電メーカーの枠を超えた日本トップクラスの会社です。
会社名 | パナソニックホールディングス株式会社 |
証券コード | 6752 |
市場 | 東証プライム |
本社 | 大阪府門真市大字門真1006番地 |
設立 | 1935年(昭和10年)12月15日 |
創業 | 1918年(大正7年)3月7日 |
資本金(2023年3月31日時点) | 2,593億円 |
連結従業員数(2023年3月31日時点) | 233,391名 |
グループ会社数(2023年3月31日時点) | 524社 |
連結売上高(2023/3期) | 8兆3,789億円 |
株価(2024年5月2日終値) | 1,375.5円 |
時価総額(2024年5月2日時点) | 3兆4,053億円(日本で63番目) |
配当利回りは何%?
パナソニックの2024/3期の配当金予想は35円です。
権利付確定日の株価をもとに計算すると、配当利回りは2.39%となります。
過去5期分で配当利回りの推移を確認すると1.4%~3.49%とかなりブレがありますが、配当金は毎年30円が分配されているため、比較的安定していることが分かります。
決算期 | 配当金 | 権利付確定日株価 | 配当利回り | 配当性向 |
2019/3期 | 30円 | 965.9円 | 3.11% | 24.6% |
2020/3期 | 30円 | 859.0円 | 3.49% | 31.0% |
2021/3期 | 20円 | 1,431.5円 | 1.40% | 28.3% |
2022/3期 | 30円 | 1,221.0円 | 2.46% | 27.4% |
2023/3期 | 30円 | 1,178.0円 | 2.55% | 26.4% |
2024/3期(予) | 35円 | 1,463.0円 | 2.39% | – |
100株で配当金はいくらもらえる?
パナソニックの配当金は、年に2回受けとることができます。
2023/3期の実績は次の通りです。
決算期 | 配当金 |
中間配当(2022年9月末) | 15円 |
期末配当(2023年3月末) | 15円 |
100株を保有していれば、2022年9月に15円×100株=1,500円、2023年3月にも1,500円を受けとることができるため、年間3,000円を収入になります。
100株はいくらで買える?
パナソニック株は、2024年5月2日の株価(終値)が1,375.5円のため、1375.5円×100株=13万7,550円で購入することができます。
パナソニックの株価が上昇した理由は?
2024年2月5日にパナソニック株は一時前週末比99.5円(7.2%)高まで急騰、終値でも63.5円(4.6%)高を記録しました。
この日に何があったのでしょうか?
好決算が発表された
株価上昇の理由は、2024/3期の第三四半期決算が発表され、その内容が素晴らしかったからです。この好決算に株価が素直に反応しました。
発表された決算と業績予想は次の通りです。
2024/3期 | 売上高 | 営業利益 | 純利益 |
3Q実績 | 6兆3,003億円 | 3,203億円 | 4,142億円 |
通期予想 | 8兆4,000億円 | 4,000億円 | 4,600億円 |
進捗率 | 75.0% | 80.1% | 90.0% |
上の表をみると、売上高は計画通りの進捗ながら、利益面での進捗がよく、特に当期純利益の進捗は90.0%とになっています。
その背景は、米国において、EV向けリチウムイオン車載電池を対象とする補助金が利益に計上されているためです。
パナソニックの今後の株価・配当の見通し
2024/3期の決算の利益進捗が予想以上に進んでいるパナソニックの株価は、今後も上昇する可能性が高いのでしょうか。
株価の上昇は一時的
2024/3期3Q決算を好感した株価の上昇は長くは続きませんでした。
補助金を除く、実態の決算での進捗率は、純利益で76%と計画通りの進捗にとどまっていることが要因と考えられます。
ただ、その後、2024年4月24日の取引終了後、業績予想の下方修正を発表しました。
2024/3期 | 売上高 | 営業利益 | 純利益 |
従来予想 | 8兆4,000億円 | 4,000億円 | 4,600億円 |
見直し後の予想 | 8兆5,000億円 | 3,600億円 | 4,400億円 |
車載電池事業の過去の製品不具合品対応に関する引当金計上などが理由のようで、この発表後株価は下落しましたが、上昇時と同様、下方修正は一過性のものと判断され株価はもどしうつつあります。
株価はなぜ安いのか?業績は長期低迷中
業績は営業利益も営業利益率も横ばい推移が続いています(下の表を参照)。
成長を求める株主からすると物足りない結果に終わっており、パナソニックの株価が上昇するためには確度の高い成長路線を株主に示す必要があります。
株価の今後の見通しは?
今後の見通しを考える上では、中期経営計画の分析が重要と考えています。
パナソニックは、①車載電池②空質空調③サプライチェーンマネジメントの3つを最重要投資領域として捉えています。
つまりこの3つの領域で投資が利益に結びつくかがポイントになります。
特に、①車載電池については、2023年5月18日に行われた「パナソニックグループ戦略説明会」で最もページが割かれていたため、最重要テーマと推察されます。
ただ、現時点でこれらの領域への投資が成功するのか、失敗するのか判断することはできません。
もし成功すれば、過去10年の最高営業利益4,000億円を突破することも視野に入ってくるため、株価は2,000円を超えてくることもあり得るでしょう。
配当の今後の見通しは?
パナソニックのホームページ上では、配当に関する明確な方針は示されていないようです。
ただ、過去の実績を見る限り、基本的には配当性向は25~30%を守りながら、配当は業績連動する形になっているため、2025/3期以降は、重要投資領域から投資回収が進んでいけば、必然的に配当も増えていくことが予想されます。
まとめ
パナソニックの株価が上昇した理由と今後の株価の見通しについて解説しました。
- パナソニックは日本を代表する家電メーカーの1社です
- 2024/3期3Q決算が、補助金の恩恵もあり進捗が順調だったことから、株価の上昇につながりました。ただ、その後、下方修正が発表され、株価は下落しています
- 今後の株価の見通しは、中期経営計画で掲げている注力投資領域の進捗次第と考えています。特に、車載電池領域への投資が利益につながっていくかが非常に重要です
- 注力投資領域が利益に結びつくようになれば、株価2,000円の突破してくるはずです
長らく業績が低迷していたことで株価も低迷していたパナソニックですが、注力分野を明確に定めており、今後投資回収がしっかり行えているかを検証していく必要がありそうです。
ただ、まだ投資が利益に結びつくのかの判断ができる段階ではなく、株価も全く織り込んでいないと考えられます。
そのため、業績の急速な悪化が起こらなければ、テクニカル的にもこれ以上の株価下落はなさそうなため、ポートフォリオの一つに組み入れても面白い銘柄ではないでしょうか。
ライター名:金融ライター ひろきち