筆者は「特別寡婦控除(現ひとり親控除)」の申請をしていなかった時期があり、確定申告で約30万円の税金を還付してもらった経験があります。
利用できるはずの制度を申請し忘れていませんか?
一定の理由でひとり親になられた方が年末調整や確定申告で「ひとり親控除」を申請していないと、所得税、住民税を多く納めることになります。
現役AFPの筆者が実体験をもとに、ひとり親控除とは何か、また年末調整や確定申告で申請を忘れた場合の対処法をお伝えします。
ひとり親控除を申請し忘れたら確定申告
確定申告で納めすぎた税金を還付してもらおう
ひとり親控除を申請し忘れた場合は、所得税の確定申告をすることで納め過ぎた税金が還付されます。
ただし、申請し忘れた年から5年以内に確定申告をすることが必要です。
例えば、2022年分のひとり親控除を申請し忘れた分の確定申告期限は「2027年12月31日まで」となります。
それまでに確定申告をしないと時効となり納め過ぎた所得税は還付されません。
また、もともと所得税・住民税がかからない所得の方は申請ができませんのでご注意ください。
確定申告の手続きについて
確定申告は、国税庁ホームページ「確定申告書等作成コーナー」から手続きができます。
また、確定申告のやり方がわからない場合は、以下の国税庁へ複数の方法で問い合わせが可能。不明点を解決できます。
確定申告を税理士へ依頼するという方法もありますが、自分でやってみることで税金の仕組みを理解できるようになります。
ぜひ一度チャレンジしてみてください。
ひとり親控除とは所得税と住民税が減額される制度
ひとり親控除とは
そもそもひとり親控除とはどういったものなのでしょうか。
■ひとり親控除
原則としてその年の12月31日の現況で、婚姻をしていないことまたは配偶者の生死の明らかでない一定の人のうち、次の3つの要件のすべてに当てはまる人です。
(1)その人と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいないこと。
(2)生計を一にする子がいること。
この場合の子は、その年分の総所得金額等が48万円以下で、他の人の同一生計配偶者や扶養親族になっていない人に限られます。
(3)合計所得金額が500万円以下であること。
■控除額:35万円
難しい言葉がたくさん出てきますね。
一言でいうと、シングルマザー・シングルファザーの方がひとり親控除の適用対
(国税庁ホームページより抜粋)
象となる場合、年末調整や確定申告のときにひとり親控除を申請すると、所得税と住民税が減額されるという制度です。
逆に、申請を忘れてしまうと所得税と住民税が減額されない、ということになります。
ひとり親控除を申請した場合、いくら税金が少なくなるのか?
先に述べた通り、ひとり親控除を申請すると所得税と住民税が減額されます。
では、どのような仕組みで税金が減額されるのでしょうか。
具体的にご説明いたします。
【婚姻せずに出産したAさんの場合】
Aさんはひとり親控除が適用されます。
今年の所得は300万円でした。
※イメージしやすいように、他の控除等については省きます。
①ひとり親控除を申請していなかった場合
所得税率が10%とすると所得税は
300万×10%=30万円
②ひとり親控除の35万円を申請した場合
300万円-ひとり親控除35万円=265万円
所得税率が10%とすると、所得税は
265万円×10%=26.5万円
結果、ひとり親控除を申請すると、
①30万円-②26.5万円=3.5万円所得税が少なくなります。
ひとり親控除は申請するだけで支払う税金が減る制度です。
忘れずに申請しましょう。
【体験談】ひとり親控除は自分で申請しないと適用されない
税金の負担を軽くしてくれる「ひとり親控除」。
ただし、ひとり親控除は自ら申請しないと適用されない制度です。
「そのような制度があることを知らなかった」「学校で教わっていない」「誰も教えてくれない」は通用しません。
私も特別寡婦控除(現ひとり親控除)の存在を知らなかったために、3年間、年末調整で申請していませんでした。
そのとき勤務していた会社には、私がひとり親であることを伝えていましたが、年末調整の書類を提出した際、特に指摘されたことはありません。
私が特別寡婦控除(現ひとり親控除)の存在を知ったきっかけは、ひとり親手当をインターネットで調べていた際、偶然知ったのです。
ひとり親になりたての私は社会の仕組みに関して全く知識がなく、税金の仕組みが丁寧に書かれたウェブサイトを読んでも理解ができません。
そこで、区役所へ電話をかけ、電話をたらい回しにされながらいろいろなお話を伺いました。
確定申告をすれば納め過ぎた税金が戻ってくるので、税務署に問い合わせるようアドバイスを受けます。
すぐに税務署へ電話をかけ手続き方法を教えてもらい、なんとか確定申告をすることができました。
その結果、約30万円の還付金を受け取れました。
その当時の私は、そういった情報は会社が教えてくれるものだ、という間違った考え方をしていました。
「私がひとり親と知っているなら、一言声をかけてくれればいいのに」と、知識のない自分ではなく教えてくれない会社に責任があると感じていました。
しかし、会社が従業員の家庭事情に触れることを避けるのは当たり前のこと。今では知識不足であった私に一番の原因があると考えています。
社会の仕組みを知るということは、重要なライフハックの一つであると実感した出来事です。
ひとり親控除の申請を忘れたときのまとめ
存在を知らないと利用できない制度は数多く存在します。
ひとり親控除の申請もその一つ。
ひとり親控除の適用対象となるにもかかわらず申請し忘れていた方は、確定申告をすれば納めすぎた税金が還付されます。
毎年、年末調整や確定申告の際には申請を忘れずに行いましょう。