「スルガ銀行は、やばい!」
「スルガ銀行の不正融資問題は、どうなった?」
スルガ銀行の何が問題で、何が起こっているのか?
筆者はかつて、スルガ銀行に近い営業方針を掲げる他の銀行に勤務していた経験があります。
その経験から、「スルガ銀行は、本当にやばいのか?」を、銀行の内情を知るものとして分かりやすく解説してまいります。
スルガ銀行の知識を得るだけではなく、「自分自身が被害者にならないようにする」ことの一助にもなれば幸いです。
ご自身の大切な財産を守るために、是非、最後までお付き合いください。
(引用元:日本経済新聞)
スルガ銀行2つの不正融資とは?
シェアハウス 不正融資 |
①シェアハウス「かぼちゃの馬車」への投資話を不動産会社から持ちかけられる。 ②利回り8%以上、家賃保証等、魅力的な投資先であるとのこと。 ③アパートローンは、スルガ銀行で契約することが条件。 ④普通のサラリーマンが、自己資金無しで数億円のアパートローン融資を受ける。 ⑤「かぼちゃの馬車」運営会社:株式会社スマートデイズが、破綻。 ⑥家賃保証契約に基づく家賃収入を得られなくなる。 ⑦アパートローンの返済ができなくなる。 ⑧最悪、自己破産する。 |
【重大な問題点】 (1)異常に高い工事金額 シェアハウス運営会社:株式会社スマートデイズは、工事請負会社から高額なキックバックを受け取るため、本来の建築費等から大幅に水増しした金額を、購入者へ請求していました。 (2)組織的な審査資料の改ざん 通帳の中身を改ざんし、自己資金を多くみせて、審査を承認とする根拠としていました。シェアハウス購入者は、この事実を知りませんでした。 |
「中古アパート・マンション 不正融資」 |
①「スルガ銀行からの融資が決まっている物件」と不動産会社から勧められる。 ②「銀行が認めている物件なら、安心だろう」と考え、購入を決める。 ③アパートローンは、スルガ銀行で契約。 ④普通のサラリーマンが、自己資金無しで数億円のアパートローン融資を受ける。 ⑤購入してすぐに、数千万円単位の修繕が必要であることを知る。 ⑥「満室」であったはずが、実際には「空室」が多い。 ⑦アパートローンの返済ができなくなる。 ⑧最悪、自己破産する。 |
【重大な問題点】 (1)実態を反映しない売買価格 レントロール(家賃表)の改ざんにより、実際には空室ばかりの物件を「満室」と偽って販売。雨漏り等の重大な損傷個所があるにも関わらず、告知をしていませんでした。 (2)組織的な審査資料の改ざん シェアハウスの問題と同様、通帳の中身を改ざんし、自己資金を多くみせて、審査を承認とする根拠としていました。購入者は、この事実を知りませんでした。 |
<通帳改ざんの実例>
(引用元:FNNオンラインプライム)
スルガ銀行 不正融資は誰が主導した?
スルガ銀行と不動産会社の両者が、結託していたと見られています。
シェアハウス不正融資については、スルガ銀行と株式会社スマートデイズの結託ということになります。
不正融資問題が発覚する前は、スルガ銀行は地方銀行でありながら高い収益を上げていたため、むしろ賞賛される立場にありました。
融資実績と収益を上げ続けたいスルガ銀行と、不動産売買による高額な収益を上げたい不動産会社の利害が一致したことが、主たる要因であると考えられています。
私が以前、勤務していた銀行においては、「不動産会社側が、銀行に接待を行う」ということが、日常的に行われていました。
これは、他の一般的な銀行ではあり得ないことです。
不動産会社側が接待を行う理由は、大きく2点あります。
①アパートローンの融資審査は厳しく、借入が難しい銀行が多い。
②アパート・マンションは1億円単位の物件が多く、不動産会社のもうけが大きい。
スルガ銀行は、「個人向け融資」に活路を見出していたため、不動産会社側からだけではなく、スルガ銀行側からも不動産会社に擦り寄る理由があったと言えます。
スルガ銀行 被害者の悲痛な叫び
事例① (被害額:3億3,650万円) 融資審査書類として提出した私の銀行通帳が改竄されていたのです。驚いたことに4,600万円もの代金が、本来の預貯金額に上乗せされていたのです。 |
事例② (被害額:3億円) レントロールの賃料を実際の約2倍に改ざん、預金通帳残高の約7,200万円もの水増し、売買契約書の金額の偽装 |
事例③ (被害額:2億3,300万円) 数千万円単位の大規模修繕実施の必要性について、管理会社や設備メンテナンス会社から指摘を受けています。 |
(引用元:スルガ銀行不正融資被害者同盟 被害者の声)
私が勤務していた銀行においては、スルガ銀行のような問題は発生していませんでしたが、悪意があれば、審査用資料を改ざんすることはできたであろうと思っています。
レントロールは、エクセルで簡易に作成したものがほとんどであり、データ上でも紙ベースでも、改ざんすることは容易であったと思います。
通帳についても、通帳原本をお預かりするわけではなく、コピーをお預かりするため、改ざんはやろうと思えばできてしまいます。
いずれも「銀行だったら、安心だ!」という信用を逆手にとった悪質な行為です。
スルガ銀行 問題解決への歩み
スルガ銀行の問題は、2つ存在しています。
①シェアハウス 不正融資問題
②中古アパート・マンション 不正融資問題
上記の内、「シェアハウス 不正融資問題」については、実質的にアパートローン残高を帳消しにするという形で解決に至っています。
一方、「中古アパート・マンション 不正融資問題」への対応は続いており、解決には至っていません。
シェアハウスについては、不動産としての市場性が一定程度あったため、不動産と引き替えに借入の帳消しというスキームが可能となりました。
一方、中古アパート・マンションについては、地方に所在し、かつ老朽化が進んでいる物件が多いため、同様のスキームでは解決が難しいと見られています。
スルガ銀行 倒産はしないのか?
スルガ銀行の2023年時点における不良債権比率は10.16%です。
これは全国の地方銀行の中でワースト1位の数値となっています。
ワースト2位の銀行の比率は5.21%であるため、スルガ銀行が突出して悪い数値であることが分かります。
業績は減収傾向ながらも、黒字は確保し続けており、株価も近年では上昇傾向にあります。
倒産が懸念されるような状況にはないようですが、今もアパートローンの被害者との対応は終わっていません。
対応の進捗によっては、業績や不良債権に大きな影響が出ることも考えられます。
まとめ
「スルガ銀行は、やばい!」という声は、「不正融資に自ら加担していた」という事実に対する非難の声が、大多数であると考えられます。
しかし、アパート・マンションを購入し、不動産投資を行うことも「事業」のひとつです。
投資家自身がリスクを見極め、リターンと比べてリスクが高いと判断すれば、投資を控えるべきです。
今回、被害に遭った投資家の中には、「自分が購入する物件現地に、一度も行ったことがなかった」という方が多数いたそうです。
これは、不動産投資の基本からすれば、考えられないことです。
現地へ行けば、建物の状態や入居状況等、自分で直接確認できたはずです。
不動産は、故障・不具合・欠陥等が内在していることが、普通であると捉えるべきです。
残念ながら、「悪意を持って意図的に隠ぺいする」という行為は、不動産業界においては未だに警戒すべきことです。
プロの宅建業者でも、現地確認で問題点を見逃し、痛い目に合うこともあります。
見逃した代償が、数千万円規模に膨らむことも珍しくありません。
それが素人であれば、余計に注意深くなることが必要です。
「事業」として、リスクを正確に判断し、これは厳しいという結論になれば、あきらめるという決断も重要となります。
ライター名:元銀行員の金融・不動産ライター グッチ3