エネオス株価の低迷が続いていますが、その理由をご存知でしょうか。
原油価格の下落や石油需要の減少、脱炭素社会への移行リスクなど、エネオス株価を取り巻く環境は厳しいものがあります。
これらの要因が複合的に作用した結果、エネオスの業績は大きく悪化し、2020年3月期の連結決算は大幅な減収減益となりました。
しかし、2021年3月期は原油価格の回復や石油製品需要の持ち直しにより、業績は改善傾向にあります。
では、今後のエネオス株価の見通しはどうなるのでしょうか。
業績回復の行方が鍵を握ると言えそうです。
短期的には原油価格の動向や経済活動の正常化が重要ですが、中長期的には脱炭素社会への対応や新規事業の育成が欠かせません。
本記事では、エネオス株価が安い理由を詳しく解説するとともに、今後の株価見通しと回復のシナリオについて考察していきます。
エネオス株式の投資判断に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。
1章:エネオス株価が安い理由と今後の見通し
1:原油価格下落の影響
エネオス株価が安い大きな理由の一つに、原油価格の下落が挙げられます。
エネオスは石油精製・販売を主力事業としているため、原油価格の変動に大きく左右されるのです。
実際、2020年初頭から原油価格が大幅に下落したことで、エネオスの収益性は悪化の一途をたどりました。
経済産業省の資源エネルギー庁によれば、2020年4月の原油価格(ドバイ原油)は1バレルあたり20ドル台前半まで下落し、前年同月比で70%以上の下落となったそうです。
原油安の影響を受け、エネオスの2020年3月期の連結営業利益は前期比88%減の190億円まで落ち込んでしまいました。
原油価格の下落が、エネオスの業績悪化と株価下落につながっていることは明らかです。
ただし、2021年に入り原油価格は回復傾向にあります。
今後、原油価格が安定的に推移していけば、エネオスの業績回復と株価上昇が期待できるかもしれません。
2:石油需要減少の影響
エネオス株価が低迷している背景には、世界的な石油需要の減少もあるようです。
脱炭素社会への移行により、再生可能エネルギーや電気自動車(EV)の普及が進んでいるのが要因です。
国際エネルギー機関(IEA)の報告では、2020年の世界の石油需要は前年比で約9%減少したとのこと。
コロナ禍で経済活動が制限されたことに加え、脱炭素の流れが加速したことが原因だそうです。
例えば、欧州連合(EU)は2030年までに温室効果ガス排出量を1990年比で少なくとも55%削減する目標を掲げ、EV普及に向けた政策を強化しています。
日本でも、2035年までにガソリン車の新車販売を禁止する方針が打ち出されました。
石油需要の減少は、エネオスの販売量や収益性に直結します。
そのため、同社の株価下落につながっているのでしょう。
ただ、石油需要の減少は長期的な課題であり、短期的には新興国を中心に一定の需要が見込まれています。
エネオスとしては、石油事業の効率化を進めつつ、脱炭素社会への対応も図っていく必要がありそうです。
3:脱炭素社会への移行リスク
エネオス株価の低迷には、脱炭素社会への移行に伴うリスクも影を落としています。
世界的に温暖化対策が加速する中、化石燃料からクリーンエネルギーへのシフトが進行中です。
国連の「パリ協定」では、産業革命前からの気温上昇を1.5℃に抑える目標が掲げられました。
この目標達成のためには、2050年までに世界のCO2排出量を実質ゼロにしなければならないとされています。
こうした動きを受け、世界の主要国は脱炭素に向けた政策を次々と打ち出しています。
日本も2050年までにカーボンニュートラルを実現する方針を示しました。
脱炭素社会への移行は、石油業界にとって大きなリスクとなります。
化石燃料への需要減少やCO2排出規制の強化などが予想されるからです。
実際、欧州の大手石油会社は、再生可能エネルギー事業へのシフトを加速させています。
エネオスも、2040年までにCO2排出量を2013年度比で46%削減する目標を掲げていますが、より抜本的な事業転換が求められるでしょう。
脱炭素社会への移行リスクは、エネオスの将来の収益性や成長性に対する不透明感を高めており、株価の下押し要因となっているようです。
4:競合他社との競争激化
エネオス株価の低迷には、競合他社との競争激化も影響しているようです。
国内の石油業界では、需要減少を背景に業界再編が進み、大手元売り会社間の競争が激しさを増しているのです。
2019年、JXTGホールディングスと東燃ゼネラル石油が経営統合し、エネオスホールディングスが誕生しました。
これにより、国内の石油元売り会社は、エネオス、出光興産、コスモエネルギーホールディングスの3社に集約されました。
各社は需要減少に対応するため、製油所の再編や合理化を進めています。
さらに、電力やガスなどの新規事業にも乗り出すなど、事業ポートフォリオの転換を図っているのです。
こうした競争環境の中、エネオスは国内最大手として、シェア拡大と収益性向上を迫られています。
しかし、競合他社も生き残りをかけて経営効率化や新規事業開拓に注力しており、エネオスの優位性は必ずしも明確ではありません。
競合他社との競争激化は、エネオスの収益性や成長性に対する不透明感を高めており、株価の下押し要因となっているのでしょう。
今後、エネオスは競合他社との差別化を図るとともに、事業構造改革を着実に進めていく必要がありそうです。
2章:業績低迷の要因分析と今後の株価見通し
1:業績低迷の要因分析
エネオス株価が低迷している最大の要因は、同社の業績不振にあります。
2020年3月期の連結決算は、売上高が前期比10.6%減の8兆7,311億円、営業利益が同88.4%減の190億円と大幅な減収減益となりました。
業績低迷の主な要因としては、原油価格の下落と石油製品需要の減少が挙げられます。
原油価格は2020年に入り大幅に下落し、エネオスの製品販売価格や在庫評価損に影響を及ぼしました。
また、コロナ禍で経済活動が制限され、ガソリンや航空燃料の需要が大きく落ち込んだのです。
加えて、同社の石油化学事業も市況悪化の影響を受けました。
世界的な需要減少を背景に、石油化学製品の価格が下落したためです。
ただし、2021年3月期は原油価格の回復や石油製品需要の持ち直しにより、業績は改善しています。
2021年3月期の連結営業利益は2,247億円と、前期から大幅に増加しました。
とはいえ、業績回復の先行きには不透明感が残ります。
原油価格の動向やコロナ収束後の需要回復ペース、脱炭素社会への移行に伴う事業環境の変化など、不確定要素が多いためです。
エネオスとしては、収益性の高い事業へのシフトや徹底的なコスト削減により、安定的な利益成長を目指す必要があるでしょう。
業績低迷からの脱却こそが、株価上昇の鍵を握っていると言えます。
2:今後の株価見通しと回復のシナリオ
エネオス株価の今後を占う上で、業績回復の行方が最大のポイントになりそうです。
足元では、原油価格の回復や経済活動の正常化により、業績は改善傾向にあります。
2022年3月期の連結営業利益は、前期比43.9%増の3,200億円になる見通しです。
ただし、中長期的な業績回復の道筋には不透明感が残ります。
脱炭素社会への移行に伴う事業環境の変化や、競合他社との競争激化などが、同社の収益性に影響を及ぼす可能性があるためです。
エネオスとしては、
①石油事業の収益性向上
②成長事業の育成
③脱炭素への対応
の3点に注力していく必要があるでしょう。
石油事業では、製油所の再編や統合により、生産効率の向上とコスト削減を進めることが求められます。
さらに、アジアを中心とした海外での事業拡大も重要な課題です。
成長事業としては、電力や再生可能エネルギー、モビリティサービスなどが挙げられます。
これらの事業を育成し、安定的な収益基盤を構築することが欠かせません。
脱炭素への対応では、2050年のカーボンニュートラルに向けて、石油製品の低炭素化や、水素・アンモニア事業の拡大などに取り組む必要があります。
これらの課題に着実に対処し、業績回復と成長戦略の実現性を示すことができれば、エネオス株価の本格的な回復が期待できるでしょう。
まずは、2022年3月期以降の業績動向から目が離せません。
まとめ
エネオス株価が安い理由と今後の見通しについて、要点をまとめます。
- 原油価格下落や石油需要減少などの外部要因が株価に影響
- 脱炭素社会への移行リスクや競合他社との競争激化も株価下落の要因
- 2020年3月期は大幅な減収減益となるも、2021年3月期は業績が改善
- 今後は石油事業の収益性向上や成長事業の育成、脱炭素への対応が重要
- 2022年3月期の業績動向から、エネオス株価の本格的な回復に期待
エネオス株価の行方は、業績回復の行方にかかっていると言えるでしょう。
短期的には原油価格の動向や経済活動の正常化が業績を左右しますが、中長期的には脱炭素社会への対応や新規事業の育成が重要になってきます。
個人的には、エネオスの強みを活かしつつ、時代の変化に適応していく姿勢に好感が持てます。
今後の事業戦略の進捗と業績の回復に注目していきたいと思います。
皆さんも、エネオス株価の動向を見守りつつ、投資判断の参考にしてみてはいかがでしょうか。
Webライター:三上ヒロユキ