高配当株を狙った売買も株式戦略の一つです。
ただ高配当である理由もわからず投資することは危険です。
しっかりと配当が高い理由を確認してから投資しましょう。
そこで今回、株式投資歴15年の筆者が、昨年度配当利回りが10%を超えて注目された商船三井の配当について解説します。
この記事を読めば、商船三井の配当がなぜ高いのか、その理由がわかります。
そして、今後の配当がどうなるのかについても考察します。
商船三井の配当をチェックするときの3つのポイント
1株あたりの配当金は、当期純利益×配当性向÷発行済株式数でほとんど計算できます。
そのため、商船三井の配当について考えるなら、この3つの要素を見ていく必要があります。
当期純利益
当期純利益は経費や税金を払ったあとの利益で、配当の原資になる大切なものです。
利益が大きければ大きいほど、たくさんの配当をもらえる可能性があります。
当期純利益は決算短信のトップページでチェックできます。
商船三井の2023/3期の当期純利益は、796,060百万円です。
(引用:商船三井HP 2023/3期決算短信)
配当性向
配当性向は、当期純利益のなかから株主への配当にどれだけ還元しているかを表す指標です。
利益がたくさんでていても配当性向が小さければ、たくさんの配当を受け取ることができません。
配当性向の実績は、決算短信で確認できます。
(引用:商船三井HP 2023/3期決算短信)
また、今後の方針はホームページのIR情報>経営方針>株主還元方針に書かれています。
商船三井では、2023年度~2025年度の配当性向を30%にすると明記しているので、利益の30%を配当にまわすということが明確になっています。
(引用:商船三井HP 株主還元方針)
期末発行済株式数
期末発行済株式数とは、その企業が発行している株式の数です。
配当を何人に分配するかを表すものなので、発行済株式数が少ないほうが1株あたりの配当金を多く受けとることができるようになります。
期末発行済株式数は、当期純利益と同じように決算短信で確認することができます。
商船三井の2023/3期の期末発行済株式数は、362百万株です。
(引用:商船三井HP 2023/3期決算短信)
商船三井の配当金推移
それでは、この3つのポイントをおさえながら過去10年分の配当金の推移をみていきます。
①当期純利益 (百万円) | ②配当性向 | ③期末発行済株式数 (百万株) | 1株あたり配当金 (①×②÷③) | |
2014/3期 | 57,393 | 10.4% | 1,206 | 5円 |
2015/3期 | 42,356 | 19.8% | 1,206 | 7円 |
2016/3期 | -170,447 | - | 1,206 | 5円 |
2017/3期 | 5,257 | 45.5% | 1,206 | 2円 |
2018/3期 | -47,380 | - | 121 | 20円 |
2019/3期 | 26,875 | 20.0% | 121 | 45円 |
2020/3期 | 32,623 | 23.8% | 121 | 65円 |
2021/3期 | 90,052 | 19.9% | 121 | 150円 |
2022/3期 | 708,819 | 20.3% | 121 | 1,200円 |
2023/3期 | 790,060 | 25.4% | 362 | 560円 |
2021/3期と2022/3期を比べると配当金が8倍になっていますが、この要因が当期純利益の増加であることがわかります。
また、2023/3期は配当金が減少していますが、これは発行済株式数の増加が原因であると分析できます。
このように3つのポイントに分けて考えれば、どのような要因で配当金が増減したのか一目瞭然です。
商船三井の配当はなぜ高い?その理由を解説
ここまで配当金の推移をみてきましたが、この配当金が投資家にとって魅力的かどうか、配当利回りで確認する必要があります。
1株あたり配当金① | 3月権利付最終日株価② | 配当利回り①÷② | |
2014/3期 | 5円 | 392円 | 1.28% |
2015/3期 | 7円 | 409円 | 1.71% |
2016/3期 | 5円 | 240円 | 2.08% |
2017/3期 | 2円 | 358円 | 0.56% |
2018/3期 | 20円 | 3,000円 | 0.67% |
2019/3期 | 45円 | 2,427円 | 1.85% |
2020/3期 | 65円 | 1,800円 | 3.61% |
2021/3期 | 150円 | 3,825円 | 3.92% |
2022/3期 | 1,200円 | 10,340円 | 11.61% |
2023/3期 | 560円 | 3,540円 | 15.82% |
上の表で配当利回りの推移をみると、2022/3期:11.61%、2023/3期:15.82%となっており、商船三井の利回りはとても高いことがよくわかります。
ではその理由はどこにあるのでしょうか。
決算が好調に推移
配当が増加している主な要因は当期純利益の増加で、2022/3期においては前年度に比べ、約8倍の増益になっています。
増益の背景を分析すると、コンテナ船事業が牽引したことがわかります。
(引用:商船三井HP マーケットデータ)
コンテナ船の運賃は、コロナウイルスや地政学リスクによる物流の混乱により2021年から2022年にかけて大幅に上昇しました。
この外部環境の変化が追い風となり、2020/3期は41億円だったコンテナ事業の収益が2023/3期には6,200億円となっています。
配当性向が維持されている
2015/3期以降、商船三井の配当は20%を維持しています。
当期純利益の大幅な増加のなか、配当性向が低下していないので、当期純利益の伸びがそのまま配当金の増加につながっています。
好決算が株価に反映されない
2023/3期は、2021/3期に比べて当期純利益が8倍以上になっていますが、株価は3倍(2022年3月に1株を3株にする株式分割を実施)程度の上昇にとどまっています。
好決算が株価に反映されていない理由は、投資家に好決算が一過性の利益と見做されたためと考えられます。
物流の混乱によるコンテナ船事業の増益が好決算の理由のため、市況が落ち着けば商船三井の当期純利益は減益になると判断されたことは妥当といえます。
商船三井の配当金をもらうには?
ところで配当金をもらうためには、いつ買えばいいか知っていますか。
ここでは、注意点とあわせて配当金をもらうための条件をご紹介します。
いつまでに買えばいい?
商船三井の2024/3期の期末配当をもらうためには、3月27日(水)の取引終了後まで商船三井株を保有しておく必要があります。
2営業日前 | 1営業日前 | 0営業日前 |
3月27日(水) | 3月28日(木) | 3月29日(金) |
権利付最終日 | 権利落ち日 | 月末最終営業日 |
ここでは2024/3期を例にご紹介しましたが、月末最終営業日を0営業日として、その2営業日前の取引終了時に株主であることが、配当をもらうための条件であることを覚えておきましょう。
配当金狙いで株を買う時の注意点
配当金狙いで権利付最終日の取引終了直前で株を購入し、権利落ち日の取引開始直後に売却するということはあまりおすすめできません。
下の表は権利付最終日と権利落ち日の商船三井の株価を比較したものになります。
過去10年のうち7年は権利落ち日に株価が下落をしています。
もちろん絶対ではないですが、理論的には配当の分だけ株価は下落するものと考えておく必要があります。
権利付最終日終値 | 権利落ち日終値 | 株価の変化 |
392円 | 397円 | +5円 |
409円 | 413円 | +4円 |
240円 | 230円 | -10円 |
358円 | 356円 | -2円 |
3,000円 | 2,985円 | -15円 |
2,427円 | 2,341円 | -86円 |
1,800円 | 1,789円 | -11円 |
3,825円 | 3,935円 | +110円 |
10,340円 | 3,275円 (分割考慮後:9,825円) | -515円 |
3,540円 | 3,460円 | -80円 |
商船三井の配当は今後どうなる?
商船三井の2024/3期の配当は減配となり、配当利回りは2022/3期や2023/3期ほどの10%を超えないことが予想されています。
その理由は、①2024/3期が減益予想②株価が上昇しているからです。
当期純利益 (百万円) | 配当性向 | 期末発行済 株式数 | 1株あたり 配当金 | 株価 (3/22) | 配当利回り | |
2024/3期 | 235,000 | 30.0% | 362百万 | 200円 | 4,715円 | 4.24% |
また、商船三井の当期純利益は海運市況に左右されることから、2025/3期以降の業績を予測することはかなり難しく、配当の予想もかなり難しいです。
ただ今予測できることは、次の2点だと考えています。
・商船三井の配当性向は、2025/3期と2026/3期において30%とすることを掲げている。これは過去の20~25%水準よりも高いものになっています。
・好決算が出た場合には、決算ほどの株価の上昇は期待しにくい。
決算さえよければ、他の株に比べ配当利回りが急上昇するため、まさに配当は決算次第と言えます。
まとめ
商船三井の配当が高い理由と今後の配当予想を解説しました。
- 配当に関する分析をするときは、当期純利益・配当性向・期末発行済株式数・株価をチェックする。
- 商船三井の配当は増配傾向だが、その要因は当期純利益の伸びである。
- 2022/3期と2023/3期の配当利回りは10%を超えているが、これは好決算が株価に反映されていないことが主な要因と考えられる。
- 今後の配当予測は決算と株価次第。ただ好決算は株価に反映されにくい業界と考えられるため、好決算時には魅力的な配当利回りとなる可能性がある。
- 商船三井が高配当株という理由で、権利付最終日直前に買うのはおすすめしない。
筆者としては、かなり決算のボラティリティの激しい銘柄のため、短期で売買するにはタイミングが非常に難しいと考えています。
ただ、配当性向を引き上げるなど株主還元に対して積極的な姿勢を示しているため、長期で配当狙いで保有しておくことができるならば、おすすめできる銘柄です。
株式相場は絶好調なため商船三井株価も上昇を続けていますが、長期配当狙いであるならば少し株価の調整を待つなど買い場を探してみましょう。
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ライター名:金融ライター ひろきち