日本No.1の検索サイト「Yahoo! JAPAN」を提供するZホールディングス株式会社が、2021年にコミュニケーションアプリ「LINE」を提供するLINE株式会社と統合しました。
2023年には、会社名も分かりやすく「LINEヤフー株式会社」となり、これから本格的に新体制が始動しようとしています。
ところが、統合後の株価は冴えません。
なぜ株価は安いのでしょうか?
今回は、株式投資歴15年の筆者が、このような疑問を持つ投資家のために記事を書きました。
この記事を最後まで読めば、LINEヤフーの今後の株価見通しを知ることができます。
LINEヤフー(旧Zホールディングス)の株価は低迷中
(出典:Yahoo!ファイナンス)
上の月足チャートは、2024年8月8日(取引終了後)時点のものです。
※ 2021年に両社は統合しましたが、統合前は旧Zホールディングスの株価です。
2019年に両社の統合が発表されましたが、現在の株価は統合発表前とほとんど変わらない水準まで下落してきたことがわかります。
これは、今回の統合が株式市場から評価されていないことのあらわれでしょう。
ここからの巻き返しがあるのか期待したいところです。
LINEヤフーの業績は?
2019/3期 | 2020/3期 | 2021/3期 | 2022/3期 | 2023/3期 | 2024/3期 | 2025/3期 | |
売上高 (億円) | 9,547 | 10,529 | 12,058 | 15,674 | 16,724 | 18,147 | 19.350 |
営業 利益 (億円) | 1,405 | 1,523 | 1,621 | 1,895 | 3,145 | 2,082 | - |
利益率 (%) | 14.7 | 14.5 | 13.4 | 12.1 | 18.8 | 11.5 | |
EPS (円) | 14.74 | 16.88 | 14.02 | 10.20 | 23.87 | 15.10 | - |
上の表は、売上高と営業利益の推移です。
現体制(合併)は2021/3期にスタートしていますが、順調に増収増益基調になっていますね。
ただ気になるのが、営業利益率の低下です。
統合時の営業利益率は13.4%でしたが、直近の2024/3期は11.5%と約2%も低下しています。
2025/3期以降、どれだけ利益率の改善が図れるかが業績面での注目点と言えるかもしれません。
LINEヤフーの株価はなぜ安い?3つの要因を解説
ここまで、LINEヤフーの過去10年間の株価の値動きと業績面を振り返ってきました。
では、LINEヤフーの株価が伸び悩んでいる理由は、なぜでしょうか?
そこには、2社の統合が投資家の期待に応えられていない現状がありそうです。
要因1|営業利益率の低下
まずは、営業利益率が低下傾向にあることです。
前段でふれたように、増収増益の一方で、利益率が低下傾向にあります。
もともと、旧LINE株式会社の営業利益率は10%もなかったため、統合後の利益率が下がることは想定内だったのかもしれません。
また、2023/3期から赤字事業のPayPayを連結子会社化したことなども利益率の低下を加速させた要因といえるでしょう。
いずれにしても、営業利益率が低下しているうちは、株主からするとヤフー側(旧Zホールディングス)にとって、この合併はプラスだったといえる結果がでていないと感じてしまう状況になっています。
要因2|EPSの伸び悩み
もう一つの株価が低迷する理由は、EPSの低下が考えられます。
2019/3期 | 2020/3期 | 2021/3期 | 2022/3期 | 2023/3期 | 2024/3期 | |
EPS (円) | 14.74 | 16.88 | 14.02 | 10.20 | 23.87 | 15.10 |
期末株価 (円) | 271 | 348 | 550 | 536 | 373 | 388 |
PER (倍) | 18.4 | 20.6 | 39.2 | 52.5 | 15.6 | 25.7 |
株式数 (百万) | 2,385 | 2,405 | 7,655 | 7,596 | 7,633 | 7,637 |
上の表で注目してほしい点は、EPSです。
増収増益であるにもかかわらず。2024/3期のEPS(15.10円)は、合併前の2020/3期のEPS:16.88円を超えることができていません。
この原因は、合併によって株式発行数が約3倍に膨れ上がったためです。
株式発行数の増加が、希薄化につながり、株価の低迷をもたらしていると考えられます。
要因3|統合作業に追われている
合併会社は、組織改変やシステム連携など、合併後数年は統合作業に多くの時間が割かれてしまいます。
そのため、営業推進よりも体制整備に重きがおかれ、とりわけトップラインの改善を狙うよりもコスト削減が優先されている傾向にあります。
LINEヤフーの場合も同様で、2025/3期から合併のシナジー効果をだすべく動き出そうとしているため、むしろこれからの業績動向を注視していかなければならないでしょう。
今後の株価は?大化けの可能性は?
最後に、多くの投資家が気になるであろう「LINEヤフーの今後の株価」について考察していきます。
筆者としては、「LINEヤフーの株価は、長期的には上昇していく」と考えています。
その理由を、ここでは説明します。
PayPay事業の黒字化
2023/3期まで、PayPay事業は赤字でした。
これまでシェアを獲得するために「〇〇%還元」など、多くのキャンペーンを打ち出していたことが要因ですが、いまでは「QRコード決済といえばPayPay」といえるほど、多くのお店で使えるようになっています。
その結果、2024/3期には初の黒字化を達成することになりました。
今後はPayPayの利用者データを活用して、どのような事業が展開されていくのかに注目していくことになりそうです。
PayPay経済圏の拡大
楽天経済圏に次ぐ規模とされるPayPay経済圏は、今最も勢いのある経済圏と考えています。
ECサイトを起点とする楽天に対して、PayPay経済圏は日常的に使用する「検索・LINE」が起点になります。
改悪続きの楽天経済圏に対して、PayPay経済圏は数年前に比べて圧倒的に使いやすさが増しており、今後どこまで拡大していくことができるのかに注目していくといいでしょう。
自己株式の取得に前向き
株式発行数の増加が、株価の低迷につながっていましたが、2024年8月5日から2024年9月2にかけて1,500億円の自己株取得が行われます。
この規模は、総発行式株式の6.4%に相当することから、EPSの改善にも寄与することが期待できます。
また、今後も自己株式取得は適宜検討するとされており、引き続きEPSの改善が期待できるでしょう。
まとめ
最後にこの記事をおさらいします。
- LINEヤフーの業績は増収増益傾向だが、株価は低迷しています。
- 株価が低迷している大きな理由は、株式総数の増加によるEPSの低迷です その他にも、「営業利益率の低下」や「合併後間もないこと」があります。
- このような株価低迷理由があるなか、今後の株価は「長期的には上昇していく」と考えられます。
- 短期的に上昇が見込まれる要因として、自己株式の取得に積極的であることがあげられます。また、長期的にも利便性の向上したPayPay経済圏の拡大が期待できるでしょう。
株価は、チャート上は底値圏にあり、今後EPSの改善が期待できます。
ただ、日本の利上げや米国リセッション懸念などから、外部環境は不安定なため、買い急ぐ必要はありません。
しっかり、チャートと業績面を注視しながら買い場を検討していきましょう。
ライター名:金融ライター ひろきち