「再就職手当を振り込まれたその日に辞めても返還は不要らしい――」。2016年の Yahoo! 知恵袋に掲載された体験談はいまも検索上位に残っていますが、現在の雇用保険制度を定める厚生労働省の公式資料では、支給要件として「一年以上継続して雇用されることが確実であると認められること」が明記されています。(出典:都道府県労働局所在地一覧)
この記事では、ネット上に広がる情報を検証しながら、再就職手当をもらってから一週間で退職した場合に実際に何が起きるのか、そしてその後に取るべき手続きまでを整理します。
再就職手当の仕組みと支給要件
再就職手当(以下、手当)は、基本手当の受給資格がある求職者が早期に就職し、かつ就職日の前日に残っている所定給付日数が3分の1以上ある場合などに支給されます。
支給額は残日数に応じて「60 %または70 %」で計算されること、そして「一年以上の雇用見込み」が前提となることは厚生労働省のハローワークインターネットサービスに示されています。(出典:ハローワークインターネットサービス – 就職促進給付)
この一年以上という基準は見込みを要件とするにとどまり、実際に一年働けなかったからといって直ちに不支給や返還を求められるわけではありません。
一週間で辞めても原則返還義務は生じない
短期離職と手当返還の関係については、公的文書に「自動的に返還を求める」規定が存在しません。厚生労働省が公開している雇用保険業務取扱要領でも、早期離職に対して“返還”ではなく、失業給付の残日数をどう扱うか(たとえば倒産・解雇時の受給期間延長)を定めるにとどまっています。(出典:ハローワークインターネットサービス – 基本手当について)
実務上、手当の返還を命じられるのは「虚偽の申請」や「不正受給」に該当した場合であり、その場合は手当額全額に加え最大2倍の納付命令が科されるという不正受給規定が適用されます。(出典:不正受給について(事例等)|大阪労働局)
したがって「正当な手続きで支給が決定した後、やむを得ず短期間で自己都合退職した」というケースでは、原則として返還義務は生じません。ネット記事の多くが「返金不要」と断言しているのはこの運用に基づきますが、「虚偽申告があった場合は返還命令が出る」という条件付きである点を押さえておく必要があります。
退職後に必要なハローワーク手続き
手当の返還が不要であっても、退職した事実をハローワークへ速やかに届け出ることは義務です。届け出をしないまま放置すると、離職の事実を隠して給付を受けたと見なされる恐れがあり、不正受給の対象になり得ます。
退職届の写しや離職票を準備し、窓口またはオンラインで「再離職」の申告を行えば、未消化の基本手当残日数や受給期間延長の可否を案内してもらえます。再離職者に対する受給期間延長の取り扱いは業務取扱要領 57251 項に定められています。(出典:厚生労働省)
その後の失業給付・再就職手当への影響
手当を受け取った後に再び失業状態となった場合、残っている所定給付日数から「手当として既に受け取った相当日数」を差し引いたうえで、基本手当を再開できる可能性があります。これは厚生労働省の基本手当ページでも案内されているとおりです。
いったん手当を受け取った人が再度手当を申請できるのは「前回の支給日から3年経過後」とされており、この点は各ハローワークのパンフレットにも統一して記載されています。
再就職手当以外に一週間で離職するリスクもある
制度的には返還を心配しなくてもよい場合が大半ですが、履歴書に“一週間で離職”という事実が残るのは事実です。
採用担当が注目するのは「辞めざるを得なかった理由」と「次にどう活かすか」という説明であり、虚偽なく前向きに伝えることが再チャレンジの第一歩になります。実際、ハローワークでは返還手続きと同時にキャリアカウンセリングを受けられる体制が整備されているため、早期相談が推奨されています。
まとめ
再就職手当を受け取ってから一週間で辞めても、正当な手続きで受給したものであれば原則返還は求められません。
不正受給に該当しないかぎり、必要なのは「速やかな再離職の届け出と失業給付再開の手続き」であり、キャリアを立て直すサポートも制度内に用意されています。情報を鵜呑みにせず、公的資料に基づいて落ち着いて行動しましょう。
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