自宅に置いてある現金を銀行へ戻したいとき、一番気になるのは「一気に入れて大丈夫か」という点です。
先に結論を書きます。自分の口座へ現金を入金する行為自体に、200万円までは法律上の確認義務はありません。そして、もっとも避けたほうがよいのは「基準を下回るように分けて入金する」やり方です。金融庁の資料に、それが名指しで書かれています。
金額別に何が必要か
銀行には犯罪収益移転防止法にもとづく「取引時確認」の義務があります。基準は取引の種類で変わります。
| 取引 | 取引時確認 |
|---|---|
| 口座開設 | 必要 |
| 10万円を超える現金による振込 | 必要 |
| 200万円を超える現金の受払いを伴う取引 | 必要 |
| 納税のための手続き | 不要 |
つまり500万円や1,000万円を窓口で入金する場合は、200万円を超えるので本人確認書類を求められます。これは痑われているからではなく、法律で決まっている手続きです。
出典: 一般社団法人全国銀行協会「犯罪収益移転防止法に関するよくある質問・回答」、2026年8月18日確認。
分けて入金するのは逆効果です
「200万円を超えると確認されるなら、190万円ずつ分けて入れればよい」と考える方がいます。これは逆効果です。
金融庁が公表している「疑わしい取引の参考事例」の、現金の使用形態に着目した事例には、次の記述があります。
短期間のうちに頻繁に行われる取引で、現金又は小切手による入出金の総額が多額である場合。敷居値を若干下回る取引が認められる場合も同様とする。
敷居値とは、ここでいう200万円などの基準額のことです。それをわずかに下回る取引が続くこと自体が、参考事例として明記されています。確認を避けるつもりの工夫が、むしろ目を引く形です。
同じ資料の口座の利用形態に着目した事例には、次の記述もあります。
通常は資金の動きがないにもかかわらず、突如多額の入出金が行われる口座に係る取引。
しばらく使っていなかった口座へまとまった現金を入れる場合は、こちらに当たります。普段使っている口座を使ったほうが自然です。
ただし、この資料には「形式的に合致するものがすべて疑わしい取引に該当するわけではない」という旨の注記もあります。当てはまっただけで問題になるわけではありません。
出典: 金融庁「疑わしい取引の参考事例」(預金取扱い金融機関)、2026年8月18日確認。
正しい備え方は「説明できるようにしておく」こと
確認を避けようとするのではなく、聞かれたときに答えられる状態にしておくのが一番楽です。
- このお金がどこから来たのかを一言で言えるようにしておく(退職金、満期の保険金、長年の貯金など)
- 根拠になる書類があれば手元に置いておく
- 本人確認書類を持って行く
- 普段使っている口座へ、一度で入金する
自分のお金である限り、正直に答えればそれで終わります。手間がかかるのは、むしろ分けて入れて何度も窓口へ行く場合のほうです。
相続が絡む場合は別の話です
亡くなった方の現金を預け直す場合は、銀行の手続きとは別に相続税の問題が出てきます。国税庁の調査データでは、申告漏れ財産の約33割が現金・預貯金となっています。詳しくはタンス預金はいくらまで大丈夫?国税庁データで見るバレる実態と相続の分岐点で整理しています。
また、窓口で実際に何を聞かれるのかは100万円を入金すると怪しまれる?金額別の銀行手続きと税務署が見るタイミングで、実体験のアンケートとあわせてまとめています。
なお、いくらから税務署に連絡が行くのかは、銀行の窓口手続きとは別の制度の話です。100万円・200万円・1,000万円という数字がそれぞれどの制度から来ているかは銀行から税務署に連絡が行くのはいくらから?条文で分かる3つの制度で条文にあたって整理しています。
まとめ
- 自分の口座への現金入金は、200万円までは法律上の確認義務がない
- 200万円を超えると本人確認が必要。これは法律で決まった手続き
- 基準をわずかに下回る分割入金は、金融庁の参考事例に明記されている
- 普段動きのない口座へ突然多額を入れるのも同様
- 避けるより、出どころを説明できるようにしておくほうが早い
あなたのときは、どうでしたか(匿名アンケート)
窓口で実際に何を聞かれるかは、銀行や支店によって変わります。経験した人の記録だけが手がかりです。
答えるのは選択肢を選ぶだけで、すべて任意です。名前もメールアドレスも聞かれません。集まった結果は、金額帯ごとの割合として確認できます。
お金の話は、根拠のあいまいな情報がそのまま広がっていることがあります。このサイトでは、法律の条文や官庁・業界団体の資料まで戻って、確認した日付とあわせて書いています。実際に出回っている誤りを訂正した例も含め、ほかの調べ物は人に聞けないお金の質問にまとめました。
