新NISAの登場などで個人投資家からインデックスファンドの人気が高まっています。
そのような中で、まずは米国などの先進国を選びながらも、分散投資として新興国株式のインデックスファンドを検討する人もおおいはずです。
またリスク分散だけでなく、先進国よりも高いリターンが得られる期待も高いことも魅力でしょう。
ただ、「新興国株式のインデックスファンドをおすすめしない」という人がいることもこのファンドの特徴の一つです。この記事では、なぜおすすめしないのか、その理由について解説していきます。
「新興国株式」はどこの国の株式?
「新興国」とは、一般的には先進国ほどの経済規模ではないものの成長期待の高い国をいいます。
具体的には、次のような国です。
中国 | インド | 台湾 | 韓国 | ブラジル | サウジアラビア |
南アフリカ | メキシコ | インドネシア | タイ | マレーシア | アラブ首長国連邦 |
ポーランド | カタール | クウェート | トルコ | フィリピン | ギリシャ |
チリ | ペルー | ハンガリー | チェコ | コロンビア | エジプト |
この24か国は、新興国株式の代表的な指数である「MSCIエマージング・マーケット・インデックス」に組み入れられています。(出所)MSCIの情報を基に野村アセットマネジメント作成NOMURA 野村アセットマネジメント 新興国株式とは?「新興国」ってどの国? | 資産運用ステップアップ編 | お金を育てる研究所)。
新興国株式の過去の値動き
新興国株式の過去の値動き(MSCIエマージング・マーケット・インデックス)を確認してみましょう。
(出典:Trading View)
新興国株式は先進国に比べると経済や政治が不安定なため値動きが荒っぽくなりがちで、上下に大きく振れていますが、10年前に比べると約50%上昇しています。
新興国株式のインデックスファンドへ投資するメリット
新興国株式のインデックスファンドへ投資するメリットは次の2つです。
- 長期的に先進国を上回る経済成長を果たすかもしれない
- 先進国との分散投資先として魅力がある
新興国株式のインデックスファンドへ投資している人は、このいずれかのメリットを享受するために、ポートフォリオに組み入れているはずです。
「新興国株式のインデックスファンドはおすすめしない」と言われる理由
経済成長期待が高く、今後の株価の上昇が期待できる(株価は10年で1.5倍に上昇している)新興国株式のインデックスファンドをおすすめしない理由とは一体なんでしょうか。
1. 先進国に投資した方が高い利回りを得られる
新興国は経済規模も小さく政治も不安定なため、株価のボラティリティが大きくなる傾向にあります。
投資の世界でボラティリティは「リスク」であるため、新興国株式は先進国株式に比べるとリスクが高い投資先として位置づけられています。
そのため、新興国株式に投資をするのであれば高いリターンを求めたいところです。
では、そのリターンはどのようになっているのかを確認するために、投資信託の人気シリーズ「eMAXIS Slim」で比較してみましょう。
6ヶ月 | 1年 | 3年 | 5年 | |
新興国 | 3.70% | 22.93% | 9.38% | 9.26% |
S&P500 | 18.63% | 32.18% | 21.85% | 18.51% |
全世界 | 12.97% | 32.15% | 18.39% | 18.66% |
先進国 | 14.78% | 33.98% | 19.90% | 20.49% |
TOPIX | 2.19% | 20.40% | 14.12% | 12.17% |
(参考:楽天証券)
この表からも分かる通り、5年以内でみれば、TOPIXを除いて過去のどの期間のパフォーマンスをみても新興国は低くなっています。TOPIXも1年以内では下回るものの、3年や5年でみれば新興国株式のパフォーマンスを上回っています。
このように先進国株式に投資をした方が、新興国株式に投資をするよりも効率がいいため、敢えて新興国株式に投資する必要はないと考えられます。
2. 手数料が高い
新興国株式の信託報酬は、先進国株式よりも高く設定されています。
先ほどと同様、「eMAXIS Slim」シリーズで比較してみましょう。
インデックス | 信託報酬率 |
新興国 | 0.1518% |
S&P500 | 0.09372% |
全世界 | 0.05775% |
先進国 | 0.09889% |
TOPIX | 0.143% |
(参考:楽天証券)
インデックスファンドは信託報酬が低いことが魅力の一つですが、新興国株式のインデックスファンドは手数料率が高いため、先進国と同じリターンであっても信託報酬が高い分、パフォーマンスが悪化してしまいます。
3. 期待通りの成長が期待できるか不透明
米国をはじめとする先進国は、長期的にみれば経済成長することで株価も上昇していくことが期待できるとされています。
一方で新興国は経済成長が期待はできるものの、例えばギリシャの財政危機などそれぞれの国ごとに様々な点に課題・リスクがあり、本当に経済成長をして株価が上昇していくことができるのかは不透明と言わざるをえません。
ボラティリティが大きくても、長期的にみれば上昇トレンドであればいいですが、先進国ほどその期待はできないでしょう。
4. 新興国株式だけを買う理由がない
ここまで解説してきたように、新興国株式はインデックスファンドでありながらリスクが高い投資といえます。
一方でリターンは5年間で比較すれば先進国を下回っていたように、パフォーマンスが悪くなることもあります。
そのため、新興国株式を買うときは、新興国株式だけを買うのではなく、先進国などと組み合わせて分散することでリスクをおさえることが重要です。
ただ、これでは全世界株式のインデックスファンド(通称:オルカン)を買ったほうが、信託報酬も低いため合理的と言えます。
結局、新興国株式のインデックスファンドを買う理由がありません。
5. 情報が限定的
日本・アメリカ・EU・中国・韓国などのニュースは日常的によくみかけ、リアルタイムで情報が入手できますが、例えばブラジルや南アフリカのニュースなどはほとんどみかけないですよね。
ネットで検索しても、情報は少なかったり、古かったりと情報は限定的です。
投資信託はプロにお任せということがメリットではありますが、リスクが高いからこそしっかりした情報がえられる環境がほしいというのが投資家の心理ではないでしょうか。
新興国株式は投資環境としてはおすすめとは言えません。
まとめ|新興国株式よりオルカンを買うことがおすすめ
新興国株式をポートフォリオに組み入れることは間違いではありません。
ただ、新興国株式のインデックスファンドを選ぶのではなく全世界株式などを買う方がより低コストでポートフォリオを組み立てることができます。
全世界株式の新興国株式の比率は10%前後のため低すぎるということであれば、リスクや手数料率の高さを認識したうえで投資しなければなりません。
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ライター名:社会人ライター ひろきち