生活保護は、生活に困窮する方々の最低限度の生活を保障し、自立を支援するための重要な制度です。
しかし、受給者を取り巻く環境は必ずしも楽観的なものではありません。
経済的な制約から社会的な偏見、自立への道のりなど、さまざまな困難が存在します。
この記事では、生活保護受給者の暮らしぶりに迫ります。
制度の概要や受給者が所有できるもの、支給される扶助の種類と金額、受給者が直面する課題などを詳しく解説します。
生活保護受給者の暮らしぶりは千差万別ですが、この記事を通じてその実態について理解を深めていただければ幸いです。
生活保護受給者の暮らしぶりとは
生活保護受給者の暮らしぶりは、その人の置かれた状況によって大きく異なります。
共通しているのは、最低限度の生活を維持するために生活保護制度を利用しているという点です。
受給者の中には高齢者や障がい者・傷病者・ひとり親家庭など、さまざまな事情を抱えています。
生活保護制度は、これらの方々の生活を支える重要なセーフティーネットですが、受給者の生活は必ずしも楽ではありません。
限られた収入の中で生活費や医療費、教育費などをやりくりしなければならず、経済的な困難に直面することも少なくありません。また、社会的な偏見や差別に苦しむ方もいます。
生活保護の制度概要とは何か
生活保護制度は、生活に困窮する方々の最低生活を国が保障する制度です。
この制度は、日本国憲法第25条に規定する「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を具体化したものと言えます。
生活保護法に基づき資産や能力等の活用を前提に、困窮の程度に応じて必要な保護を行います。
健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長することを目的としています。
生活保護受給者が所有して良いもの
生活保護受給者は、生活に必要な最小限の資産を所有できます。
具体的には生活に必要な家具や電化製品、最低限の預貯金などが認められています。
ただし、資産の保有額には上限があり、基準を超える場合は処分が求められる場合もあります。
生活保護制度では必要最小限の資産の保有を認めつつ、受給者の自立を促す仕組みが設けられています。
生活保護の扶助や加算の内容
生活保護制度では、受給者の生活状況に応じて様々な扶助や加算が用意されています。
これらの支援は受給者の最低限度の生活を保障し、自立を助けるために不可欠な役割を担っています。
扶助の種類は全部で8つ、加算の種類は9つあります。
扶助は8つある
生活保護受給者には、以下の8種類の扶助が支給されます。
生活扶助 | 食費、被服費、光熱費などの生活費全般 |
住宅扶助 | 家賃や住宅ローン返済にかかる費用 |
教育扶助 | 義務教育、高等教育、特別支援教育にかかる費用 |
医療扶助 | 医療費の全額または一部 |
介護扶助 | 介護サービスにかかる費用 |
出産扶助 | 出産にかかる費用 |
生業扶助 | 就業に必要な資金や設備 |
葬祭扶助 | 葬儀にかかる費用 |
これらの扶助は、受給者の状況に合わせて支給額が異なります。
(※ 出典:厚生労働省)
加算は9つある
生活保護受給者には、以下の9種類の加算が支給されます。
加算 | 金額 |
冬季加算 | 世帯人員別、地区別に設定 Ⅵ区(東京都など)の3人世帯の場合:4,240円 |
妊産婦加算 | 妊娠6ヵ月未満の場合:9,130円 妊娠6ヵ月以上の場合:1万3,790円 産後の場合:8,480円 |
母子加算 | 子ども1人の場合:1万8,800円 ※一定の要件を満たす場合は経過的加算を加える |
障害者加算 | 身体障害者障害等級1・2級の場合:2万6,810円 3級の場合:2万3,060円 |
介護施設入所者加算 | 9,880円 |
在宅患者加算 | 1万3,270円 |
放射線障害者加算 | 現罹患者の場合:4万3,830円 元罹患者の場合:2万1,920円 |
児童養育加算 | 18歳までの子ども1人につき1万190円 ※一定の要件を満たす場合は経過的加算を加える |
介護保険料加算 | 実費 |
これらの扶助は、受給者の状況に応じて支給されます。
(※ 出典:厚生労働省)
生活扶助は自由に使える
生活保護の扶助の中で、生活費に当たる生活扶助については具体的な使途が定められていません。
受給者は生活扶助費を食費や衣服費・日用品費など、日常生活に必要な支出に自由に充てられます。
また、生活保護費を貯金することも認められています。
受給者が節約して貯金を積み重ねれば、禁止されていない範囲での趣味や娯楽を楽しむことも可能です。
もちろん、このような使い方が適切かどうかは、個人の価値観によって判断が分かれるでしょう。
しかし、生活扶助の使途については受給者の裁量に委ねられている部分が大きいと言えます。
生活保護を受けることで、思ったほど生活が制限されるわけではないと感じる方もいるかもしれません。
生活保護で受けられる金額はどれくらい?
生活保護で受けられる金額は、最低限度の生活を保障するために必要な額が支給されます。
支給額は世帯の人数や年齢、居住地域などの要素を考慮して算定されるため一概には言えませんが、健康で文化的な生活を送るために十分な金額が保障されているといえるでしょう。
関連記事:生活保護で月40万も支給される?支給条件や注意点などを解説
生活保護の金額計算について
生活保護の支給額は、厚生労働大臣が定める基準に基づいて計算されます。
具体的には生活扶助・住宅扶助・教育扶助・医療扶助などの種類ごとに、最低生活費が定められています。
この最低生活費から世帯の収入を差し引いた額が、生活保護費として支給されるのです。
計算の際には世帯人数や世帯構成、年齢、居住地域などの要素が考慮されます。
例えば子どもがいる世帯では教育扶助が加算され、大都市に住む世帯では住宅扶助の額が増えるなどの調整が行われます。
(※ 出典:最低生活費の算出方法(R5.10 )厚生労働省)
生活必需品について
生活保護受給者は、生活必需品を購入できます。
具体的には、食料品、衣類、日用品、医療費などが含まれます。
しかし、高価な家具や家電製品、車などを購入することはできません。
また、趣味に関する物品やコレクションなども購入することはできません。
とはいえ、友人の医療従事者は「生活保護受給者でも、当たり前に車に乗って来ている」といっていました。
また「ブランド物の高そうなカバンを持ってきている母親も居る」ともこぼしていました。
医療機関では保険証を確認するため、すぐに分かります。
コロナ禍ではそのような人達を見ながら「一生懸命働いているのが馬鹿らしくなる」と辛そうにしていました。
関連記事:生活保護受給中に絶対にしてはいけないこと5選【知らないと危険】
生活保護受給者が直面する困難とは?
前項では車を所持している受給者についても取り上げましたが、すべての受給者がそのようなわけではありません。
生活保護を受けることで最低限の生活は保障されますが、受給者が直面する困難も少なくありません。
経済的な困窮に加え、社会的な偏見や差別に苦しむ方も多いのが現状です。
また、就労による自立を目指す受給者にとって、適切な仕事を見つけることは容易ではありません。
職業訓練や就労支援を受けられる制度もありますが、十分とは言えない面もあります。
生活保護を申請するための条件
生活保護を受けるためには、一定の条件を満たす必要があります。
- 世帯収入が最低生活費未満の場合
- 家族からの支援が期待できない
- 動産・不動産など資産がない
- 病気やけがなどで働けない
それぞれについて、詳しく解説します。
世帯収入が最低生活費未満の場合
生活保護の受給要件の一つは、世帯の収入が最低生活費を下回っていることです。
計算方法については厚生労働省に定められています。
この最低生活費は世帯人数や世帯構成、居住地域などによって異なります。
申請者の世帯収入が、最低生活費を下回っている場合、生活保護の対象となる可能性があります。
(※ 出典:最低生活費の算出方法(R5.10 )厚生労働省)
家族からの支援が期待できない
生活保護は、他の手段では最低限度の生活を維持できない場合に適用される制度です。
したがって、家族からの経済的支援が期待できる場合には、原則として生活保護の対象とはなりません。
ただし、家族に支援の意思や能力がない場合や、虐待などの特別な事情がある場合には、例外的に生活保護が適用されることもあります。
動産・不動産など資産がない
生活保護の受給には、一定額以上の資産を保有していないことも条件となります。
申請者が土地や建物・預貯金などの資産を持っている場合、原則としてそれらを活用することが求められます。
ただし、生活に必要不可欠な資産については、一定の範囲で保有が認められています。
手放せない正当な理由がある場合は、申請時に確認しておきましょう。
病気やけがなどで働けない
生活保護制度は働く意思と能力がありながら、さまざまな事情で就労が困難な人を対象としています。
したがって、病気やけが・障がいなどで働けない場合、生活保護の受給要件を満たす可能性があります。
ただし、一時的な病気や怪我の場合は、まず傷病手当金などの他の社会保障制度の利用が検討されます。
長期的に就労が困難な状態にある場合に、生活保護の対象となるのです。
生活保護の受給には一定の条件がありますが、真に生活に困窮し、他に頼るべき手段がない人には必要な援助の手が差し伸べられます。
生活保護制度は国民の最後のセーフティーネットとして、重要な役割を果たしています。
まとめ:生活保護受給者の暮らしぶりはさまざま
生活保護受給者の暮らしぶりは、一人ひとり異なります。
中には支給された保護費を計画的に管理し、節約しながら暮らしている人もいます。
生活必需品をきちんと揃え、健康的な食事を心がけ、時には趣味や娯楽を楽しむ余裕もあるかもしれません。
一方で、病気や障がい・高齢などの事情で、日々の生活に困難を抱えている人も少なくありません。
保護費だけでは十分な栄養を取ることが難しかったり、医療費の負担に苦しんだりと、さまざまな問題に直面している可能性があります。
しかし、どのような事情であれ、生活保護を必要としている人がいる以上、私たちにできることがあります。
それは、生活保護受給者を一括りにせず、一人ひとりの状況に寄り添い、理解しようと努めることです。
生活保護制度は、貧困に苦しむ人々の最後の拠り所です。
この制度を適切に運用し、支援を必要とする人に手を差し伸べていくことが大切だといえるでしょう。