信用金庫の金利は、預金金利・貸出金利共に銀行よりも高いことが多いです。
それは信用金庫と銀行とでは、組織形態が大きく異なることが関係しています。
筆者は銀行に10年間勤務していた経験があります。
その経験に基づき、信用金庫の金利はなぜ高いのか?
信用金庫と銀行は、どのような違いがあるのかを解説します。
最後までお付き合いください。
そもそも信用金庫とは何か
信用金庫とはどのような組織なのでしょうか?
業務内容は銀行と同じ様に見えますが、組織としては大きく異なります。
信用金庫の組織形態
信用金庫は営業エリアが決まっており、地域で預金を集め、地域で融資を行うという事業形態です。
相互扶助を目的としており、利益を追い求める組織ではありません。
中小企業や個人事業主にとっては、銀行からは借入が難しくても信用金庫からは借入ができるケースもあります。
信金中央金庫という全国の信用金庫を束ねる中央金融機関が存在しています。
銀行との違い
銀行は株式会社であり、営利目的の企業です。
それに対し、信用金庫は相互扶助を目的とした協同組織です。
各信用金庫は営業エリアが限定されており、各地域でその土地に根ざした支援を行います。
銀行では融資が難しい中小企業・個人事業主に対して、融資をして支援を行うことが期待されています。
筆者が勤務していた銀行では、中小企業・個人事業主の小規模な融資先に対しては、支店の担当者は付けずに本部の担当者が電話・FAXのみで対応するという形を取っていました。
融資を受ける側としては、決して気分の良い応対ではなかったと思います。
その点、信用金庫であれば、そういった扱いを受ける可能性はかなり低いです。
信用金庫の預金金利はなぜ高いのか?
信用金庫の預金金利は、銀行と比べて高いです。
それはなぜなのでしょうか?
信金中央金庫での資金運用が可能
各信用金庫の上部組織である信金中央金庫での資金運用が可能となっています。
信用金庫が持つ余剰資金を、預金として信金中央金庫に預け、そこから預金金利を得ることができるのです。
その運用益が原資となり、預金者へ金利として還元できています。
地域密着で営業
預金金利を高く設定していると、預金したいというお客様が殺到して、信用金庫の収益を圧迫してしまいそうですね。
金融機関側からすると、預金金利は支出・コストという位置付けです。
預金者が殺到することは必ずしも好ましいこととは言えません。
しかし、実際には預金者が殺到するような事態にはなりません。
信用金庫で預金口座を開設しようとする場合、基本的には信用金庫の営業エリアに居住している人が対象となります。
営業エリアのお客様に限定して、高い預金金利を提供しています。
信用金庫の貸出金利はなぜ高いのか?
信用金庫の貸出金利は、預金金利と同様に高いです。
これはなぜなのでしょうか?
銀行とは異なる融資先
信用金庫の融資先は、地域の中小企業・個人事業主が中心となっています。
銀行からの借入が難しい事業者が、信用金庫から借入を行っているというケースも多いです。
そのため、信用金庫の融資先は信用力の面ではやや弱いと言えます。
融資に当たって貸倒のリスクが高ければ、その分、貸出金利という形で金融機関はコストを回収しようとします。
信用金庫の貸出金利はリスクを反映させたものであり、信用金庫の収益を意図したものではありません。
筆者が銀行にいた頃は、信用金庫と銀行とでは、貸出金利が1%程違うこともありました。
預金金利が高ければ、貸出金利も高くなる
預金金利と貸出金利は、双方に関係があります。
預金金利は調達コストであり、信用金庫の運用資金を得るためのコストです。
調達(仕入)コストが高ければ、運用益も高くしなければなりません。
調達(仕入)コストが100円の場合よりも200円の場合の方が、当然、販売価格は高く設定しなければなりません。
信用金庫を利用するメリット
銀行ではなく、信用金庫を利用するメリットには、どのようなものがあるでしょうか?
高い預金金利
やはりこの点は大きなメリットと言えると思います。
預金者にとって、少しでも多くの預金金利を得られるというのは、とてもわかりやすいメリットです。
個人事業主や零細企業でも融資を受けやすい
銀行では融資を受けることが難しい個人事業主や零細企業も、信用金庫であれば融資を受けられる可能性が高くなります。
また、単純に「お客様」として扱われやすいのも、信用金庫の方です。
銀行は地方銀行であっても融資先の数は非常に多いので、中小企業や個人事業主はあまり相手にされないこともあります。
信用金庫を利用するデメリット
信用金庫を利用するに当たっては、デメリットもあります。
高い貸出金利
銀行と比べて借入をしやすいというメリットがある半面、貸出金利は高いというデメリットもあります。
企業にとって借入利息もコストですので、コストを少しでも抑えようと考えるのであれば、信用金庫は最適ではないということになります。
店舗・ATMが少ない
銀行と比べると支店・ATM共にかなり少ないです。
営業エリアが広域にわたる企業の場合、サービスを受けるに当たってやや不便な面もあるかもしれません。
まとめ
信用金庫の預金金利・貸出金利が高い理由は、営業エリアが限定されていることや、銀行では融資が難しい企業に融資をしていることなどが関係しています。
取引金融機関として信用金庫を選択するメリット・デメリットも解決しました。
取引金融機関として、信用金庫だけ・銀行だけという形ではなく、両者をバランス良く使い分けるという方法が最も良いのかもしれません。