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前の会社の源泉徴収票を今の会社に出すと何が伝わる?退職理由は書いてあるのか調べました

前の会社の源泉徴収票を今の会社に出すと何が伝わる?退職理由は書いてあるのか調べました

結論から書きます。前の会社の源泉徴収票を今の会社に出すと、その年に前職から支払われた給与の額、天引きされた所得税と社会保険料、前の会社の名称と所在地、そして前職を辞めた年月日が相手に伝わります。一方で、なぜ辞めたのかという理由については、国税庁が示す源泉徴収票の様式に書く欄が用意されていません。

この記事は2026年9月3日に、所得税法・所得税法施行令・所得税法施行規則・労働基準法の条文と、国税庁の「令和7年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引」およびタックスアンサー・手続案内のページを実際に開いて確認した内容だけで書いています。

目次

どこまで確認できたか、線を引いておきます

まず、確認できた範囲を先に書きます。今回開いた資料で確認できたのは、次の3つです。

  • 所得税法施行規則93条1項が源泉徴収票に書く内容を1号から13号まで並べていて、その中に退職理由に当たる項目がないこと
  • 国税庁の手引が挙げる源泉徴収票の欄は①から㉙まで(29の欄)あり、その一覧にも退職理由の欄が見当たらないこと
  • 年の途中で辞めた人の「中途就・退職」欄について、手引は○と年月日を書くことしか求めていません

どれも「一覧の中に見当たらない」という確認の仕方です。条文が「退職理由を書いてはならない」と定めているわけではありません。しかも施行規則93条1項の最後には「その他参考となるべき事項」という、何を書いてもよさそうな項目が1つ残されていて、様式には(摘要)欄もあります。手引が(摘要)欄について挙げているのは扶養親族の氏名や前職の情報など具体的な8項目ですが、この受け皿がある以上、様式が想定していない書き込みが絶対に起きないとまでは言えません。ですから、この記事では「様式に退職理由を書く欄は用意されていません」までにとどめます。

もう一点。中途就・退職欄について国税庁の手引は、年の中途で就職や退職(死亡退職を含みます)をした方は該当欄に○を付けて年月日を書く、と説明しています。死亡退職まで同じ書式で処理する欄ですから、○と日付から自己都合か会社都合かを読み取る作りにはなっていません。とはいえ、その判別が完全に不可能だと断定できる根拠までは、今回開いた資料の中にありませんでした。

あなたが今どの状態にいるかで、次にやることが変わります

同じ「前職の源泉徴収票を出してと言われた」でも、手元に紙があるのか、まだ届いていないのか、届いたけれど中身を見るのが怖いのかで、次にすべきことは別物です。あてはまるものを選んでください。

前の会社の源泉徴収票は、いまどうなっていますか。

名前もメールアドレスも聞きません。どれが選ばれたかの件数だけ、記事を直すための集計に使います。

伝わることと、伝わらないことの一覧

今の会社が前職分を合算して年末調整をすると、今の会社が作る源泉徴収票の(摘要)欄に、前の会社のことが書き足されます。会社名と所在地、あなたが辞めた年月日、前職の給与額、天引きされた所得税と社会保険料です。つまり、伝わるのは会社名と日付と金額です。

扶養の届出から会社や役所へ伝わる情報は、扶養はどうやってバレる?給与支払報告書の仕組みと、税と健康保険で違う線にまとめています。

退職金の額が転職先へ伝わるのかは、退職金の額は転職先に伝わる?源泉徴収票に載らない理由で別に扱っています。

この記事で扱うのは、源泉徴収票という1枚の紙に何が書かれるかだけです。扶養の届出や退職金から会社に伝わる情報は、別の紙の話なので別の記事にまとめています。

項目今の会社に伝わるか根拠にした一次情報
その年に前職から支払われた給与の額伝わります国税庁の手引「(摘要)」欄・「支払金額」欄
前職で天引きされた所得税・復興特別所得税伝わります国税庁の手引「(摘要)」欄
前職で天引きされた社会保険料伝わります国税庁の手引「(摘要)」欄
前の会社の名称と所在地伝わります国税庁の手引「(摘要)」欄
前職を辞めた年月日伝わります国税庁の手引「中途就・退職」欄・「(摘要)」欄
前職での職務の名称や役職名手引は併記を求めています国税庁の手引「支払を受ける者」欄【氏名】
障害者・寡婦・ひとり親・勤労学生に当たるかどうか該当する事項があれば○が付きます所得税法施行規則93条1項10号/国税庁の手引「未成年者」から「勤労学生」までの各欄
退職の理由(自己都合か会社都合か)書く欄は様式に用意されていません所得税法施行規則93条1項1号〜13号/手引の29の欄
あなたのマイナンバー本人に交付される票には印字されません国税庁タックスアンサーNo.7411
前職の年収全体や在職中の給与水準そのもの載るのはその年の分だけです所得税法施行令311条・手引「支払金額」欄

この表のなかで、退職理由より気になる行があるかもしれません。障害者・寡婦・ひとり親・勤労学生の欄です。手引がこの欄について書いているのは「各欄について、その受給者について該当する事項がある場合に○を付してください」という一文だけで、年の途中で辞めた人の票にどこまで○が付くのかは、今回開いた資料では確認できませんでした。はっきりしているのは、障害者控除・寡婦控除・ひとり親控除・勤労学生控除が、確定申告でも申告できる所得控除だということです(No.1100 所得控除のあらまし(国税庁)。2026年9月3日に確認しました)。新しい会社には申告せず、自分の確定申告で控除を受けるという進め方もあります。ただし前の会社の票にすでに○が付いているなら、その紙を渡した時点で相手の目に入ります。どうしても知られたくない事情があるなら、紙を渡す前に、この記事の後半にある自分で精算する道を先に読んでください。

この章の出典は次の4つです。いずれも2026年9月3日に開いて確認しました。

この手引は、同じ2026年9月3日時点で国税庁が公開している最新版が令和7年分のため、それを根拠にしています。様式は税制改正で変わることがあるので、ご自身の年分の手引も同じページから確認してください。

合算される給与の範囲についても補足します。所得税法施行令311条は、その年1月1日から、前の会社があなたの主たる給与等の支払者(給与から所得税を天引きしていたメインの勤務先のことです)でなくなる日までの間に支払うべきことが確定した給与等を対象としています。前職での生涯の給与や、辞める前の月給の推移がそのまま渡るわけではありません。

退職理由が書かれる書類は、源泉徴収票とは別にあります

辞めた事情が文書になるのは、労働基準法22条の退職時の証明書のほうです。労働基準法22条1項はこう書かれています。「労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。」

この書類が出てくるのは、あなたが請求したときだけです。しかも同じ22条は、請求しない事項を記入してはならないと定め、さらに使用者があらかじめ第三者と謀って就業を妨げる目的で通信をしたり、証明書に秘密の記号を記入したりすることも禁じています。退職の事由を請求から外せば、その欄は空のまま出てきます。書類に載らないことと、面接や入社時に聞かれて事実と違うことを答えることは別の話です。前者はあなたの権利ですが、後者はあとで自分の立場を悪くします。

源泉徴収票は税金の書類、退職時の証明書は労働の書類で、根拠になる法律も交付のきっかけも違います。22条の規定は退職時の証明書に向けたもので、源泉徴収票に直接かかるわけではない点は分けて理解してください。条文は 労働基準法(e-Gov法令検索) で読めます。2026年9月3日に確認しました。

よくある誤解を4つ、なぜ違うのかまで書きます

誤解1 源泉徴収票を見れば、辞めた事情がひと目でわかる

これは、中途就・退職欄の記載要領を読むと成り立ちにくくなります。手引がこの欄について求めているのは、該当欄に○を付け、その年月日を記載することだけです。理由や事由に関する指示は一文もありません。ただし前述のとおり(摘要)欄と(備考)欄があるため、絶対に何も書かれないとまでは言えません。

誤解2 前の会社の給料が丸ごと知られてしまう

合算されるのは、その年の1月1日から、前の会社がメインの勤務先でなくなる日までに支払が確定した給与です。数え方は在籍した月数ではなく、その年に支払が確定した分です。ですから同じ8月退職でも、最後の給与がいつ支払われたかで金額は変わります。前年以前の年収は、この書類からは出てきません。

誤解3 マイナンバーが印字された紙を渡すことになる

国税庁は、支払者が税務署に提出する給与所得の源泉徴収票にはマイナンバーまたは法人番号を記載する必要がある一方、受給者に交付する源泉徴収票にはマイナンバーおよび法人番号を記載しない、と明記しています。あなたの手元にある1枚は、番号が載らない側の用紙です。

誤解4 出さなければ、税金の話もそのまま消える

消えません。国税庁は中途就職者の年末調整について、前職分の確認は他の会社などから交付を受けた給与所得の源泉徴収票などで行い、この確認ができないときには年末調整を行うことはできず、その人が確定申告により所得税および復興特別所得税の精算を行うことになる、と説明しています。会社に精算してもらうか、自分で精算するかの分かれ道です。精算そのものが無くなるわけではありません。

年末調整そのものの仕組みと今年の変更点は、2026年の年末調整は何が変わる?基礎控除の引上げと申告書の変更点にまとめています。

年末調整と確定申告の関係そのものが曖昧なままだと、この分かれ道の意味も掴みにくくなります。

自分で確かめる手順

ここからは今日できることです。紙が手元にある人は1から、まだ届いていない人は4から進めてください。

  1. 前職の源泉徴収票を出し、中途就・退職の欄を見てください。○と年月日のほかに何か書き足されていないかが、ここでの見どころです。
  2. (摘要)欄を最後まで読みます。前職の会社名・退職年月日・金額が並ぶのはここです。手引が挙げていない書き込みがあるとすれば、この欄になります。なお(備考)欄は、手引では5人目以降の扶養親族のマイナンバーを書く欄とされていて、本人に交付される票にはそのマイナンバーを記載しないため、通常は空欄です。
  3. 自分のマイナンバーが印字されていないことを目で確かめます。印字されていなければ、それが本人交付用の正しい形です。
  4. まだ受け取っていない場合は、退職日から1か月が過ぎているかを数えます。所得税法226条は、年の途中で退職した人(日本国内に住所がある人などが対象です)へ、退職の日から1か月以内に本人へ交付しなければならないと定めています。ただし同条4項により、あなたが承諾していれば、紙ではなく電子データでの提供に代えることが認められています。給与明細のWebサービスや会社のメールに届いていないかを先に確かめてください。
  5. 期限を過ぎていたら、前の会社に交付を求めます。このとき、いつどんな方法で求めたかが分かるもの(メールの控えなど)を残しておきます。
  6. それでも交付されないときは、税務署に源泉徴収票不交付の届出書を出せます。国税庁は、交付期限を過ぎた後にいつでも提出できること、給与支払明細書が残っていればその写しと、勤務先に交付を求めたことが分かる書類を添えること、提出先は「納税地等を所轄する税務署長」であることを案内しています。自分の場合どの税務署になるかは、出す前に最寄りの税務署へ電話で聞くのが早いです。すでに交付されたものの再発行は、この手続の対象外です。
  7. 辞めた事情を書面で示す必要がある場面では、源泉徴収票ではなく労働基準法22条の証明書を、必要な項目だけ指定して請求します。
  8. 労働基準法22条の証明書を請求しても会社が応じないなど、労働の側で行き詰まったときは、総合労働相談コーナー(厚生労働省) に相談できます。厚生労働省は、各都道府県労働局と全国の労働基準監督署内など378か所に設置していること、専門の相談員が面談または電話で対応すること、予約は不要で利用は無料であることを案内しています。土日祝と年末年始(12月29日から1月3日)は閉庁です。2026年9月3日に確認しました。

手順4から6の根拠は 所得税法(e-Gov法令検索)F5-4 源泉徴収票不交付の届出手続(国税庁)、手順の前提になる年末調整の扱いは No.2674 中途就職者の年末調整(国税庁) です。2026年9月3日に確認しました。

前職の票を出さないとき、精算はどこへ移るのか

前職の票が年末調整の締切に間に合わない、あるいは事情があって現職に渡さないと決めた場合、次の壁は「では自分でどう精算するのか」です。これは所得を隠す選択ではなく、精算する場所が会社からあなたの手元に移るだけです。国税庁の説明はここで、確定申告により精算を行うことになる、と続きます。年末調整で会社が引き受けていた計算を、あなたが自分でやることになるわけです。

とはいえ、確定申告が必要かどうか、いくら戻るのか、いくら足りないのかは人によって違います。前職と現職の給与だけであれば、国税庁の 確定申告書等作成コーナー(国税庁) で、手元の源泉徴収票の数字を画面の案内どおりに入れていけば申告書ができます。2026年9月3日に確認しました。会社に任せる道と自分でやる道は、どちらも正規の精算方法です。どちらを選ぶかを決めてから、道具を選んでください。

自分で申告する場合の進め方は、副業収入に確定申告は必要?申告漏れを防ぐ方法とおすすめツールの紹介が参考になります。

実際の申告の進め方は、別の記事で手順に分けて説明しています。

年末調整で会社に何が伝わるか、項目ごとに調べました

会社に出す紙ごとに、どの欄に何を書くのか、そこから何が伝わるのかを国税庁の様式で1件ずつ確かめています。気になる項目から読んでください。

まとめ

  • 今の会社に伝わるのは、その年に前職から支払われた給与の額、天引きされた所得税と社会保険料、前の会社の名称と所在地、前職を辞めた年月日です
  • 退職理由については、所得税法施行規則93条1項の列挙にも、国税庁の手引が挙げる29の欄にも、それに当たる項目が見当たりません。ただし、この「その他参考となるべき事項」と(摘要)(備考)の各欄があるため、絶対に書かれないとまでは言えません
  • 中途就・退職欄に入るのは○と年月日だけで、死亡退職も同じ書式で扱われます
  • 辞めた事情が文書になるのは労働基準法22条の退職時の証明書で、あなたが請求した事項しか書けません
  • 本人に交付される源泉徴収票にマイナンバーは印字されません
  • 会社は年の途中で辞めた人へ、退職の日以後1か月以内に交付しなければなりません。届かないときは税務署に不交付の届出書を出せます
  • 前職分を確認できなければ今の会社は年末調整をできず、あなたが確定申告で精算する形になります。会社に任せる道と自分でやる道のどちらかです。精算しなくてよくなるわけではありません
  • ここに書いた内容は、すべて2026年9月3日に一次情報を開いて確認しました
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