結論から書きます。「タンス預金はいくらまで」という金額の線引きは、法律のどこにも存在しません。100万円でも1,000万円でも、家に現金を置いておくこと自体は違法ではありません。
ただし、線引きがないことと、安全であることは別の話です。国税庁が2025年12月に公表した最新の調査データを読むと、税務署が見ているのは「いま家にいくらあるか」ではないことがはっきりします。ここを取り違えたまま金額の目安を探しても、答えは見つかりません。
国税庁の最新データで見る「バレる」の実態
国税庁「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」(2025年12月公表)の数字を並べます。
| 項目 | 令和6事務年度 |
|---|---|
| 相続税の実地調査件数 | 9,512件 |
| 申告漏れ等の非違件数 | 7,826件 |
| 非違割合 | 82.3% |
| 実地調査1件当たりの申告漏れ課税価格 | 3,093万円 |
| 実地調査1件当たりの追徴税額 | 867万円 |
注目したいのは非違割合82.3%です。税務署が実地調査に入った9,512件のうち、8割超で申告漏れが見つかっています。裏を返すと、税務署は「調べれば出てくる」と見込んだ先に絞って入っています。行き当たりばったりで訪問しているわけではありません。
さらに、申告書を出していなかった無申告事案に限ると、実地調査650件に対して非違割合は86.5%、1件当たりの申告漏れ課税価格は1億1,517万円に達します。
申告漏れ財産の約3割が現金・預貯金
同じ資料の「申告漏れ相続財産の金額の構成比の推移」によると、令和6事務年度の内訳は次のとおりです。申告漏れ相続財産の総額は2,879億円でした。
| 財産の種類 | 構成比 |
|---|---|
| その他 | 43.3% |
| 現金・預貯金等 | 29.1% |
| 有価証券 | 13.6% |
| 土地 | 12.3% |
| 家屋 | 1.7% |
現金・預貯金等が約3割を占めています。土地や家屋のように登記で見えるものではないのに、それでも見つかっています。
出典: 国税庁「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」(報道発表資料PDF)2026年8月18日確認。
なぜ現金なのに見つかるのか
家の金庫の中を税務署が覗いているわけではありません。見られているのは残高ではなく、お金の流れです。
たとえば、亡くなった人の預金口座の記録は10年程度さかのぼって確認できます。「毎年のように数十万円が引き出されているのに、それに見合う支出の形跡がない」という状態は、通帳を並べれば浮かび上がります。手元に現金として残っていれば、それは相続財産です。
つまり「引き出して手元に置いた」時点で、痕跡は口座側に残っています。現金にした瞬間に見えなくなる、という前提そのものが成り立ちません。
金額の線引きが実際に関係する場面
「いくらまで」という数字が意味を持つのは、タンス預金そのものではなく、相続と贈与の場面です。
相続税の基礎控除
国税庁の定める基礎控除額は、次の式で計算します。
3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
| 法定相続人の数 | 基礎控除額 |
|---|---|
| 1人 | 3,600万円 |
| 2人 | 4,200万円 |
| 3人 | 4,800万円 |
| 4人 | 5,400万円 |
タンス預金を含めた遺産の総額がこの額を下回れば、相続税はかかりません。逆に、タンス預金を足したことで超えるなら申告が必要になります。ここが実質的な分岐点です。
贈与税の基礎控除
暦年課税の基礎控除は年110万円です。1月1日から12月31日までに受け取った贈与の合計が110万円以下なら、贈与税はかからず申告も不要になります。
「親から現金を手渡しでもらえば記録に残らない」と考える方もいますが、これは贈与にあたり、金額が基礎控除を超えれば申告義務が生じます。手渡しかどうかは関係ありません。
出典: 国税庁タックスアンサーNo.4152 相続税の計算/No.4402 贈与税がかかる場合。2026年8月18日確認。
よくある誤解の訂正
「100万円までなら申告しなくていい」
これは誤りです。相続財産としてのタンス預金に「少額なら申告不要」という基準はありません。判断の基準は総額が基礎控除を超えるかどうかであって、現金部分の多寡ではありません。
「タンス預金は違法」
これも誤りです。現金を家に置くこと自体を禁じる規定はありません。問題になるのは、相続や贈与の際に申告すべきものを申告しなかった場合であって、保管方法そのものではありません。
「銀行に預けると税務署に通報される」
入金しただけで税務署へ自動的に連絡が行くわけではありません。銀行の窓口で本人確認を求められる場面は、犯罪収益移転防止法にもとづく手続きであって、税務署への通報とは別の話です。金額ごとにどういう手続きが必要かは、100万円を入金すると怪しまれる?金額別の銀行手続きと税務署が見るタイミングで整理しています。
自分のケースで確かめる3ステップ
- 法定相続人が何人になるかを数え、基礎控除額を出す(3,000万円+600万円×人数)
- 不動産・預貯金・有価証券・保険金・タンス預金を合計し、基礎控除額と比べる
- 超えそうなら、過去10年分の預金の出入りを通帳やWeb明細で確認しておく。使途がはっきりしない大きな引き出しがあれば、その説明を用意しておく
基礎控除を明らかに下回るなら、タンス預金の金額を気にする実益は小さくなります。超えそうな場合は、金額の目安を探すより、相続に詳しい税理士へ早めに相談したほうが結果的に安くつきます。実地調査1件当たりの追徴税額が867万円という数字は、後から直す場合のコストの目安になります。
現金で渡すお金といえば、年末年始のお年玉も同じ心配をされます。贈与税がかかる線はお年玉に贈与税はかかる?いくらから、どうやって税務署に見つかるのかを条文で確かめましたで条文にあたって整理しました。
あなたのときは、どうでしたか(匿名アンケート)
タンス預金を銀行に預け直したとき、あなたは窓口で何か聞かれたでしょうか。
ここに公式な答えはありません。知恵袋にも体験談が散らばったままで、いくらから聞かれるのかを整理した資料はどこにもない状態です。
答えるのは選択肢を選ぶだけで、すべて任意になっています。金額だけ、聞かれたかどうかだけ、でも送信できます。名前もメールアドレスも聞かれません。集まった結果は、金額帯ごとの割合としてこのページで確認できます。
まとめ
「タンス預金はいくらまで」という問いに、金額での答えはありません。法律が線を引いているのは保管額ではなく、相続税の基礎控除と贈与税の年110万円です。
そして国税庁のデータは、現金であっても見つかっていることを示しています。実地調査9,512件のうち82.3%で申告漏れが見つかり、申告漏れ財産の約3割が現金・預貯金でした。隠せる金額を探すより、基礎控除を超えるかどうかを先に確かめるほうが、はるかに実用的です。
実際に銀行へ預け直すときの手続きと、分けて入金してはいけない理由はタンス預金を銀行に預けるとどうなる?で整理しています。
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